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女官生活
お茶会 ~本番。そして~
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「今日は、楽師を紹介してくださるんでしょ?彩徳妃」
「ええ。尚儀局の楽師なのだけど、とても才能のある子なの」
そういってにこにこと笑う徳妃の目配せに、徳妃の上級女官さんが目配せをしてくる。
それに頷いて明蘭たちが私を促して、徳妃様たちの座る卓の前で軽く膝を折る。
これが謁見の間とか、公式の場だったら額づくほうがいいらしいけど、一応招かれて演奏にきているし、公式の場じゃないのでいらいないらしい。
けど、この半歩足をひいて腰を落とす礼はなかなかにバランスをとるのが難しいし、ぷるぷるする。
「彩徳妃さま、安賢妃さまに拝謁いたします」
代表して一番女官歴の長い姉女官さんが挨拶をする。
こういうときはやっぱり宮廷って年功序列とか、階位とか関係してるんだなーって感じる。
まあ、一番気に入られているからって挨拶しろって言われても困るしね。
それでも他の姉女官さんより、挨拶している女官さんの隣に位置づけられるのは、仕方ないって諦めるべきなんだろうか・・・。
日陰でいいよ、うん。すみっこでお願いします。
「この茉莉の歌は、おもしろいのよ。聞いたことがないような節ばかり使うから、あなたも楽しめると思うわ」
「徳妃が進めてくれるなら、間違いないわね。楽しみだわ」
ハードルを上げてくる四夫人。
うわー、歌い間違いとかできない感じですか?
いや、初めて歌う歌のほうはわかんないだろ。
つーかさ、歌詞をそのまま歌うとこの世界ではわかんないものがあるから、言い換えたりして歌ってるから厳密には原作どおりじゃないんだよね。まあ、盗作ってるけど、時代も世界も違うから許されているんだしね。
「では、まずは・・・」
歌う曲を紹介している姉女官さんのことばに、とりあえずぐっとおなかに力をいれて覚悟を決める。
うん、きっといつも聞いてる徳妃はわかるかもしれないけど、初めて聞く安賢妃はわからないよね。
それにいつも笑って聞いてくれる徳妃は、きっと間違ってもこの場ではばらさないと思う。
「聞いたことない曲や、節ばかりでとても新鮮だったわ。聞かせてくれてありがとう、徳妃」
聞き終わった安賢妃は、ぱらぱらと楽しそうに手を叩いてくれる。
それに尚儀局の女官そろって頭を下げる。
こういうときは直接言葉をかけてくる徳妃が珍しいのであって、普通はかけてこないことが当然。
よほど機嫌がいいとひとことくれるらしいし、そのときも姉女官が応えるから何も言わなくてもいいと言われてたんだけど、さ。
「曲の演奏のうでも見事でしたね」
「楽しんでくれたならよかったわ、安賢妃」
にこにこと笑うふたりの四夫人に、ただ無言で頭をさげたまま退場の合図をまつ。
歌い終わった―って安心感と、間違えなかった安心感で気が緩んでた私は、大人しく下を向きながら気が抜けていた。
「ねえ、今度私が招いたら来てくれるかしら?茉莉」
「へ?」
だから、完全に気が抜けてたから安賢妃の突然の言葉に思わず顔をあげて、声を出していた。
あ、やば。
視界の端で、四夫人にばれないようにしながら睨みつけてくる明蘭と春蘭。そして青ざめた姉女官。
ごめんなさーい。完全に気が抜けてました。
「わたくしも呼ぶんだから、一緒に聞かない?安賢妃」
「それでもいいけれど、たまにはわたくしだけでも招きたいわ」
にこにことするふたりの四夫人はそろって、笑ったままこちらを見る。
その笑顔、というよりもあなたたちの立場の申し出を、ただの下級女官は断れません・・・。
「そういえば、陛下。彩徳妃からお聞きになりました?」
「なにをだ?」
「とても才能のある尚儀局の女官を見つけたのですって。まだなりたちの下級女官らしいのですが」
「へえ」
「私も今日ありましたけど、とてもよかったですわ。陛下も楽しめるのではないでしょうか」
「・・・・女官、か」
