8 / 24
女官生活
お茶会 前日
しおりを挟む
彩徳妃に招かれて演奏する間にあっというまに、徳妃と賢妃のお茶会の前日になってしまいました・・・。
できればお誘いを断りたかったけど、私には断る技術はなかったし、尚儀にばれたら断るなんて言語道断!と言われてしまった。
演奏者として同行する明蘭と春麗は喜んでるし、補佐で入ってくれることになった姉女官さまもうきうき。
人選が決まった瞬間から、みなさんの女子力磨きが・・・。
まあ、いいんだけどね。ある意味とりたててもらえる機会になるかもだし、お姉さんたちが喜んでくれるのは。
だけどさー・・・
「まあ、茉莉ったら。あなたが今回の主役なのよ?」
「そうよ、何他人事みたいにお茶飲んでるの。こっちいらっしゃい」
・・・いえ、お構いなく・・・。
そう答えたい衝動を、茶碗の淵をあてて飲みこむ。
春麗と明蘭に引っ張られてきたのは、明日一緒にお茶会へいく姉女官の房。
ふたりのお姉さまたちは、それぞれの寝台の間にある共同スペースにいろんなものを並べている。
化粧水に、頬紅、口紅といったお化粧道具だけでなくって、かんざしなどの装飾品も。
明日にむけて準備に余念がないみたいです。
私は巻き込まないでほしい。
そりゃ、私だって一応女子ですよ?
おしゃれは嫌いじゃないし、お化粧だって好きだよ。
だけどさー。さすが後宮っていうか・・・。おねえさまたちも、明蘭も春麗も美人さんなんだよ。
そして言う必要はないだろうけど、お茶会の主賓である妃嬪さまたちが美人さんなのは言うまでもないでしょ?
明らかに私だけ、平凡なんだよ!
もちろん、普通に不満がるわけじゃないけどさ。
なんていうのかな、見劣りするってわかっているのに着飾っているお姉さんのそばで根性はないっす。
「お姉さまたちがおきれいになるのをみるだけで私は十分ですよ」
「歌を歌って、って徳妃さまにお願いされたのは茉莉でしょう?」
「そうよ。真ん中にたつあなたをきれいにしないのは私たちの力不足になるでしょ?」
「そんなばかな」
なんとか化粧やらなにやらをさせようとするおねえさんたちの意気込みが怖い。
刷毛を片手ににじり寄ってくる姉さんに、思わず茶器を加えたままずりっと椅子ごとさがる。
けど、すぐに背中に手を感じて振りかえるとにっこりと笑う明蘭と春麗。
あ、助けてくれないだね。
そう視線で聞くと二人はにっこりと笑って、頷いた。
「茉莉ってば、ちっとも私たちにもお化粧させてくれないんだもの」
「いつもの徳妃さまのところへ伺うときだって、最低限なんだもの」
「「いい機会だから、いじらせてね?」」
女子高のお昼休みを思い出したのは、ここだけの話。
「いつもどおりに歌を披露するだけなら、楽曲房の女官服だけでいいじゃない」
「茉莉ったらわかってないわね」
お姉さんたちと明蘭たちの合計4人にいじくり倒されて、疲れた。
夜に房へ戻って来てから、共同スペースの机に突っ伏して文句を言うと明蘭がお茶を入れてくれながら笑う。
「支度金だって徳妃さまから金子を下賜されたでしょう?」
「あれって、徳妃さまが目をかけている女官を自慢するから、賢妃さまに侮られない支度をしなさいってことよ?」
たしかに、お茶会をするから出るように言われた妃に金子を下賜されたわ。
あれってそういう意味なんだ。
