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課題
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私が教育実習中に課された課題は、るなの自殺を止めること。つまりるなの心を救うこと。あまりにも実習生に課す様な課題じゃない。そして時間がない。もちろん先生方は助けてくれるはずなんてない。自分でどうにかするしかない。先生方は、そんなことよりも生徒の親によくみられることのほうが重要なのだ。この学校はそうやってボーナスを決めている。この学校に来て、大人がこんなにもお金や地位を大事にしていることを知ったし、こんな先生には、大人には絶対ならないと、心に決めた。
まず、るなが何に苦しめられているのか探す必要がある。本人に聞ければいいが言ってくれるわけもなく。そもそもるなは私のことが嫌いなのだ。廊下で話しかけてもスルーされる始末で、屋上で少し話すくらいだ。るなは心が読めない。何を考えてるのか理解できない。学校では基本的にいじめっ子に囲まれていることが多い。群がりを見かければだいたいるながいじめられている。見てるだけの子や見なかったことにしている子もいる。私が止めに入ればみんな教室に戻るのだが、るなに睨まれるし、先生方には逆に私が怒られる。意味が分からない。生徒を怒れよと思ってしまう。るなに睨まれるのはもっと意味がわからない。助けてほしいわけじゃないのかな?でもだったらなぜ死のうとするのだろうか。何を考えているの?私だって死にたくなることあったし、その時は周りの人に助けてほしくてたまらなかった。るなは違うのだろうか。一体何を企んでいるのだろう。
先に、自分をさらけ出せば、少しは話しやすくなるかもしれない。でも、るなが私を避けるようになるかもしれない。嫌われてしまうかもしれない。だとしても少しでもるなが話しやすくなる可能性があるのなら、私は先生として、話をしなければならない。屋上への階段をのぼりながらそう考えていると、屋上へ入っていくるなの後ろ姿が見えた。急いで後を追いかけて私も屋上へ入る。
「今日は早かったね。ずっと後つけてたの?まるでスパイみた~い。」ふざけて笑うるなは、やっぱり少し寂しそうだった。
「ちがうよ。入ってくのがたまたま見えて追いかけてきただけ。今日は少しお話しない?」
「いいよ。死ぬ前に話してあげる。」あまりにもあっさりOKが出たので正直驚いた。
「るなは私のこと嫌いだと思ってた。」
「え~僕がもえちゃんを~?嫌いなわけないじゃん。」
「いつも避けるから嫌われてると思ってたよ。」そう言って私は静かに笑った。
「嫌ってないよ。でも怒ってはいるかな…それで?なに?話って?自殺のこと?」そう言われたので私はあいまいに返事をした。あながち間違ってはいないがちょっと違う。私は思いきって利き手とは反対の腕の袖をめくって見せた。るなは少し驚いてはいたが、すぐに現状を理解したようだ。頭がいい子は怖いね。
「ねぇ。それ見せてどうしたいの?僕の自殺を止める気?誰でも死にたくなる時はある、だから、一時の感情で命を無駄にしないで。ってそう言いたいわけ?何様のつもり?意味わかんない。僕より長く生きてるからって調子乗りすぎ。なにすべて分かってるみたいな感じ出してんの。あんたも、僕が死なないと思ってるんだ。死ぬ勇気なんかないって。あんたは違うと思ってたのに。もういいよね。帰る」一気に捲し立てられて、怖かった。いつものるなとは違すぎる。それでも、今言わなければ死んでしまうかもしれない。
「待って。」
「そう言いたかったわけじゃない。るなの死にたい原因を知りたいの。でも、普通に聞いても教えてくれるわけないと思った。だから、先に私が自分の過去をさらけ出せば、話しやすくなると思った。だから!」
バタンッ!話し終わる前に思い切りドアが閉められてしまった。驚きのあまり追いかけることができなかった。誤解させてしまった。傷つけてしまった。また絶望させてしまった。謝れなかった。私の気持ちは少しは届いただろうか。最悪な週末を迎えてしまった。この土日のるなが心配だな。るなにもう会いたくないと思われただろうか。るなともう話せないのだろうか。頭の中が、るなでいっぱいになっていくのを感じる。
帰宅後、仏壇に手を合わせて、妹にるなのことを相談した。返事が返ってくるはずないが少し頭の整理ができた。私の妹は中学の時いじめが原因で自殺している。妹を助けられなかった分、同い年のるなを助けたかった。
ー 教育実習終了まであと五日 ー
まず、るなが何に苦しめられているのか探す必要がある。本人に聞ければいいが言ってくれるわけもなく。そもそもるなは私のことが嫌いなのだ。廊下で話しかけてもスルーされる始末で、屋上で少し話すくらいだ。るなは心が読めない。何を考えてるのか理解できない。学校では基本的にいじめっ子に囲まれていることが多い。群がりを見かければだいたいるながいじめられている。見てるだけの子や見なかったことにしている子もいる。私が止めに入ればみんな教室に戻るのだが、るなに睨まれるし、先生方には逆に私が怒られる。意味が分からない。生徒を怒れよと思ってしまう。るなに睨まれるのはもっと意味がわからない。助けてほしいわけじゃないのかな?でもだったらなぜ死のうとするのだろうか。何を考えているの?私だって死にたくなることあったし、その時は周りの人に助けてほしくてたまらなかった。るなは違うのだろうか。一体何を企んでいるのだろう。
先に、自分をさらけ出せば、少しは話しやすくなるかもしれない。でも、るなが私を避けるようになるかもしれない。嫌われてしまうかもしれない。だとしても少しでもるなが話しやすくなる可能性があるのなら、私は先生として、話をしなければならない。屋上への階段をのぼりながらそう考えていると、屋上へ入っていくるなの後ろ姿が見えた。急いで後を追いかけて私も屋上へ入る。
「今日は早かったね。ずっと後つけてたの?まるでスパイみた~い。」ふざけて笑うるなは、やっぱり少し寂しそうだった。
「ちがうよ。入ってくのがたまたま見えて追いかけてきただけ。今日は少しお話しない?」
「いいよ。死ぬ前に話してあげる。」あまりにもあっさりOKが出たので正直驚いた。
「るなは私のこと嫌いだと思ってた。」
「え~僕がもえちゃんを~?嫌いなわけないじゃん。」
「いつも避けるから嫌われてると思ってたよ。」そう言って私は静かに笑った。
「嫌ってないよ。でも怒ってはいるかな…それで?なに?話って?自殺のこと?」そう言われたので私はあいまいに返事をした。あながち間違ってはいないがちょっと違う。私は思いきって利き手とは反対の腕の袖をめくって見せた。るなは少し驚いてはいたが、すぐに現状を理解したようだ。頭がいい子は怖いね。
「ねぇ。それ見せてどうしたいの?僕の自殺を止める気?誰でも死にたくなる時はある、だから、一時の感情で命を無駄にしないで。ってそう言いたいわけ?何様のつもり?意味わかんない。僕より長く生きてるからって調子乗りすぎ。なにすべて分かってるみたいな感じ出してんの。あんたも、僕が死なないと思ってるんだ。死ぬ勇気なんかないって。あんたは違うと思ってたのに。もういいよね。帰る」一気に捲し立てられて、怖かった。いつものるなとは違すぎる。それでも、今言わなければ死んでしまうかもしれない。
「待って。」
「そう言いたかったわけじゃない。るなの死にたい原因を知りたいの。でも、普通に聞いても教えてくれるわけないと思った。だから、先に私が自分の過去をさらけ出せば、話しやすくなると思った。だから!」
バタンッ!話し終わる前に思い切りドアが閉められてしまった。驚きのあまり追いかけることができなかった。誤解させてしまった。傷つけてしまった。また絶望させてしまった。謝れなかった。私の気持ちは少しは届いただろうか。最悪な週末を迎えてしまった。この土日のるなが心配だな。るなにもう会いたくないと思われただろうか。るなともう話せないのだろうか。頭の中が、るなでいっぱいになっていくのを感じる。
帰宅後、仏壇に手を合わせて、妹にるなのことを相談した。返事が返ってくるはずないが少し頭の整理ができた。私の妹は中学の時いじめが原因で自殺している。妹を助けられなかった分、同い年のるなを助けたかった。
ー 教育実習終了まであと五日 ー
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