「ええ、そのうち席を彩徳妃とともにご用意したく思います。陛下も御期待くださいませ」
「ああ」
「ええ。尚儀局の楽師なのだけど、とても才能のある子なの」
そういってにこにこと笑う徳妃の目配せに、徳妃の上級女官さんが目配せをしてくる。
それに頷いて明蘭たちが私を促して、徳妃様たちの座る卓の前で軽く膝を折る。
これが謁見の間とか、公式の場だったら額づくほうがいいらしいけど、一応招かれて演奏にきているし、公式の場じゃないのでいらいないらしい。
けど、この半歩足をひいて腰を落とす礼はなかなかにバランスをとるのが難しいし、ぷるぷるする。
「彩徳妃さま、安賢妃さまに拝謁いたします」
代表して一番女官歴の長い姉女官さんが挨拶をする。
こういうときはやっぱり宮廷って年功序列とか、階位とか関係してるんだなーって感じる。
まあ、一番気に入られているからって挨拶しろって言われても困るしね。
それでも他の姉女官さんより、挨拶している女官さんの隣に位置づけられるのは、仕方ないって諦めるべきなんだろうか・・・。
日陰でいいよ、うん。すみっこでお願いします。
「この茉莉の歌は、おもしろいのよ。聞いたことがないような節ばかり使うから、あなたも楽しめると思うわ」
「徳妃が進めてくれるなら、間違いないわね。楽しみだわ」
ハードルを上げてくる四夫人。
うわー、歌い間違いとかできない感じですか?
いや、初めて歌う歌のほうはわかんないだろ。
つーかさ、歌詞をそのまま歌うとこの世界ではわかんないものがあるから、言い換えたりして歌ってるから厳密には原作どおりじゃないんだよね。まあ、盗作ってるけど、時代も世界も違うから許されているんだしね。
「では、まずは・・・」
歌う曲を紹介している姉女官さんのことばに、とりあえずぐっとおなかに力をいれて覚悟を決める。
うん、きっといつも聞いてる徳妃はわかるかもしれないけど、初めて聞く安賢妃はわからないよね。
それにいつも笑って聞いてくれる徳妃は、きっと間違ってもこの場ではばらさないと思う。
「聞いたことない曲や、節ばかりでとても新鮮だったわ。聞かせてくれてありがとう、徳妃」
聞き終わった安賢妃は、ぱらぱらと楽しそうに手を叩いてくれる。
それに尚儀局の女官そろって頭を下げる。
こういうときは直接言葉をかけてくる徳妃が珍しいのであって、普通はかけてこないことが当然。
よほど機嫌がいいとひとことくれるらしいし、そのときも姉女官が応えるから何も言わなくてもいいと言われてたんだけど、さ。
「曲の演奏のうでも見事でしたね」
「楽しんでくれたならよかったわ、安賢妃」
にこにこと笑うふたりの四夫人に、ただ無言で頭をさげたまま退場の合図をまつ。
歌い終わった―って安心感と、間違えなかった安心感で気が緩んでた私は、大人しく下を向きながら気が抜けていた。
「ねえ、今度私が招いたら来てくれるかしら?茉莉」
「へ?」
だから、完全に気が抜けてたから安賢妃の突然の言葉に思わず顔をあげて、声を出していた。
あ、やば。
視界の端で、四夫人にばれないようにしながら睨みつけてくる明蘭と春蘭。そして青ざめた姉女官。
ごめんなさーい。完全に気が抜けてました。
「わたくしも呼ぶんだから、一緒に聞かない?安賢妃」
「それでもいいけれど、たまにはわたくしだけでも招きたいわ」
にこにことするふたりの四夫人はそろって、笑ったままこちらを見る。
その笑顔、というよりもあなたたちの立場の申し出を、ただの下級女官は断れません・・・。
「そういえば、陛下。彩徳妃からお聞きになりました?」
「なにをだ?」
「とても才能のある尚儀局の女官を見つけたのですって。まだなりたちの下級女官らしいのですが」
「へえ」
「私も今日ありましたけど、とてもよかったですわ。陛下も楽しめるのではないでしょうか」
「・・・・女官、か」
「ええ、そのうち席を彩徳妃とともにご用意したく思います。陛下も御期待くださいませ」
「ああ」
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