そうなら、そう言ってくれればいいのに。
そう呟くと、二人は呆れた顔をする。
「そういうのを察するのよ。お金の話をするのははしたないでしょ」
「だからって言われないで、着飾っていくのも失礼なんじゃない?」
女性のその辺の矜持ってのはめんどくさいとつくづく思う。
きっと、自分より目立たれてもいやだけど、あきらかに貧相な人間を紹介するのもいやっていうのだろうな。
あるよね、どこでもそういうの。
「そう。だから、最小限で最大に品よく、それでいて着飾りすぎないようにするのが大事なの」
「賢妃さまは、私たちを、とくにあなたが徳妃さまに目をかけられていると思うでしょ?それなのに、あなたが貧相すぎると徳妃さまは自分のお気に入りにあたえる財もないか、下賜もしないドけちって思われてしまうのよ」
その辺はなんとなくわかる。
あれでしょ?社長だけド派手で、社屋に金かけてても連れてく担当がよれよれのスーツじゃいけないってやつ。
せめて最初に面通しするときぐらいは、きちんとクリーニングにだした社会人年数にあったスーツを着ていかなきゃいけない。
そう察するだけの教育と、給与をあたえているかどうかってことで、その担当だけじゃなく上司や会社も判断されるってこと。
後宮でも同じってことかー。
「あなた自身が徳妃さまに取り立てていただく気があってもなくても、少なくともお茶会の日は徳妃さまが貴方を連れていくのよ」
「よーく、わかった。・・・わかりたくないけど」
ぼそっと呟くと、ふたりは苦笑した。
「ほんと、出世欲とかないわよね。茉莉は」
「だけど明日はおとなしく、徳妃さまのお気に入り楽師として振舞うのよ?」
「わかってるわ」
そう考えると今日、お姉さんたちと明蘭たちにかんざしとか化粧を見ておいて貰ってよかったんだなー。
持つべきものは、気の回る同僚かな。
できればお誘いを断りたかったけど、私には断る技術はなかったし、尚儀にばれたら断るなんて言語道断!と言われてしまった。
演奏者として同行する明蘭と春麗は喜んでるし、補佐で入ってくれることになった姉女官さまもうきうき。
人選が決まった瞬間から、みなさんの女子力磨きが・・・。
まあ、いいんだけどね。ある意味とりたててもらえる機会になるかもだし、お姉さんたちが喜んでくれるのは。
だけどさー・・・
「まあ、茉莉ったら。あなたが今回の主役なのよ?」
「そうよ、何他人事みたいにお茶飲んでるの。こっちいらっしゃい」
・・・いえ、お構いなく・・・。
そう答えたい衝動を、茶碗の淵をあてて飲みこむ。
春麗と明蘭に引っ張られてきたのは、明日一緒にお茶会へいく姉女官の房。
ふたりのお姉さまたちは、それぞれの寝台の間にある共同スペースにいろんなものを並べている。
化粧水に、頬紅、口紅といったお化粧道具だけでなくって、かんざしなどの装飾品も。
明日にむけて準備に余念がないみたいです。
私は巻き込まないでほしい。
そりゃ、私だって一応女子ですよ?
おしゃれは嫌いじゃないし、お化粧だって好きだよ。
だけどさー。さすが後宮っていうか・・・。おねえさまたちも、明蘭も春麗も美人さんなんだよ。
そして言う必要はないだろうけど、お茶会の主賓である妃嬪さまたちが美人さんなのは言うまでもないでしょ?
明らかに私だけ、平凡なんだよ!
