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第三章 アクティビティ
第三話 思わず放った一言が
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酒も入り、宴席となった食事を終えた漣は、食事に満足できたのは、イグジストが一緒にいてくれたからだと、心のどこかで気づいていた。
ひとりで飯を食うことの方が圧倒的に多いのに。慣れているのに。
けれども、こうして会話を楽しめたからこその満足感だ。
「それでは君は湯あみでもしてゆっくりしてくれ」
ナフキンを卓に置いてイグジストが席を立つ。すると、思わずといった勢いで言ってしまっていた。
「あ、あの。あのさ。俺」
出入口のドアに向かいかけていたイグジストが怪訝そうに蓮を見る。
「あの、俺、あんたのもふもふした毛皮に埋もれて眠りたい」
言ってしまった。
本心を。
二十四になってもセーフティブランケットを手離せない男が、今度はもふもふがなければ眠れない。いや、眠れなくなりそうだ。
イグジストも顔面パンチを受けたように軽くのけ反り、固まった。
恥ずかしい。
セーフティブランケットを知られた百倍以上は恥ずかしい。
顔から火が出るというのは、このことだ。
「それは……。獣人化した私と寝たいということか?」
「えっと、……簡単に言えばそうなるかな」
「セックスしたい訳じゃないようだが」
「あっ、そっちじゃなくて、普通に寝たいっていうか……」
てへっと頭に手をやり、笑んでみる。すると、イグジストも苦笑した。
「皇帝をブランケット代わりにしようなんて国民は君だけだ」
「あっ、まだ俺、国民じゃないから」
「国民じゃないなら尚更だ。私も子供の頃はよく撫でられたものだが、成人してからは皆無だな」
「えっ? それ、三千年もセックスしたことないって話?」
「セックスは人の姿でしかしない」
「あっ、そうなんだ」
素っ裸であの毛皮のもふもふにくるまれたなら、どんなに気持ちがいいだろうと思ったが、人の姿でするとの発言は聞き捨てならない。
「誰とするんだよ。王宮にハーレムみたいなものでもあるのかよ」
「その通りだ」
「じゃあ、したくなったらハーレムに?」
「そうだ」
「そうなんだ」
なんだか口元をむにゅうと歪めたくなるような不快感がこみ上げる。獣人だってやることはやってんだ。当たり前かもしれないが。
当たり前のように語るイグジストにも腹が立つ。
ひとりで飯を食うことの方が圧倒的に多いのに。慣れているのに。
けれども、こうして会話を楽しめたからこその満足感だ。
「それでは君は湯あみでもしてゆっくりしてくれ」
ナフキンを卓に置いてイグジストが席を立つ。すると、思わずといった勢いで言ってしまっていた。
「あ、あの。あのさ。俺」
出入口のドアに向かいかけていたイグジストが怪訝そうに蓮を見る。
「あの、俺、あんたのもふもふした毛皮に埋もれて眠りたい」
言ってしまった。
本心を。
二十四になってもセーフティブランケットを手離せない男が、今度はもふもふがなければ眠れない。いや、眠れなくなりそうだ。
イグジストも顔面パンチを受けたように軽くのけ反り、固まった。
恥ずかしい。
セーフティブランケットを知られた百倍以上は恥ずかしい。
顔から火が出るというのは、このことだ。
「それは……。獣人化した私と寝たいということか?」
「えっと、……簡単に言えばそうなるかな」
「セックスしたい訳じゃないようだが」
「あっ、そっちじゃなくて、普通に寝たいっていうか……」
てへっと頭に手をやり、笑んでみる。すると、イグジストも苦笑した。
「皇帝をブランケット代わりにしようなんて国民は君だけだ」
「あっ、まだ俺、国民じゃないから」
「国民じゃないなら尚更だ。私も子供の頃はよく撫でられたものだが、成人してからは皆無だな」
「えっ? それ、三千年もセックスしたことないって話?」
「セックスは人の姿でしかしない」
「あっ、そうなんだ」
素っ裸であの毛皮のもふもふにくるまれたなら、どんなに気持ちがいいだろうと思ったが、人の姿でするとの発言は聞き捨てならない。
「誰とするんだよ。王宮にハーレムみたいなものでもあるのかよ」
「その通りだ」
「じゃあ、したくなったらハーレムに?」
「そうだ」
「そうなんだ」
なんだか口元をむにゅうと歪めたくなるような不快感がこみ上げる。獣人だってやることはやってんだ。当たり前かもしれないが。
当たり前のように語るイグジストにも腹が立つ。
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