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第三章 アクティビティ

第二話 皇帝の朝食

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 北欧の朝食といえば、ライ麦パンにバターを塗って、サラミやハムやスライストマト、キュウリを乗せたオープンサンドがほとんどだ。
 皇帝の朝食ともなればスモークサーモンや茹で卵や数種のチーズのスライスやオイルサーディン、ヨーグルトと蜂蜜をかけたブルーベリーやラズベリーなど、フレッシュな果物も加わるが、北欧の人は基本的に朝食には手をかけない。

 慌ただしい朝から日本人のように味噌汁をつくったり干物の魚を焼くなどといった、手の込んだものは食卓には上らない。合理主義の北欧人は朝は洗い物は少なく、包丁をなるべく使わずに済むメニューがほとんどだ。

 効率的に食卓の準備を進める使用人に感嘆をしていると、側近を伴った皇帝が現れた。

「おはよう。昨日はちゃんと眠れたか?」

 この上もなく上機嫌で問いかけられたが、気恥ずかしくてうんとは言えない。
 ああ、とも、まあなとも口の中でごにょごにょ返しただけだった。
 
「今日は君に乗馬を教えてやろうと思っているが、君はどうだ? 興味はあるか?」
「えっ? 乗馬?」
「そうだ。君がここを出たくても、『森』の規模は壮大だ。とてもじゃないが歩きで結界までは到達できない」

 窓から差し込む朝日に照らし出されたイグジストは、優し気な目元をさらに和らげ、微笑んだ。

「あんた、俺を馬鹿にしてるのか?」
「本気で逃げるつもりがあるなら習うだろう」

 皇帝は使用人が引いたベルベットの布張り椅子に腰かけた。

「ああ、いいよ! 俺だって口先ばかりのチキン野郎なんて思われたくないからな!」
「わかった。では、朝食が済んだら始めよう。君用の乗馬服も用意させた。それに着替えておいてくれ」
「おい、ちょっと待てよ。俺用のだって?」
「悪いが昨晩、君が湯あみをしている間に服を借りてサイズを測って作らせた」
「夕べ一晩で?」
「そうだ」
「そんなに驚くことではない。君はサイズも小さいし。子供用の乗馬服をリメイクしただけだったから」
「ああ、そうか! チビでやせっぽちの俺には子供用でぴったりだったって?」
「リメイクしたと言っている」

 この皇帝は優しいくせに、時折すごく口が悪い。
 憤然としてテーブルに着いた蓮はナフキンを膝にかけた。
 オープンサンドの具材やヨーグルト、オレンジや牛乳などのドリンク類が美しく整然と並べられたテーブルに息を飲む。
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