もちろん、普通に不満がるわけじゃないけどさ。
なんていうのかな、見劣りするってわかっているのに着飾っているお姉さんのそばで根性はないっす。
「お姉さまたちがおきれいになるのをみるだけで私は十分ですよ」
「歌を歌って、って徳妃さまにお願いされたのは茉莉でしょう?」
「そうよ。真ん中にたつあなたをきれいにしないのは私たちの力不足になるでしょ?」
「そんなばかな」
なんとか化粧やらなにやらをさせようとするおねえさんたちの意気込みが怖い。
刷毛を片手ににじり寄ってくる姉さんに、思わず茶器を加えたままずりっと椅子ごとさがる。
けど、すぐに背中に手を感じて振りかえるとにっこりと笑う明蘭と春麗。
あ、助けてくれないだね。
そう視線で聞くと二人はにっこりと笑って、頷いた。
「茉莉ってば、ちっとも私たちにもお化粧させてくれないんだもの」
「いつもの徳妃さまのところへ伺うときだって、最低限なんだもの」
「「いい機会だから、いじらせてね?」」
女子高のお昼休みを思い出したのは、ここだけの話。
「いつもどおりに歌を披露するだけなら、楽曲房の女官服だけでいいじゃない」
「茉莉ったらわかってないわね」
お姉さんたちと明蘭たちの合計4人にいじくり倒されて、疲れた。
夜に房へ戻って来てから、共同スペースの机に突っ伏して文句を言うと明蘭がお茶を入れてくれながら笑う。
「支度金だって徳妃さまから金子を下賜されたでしょう?」
「あれって、徳妃さまが目をかけている女官を自慢するから、賢妃さまに侮られない支度をしなさいってことよ?」
たしかに、お茶会をするから出るように言われた妃に金子を下賜されたわ。
あれってそういう意味なんだ。
そうなら、そう言ってくれればいいのに。
そう呟くと、二人は呆れた顔をする。
「そういうのを察するのよ。お金の話をするのははしたないでしょ」
「だからって言われないで、着飾っていくのも失礼なんじゃない?」
女性のその辺の矜持ってのはめんどくさいとつくづく思う。
きっと、自分より目立たれてもいやだけど、あきらかに貧相な人間を紹介するのもいやっていうのだろうな。
あるよね、どこでもそういうの。
「そう。だから、最小限で最大に品よく、それでいて着飾りすぎないようにするのが大事なの」
「賢妃さまは、私たちを、とくにあなたが徳妃さまに目をかけられていると思うでしょ?それなのに、あなたが貧相すぎると徳妃さまは自分のお気に入りにあたえる財もないか、下賜もしないドけちって思われてしまうのよ」
その辺はなんとなくわかる。
あれでしょ?社長だけド派手で、社屋に金かけてても連れてく担当がよれよれのスーツじゃいけないってやつ。
せめて最初に面通しするときぐらいは、きちんとクリーニングにだした社会人年数にあったスーツを着ていかなきゃいけない。
そう察するだけの教育と、給与をあたえているかどうかってことで、その担当だけじゃなく上司や会社も判断されるってこと。
後宮でも同じってことかー。
「あなた自身が徳妃さまに取り立てていただく気があってもなくても、少なくともお茶会の日は徳妃さまが貴方を連れていくのよ」
「よーく、わかった。・・・わかりたくないけど」
ぼそっと呟くと、ふたりは苦笑した。
「ほんと、出世欲とかないわよね。茉莉は」
「だけど明日はおとなしく、徳妃さまのお気に入り楽師として振舞うのよ?」
「わかってるわ」
そう考えると今日、お姉さんたちと明蘭たちにかんざしとか化粧を見ておいて貰ってよかったんだなー。
持つべきものは、気の回る同僚かな。
0
お気に入りに追加
40
あなたにおすすめの小説
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
結婚して5年、初めて口を利きました
宮野 楓
恋愛
―――出会って、結婚して5年。一度も口を聞いたことがない。
ミリエルと旦那様であるロイスの政略結婚が他と違う点を挙げよ、と言えばこれに尽きるだろう。
その二人が5年の月日を経て邂逅するとき
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
どうぞお好きに
音無砂月
ファンタジー
公爵家に生まれたスカーレット・ミレイユ。
王命で第二王子であるセルフと婚約することになったけれど彼が商家の娘であるシャーベットを囲っているのはとても有名な話だった。そのせいか、なかなか婚約話が進まず、あまり野心のない公爵家にまで縁談話が来てしまった。
ああ、もういらないのね
志位斗 茂家波
ファンタジー
……ある国で起きた、婚約破棄。
それは重要性を理解していなかったがゆえに起きた悲劇の始まりでもあった。
だけど、もうその事を理解しても遅い…‥‥
たまにやりたくなる短編。興味があればぜひどうぞ。
未亡人となった側妃は、故郷に戻ることにした
星ふくろう
恋愛
カトリーナは帝国と王国の同盟により、先代国王の側室として王国にやって来た。
帝国皇女は正式な結婚式を挙げる前に夫を失ってしまう。
その後、義理の息子になる第二王子の正妃として命じられたが、王子は彼女を嫌い浮気相手を溺愛する。
数度の恥知らずな婚約破棄を言い渡された時、カトリーナは帝国に戻ろうと決めたのだった。
他の投稿サイトでも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる