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第十三章 まるでカオスな視察団
CASE103 メテオラ①
しおりを挟むゴルフリートのオッサン以上の実力者が容疑者である。
パプカに引き続き、ジュリアスの推理なのだが、オリハルコン級冒険者以上の実力者と言えば、リール村どころか人類において存在するのかどうかすら怪しい存在だ。
が、このリール村はその例外に当たる地域。
確かに、人類と言う枠組みであればほぼ皆無であると断言して良いが、人外ならば話は別だ。
例えばディーヴァ。
リール村に居る魔族二人のうちの一人であり、魔王軍四天王の一角。堕天使と呼ばれる種族らしく、その歌をまともに聞くと廃人になってしまうそうだ。
我が家に仮住まいしているが、そう言えば最近見ていない。
まあ、エクスカリバーみたいにあちらこちらの都市を巡ってアイドル(?)活動をしているらしいので、リール村で目撃すること自体が少ないのだ。今回もそんな理由だろう。
そしてもう一人。こちらは今朝がた姿を確認している魔王軍四天王の二人目。
何でこんなクソ田舎に魔王軍四天王が二人もいるんだというツッコミは今更なので割愛するが、彼ならばオッサンにも余裕で勝つだろう。
その名も──
「急患ですドクター!! メテオラさんが!!」
「そう。容疑者はメテオ────急患?」
村の冒険者たちに担がれた一人の青年。
着物と頭に乗った角が特徴的な彼こそが、魔王軍四天王にしてリール村オタクトリオの一角。メテオラである。
「何ぃ!? め、メテオラが容疑者だと思っていたんだが、被害者だったのか!?」
「被害者……? えっと、言っている意味は分かりませんが、とにかくドクターをお願いします!」
飛び込んできた中の一人。ドクターを必死に呼ぶ声の主はルーンだった。
これまでの話を聞いていなかったため、ジュリアスのいう事は理解できていない様子だが、どうやらそんな場合でもないようであった。
「あ、サトーさん! 大変です! メテオラさんの心臓が止まってるんです!!」
「えぇ……」
「この短期間で天丼と言うのもどうなんですか?」
「謎は深まるばかり……ぐぬぬ……っ」
「なんで皆さん冷静なんですか!?」
という事で、再びクーデリアによる蘇生が行われた。
青ざめ泡を吹いていたメテオラは息を吹き返し、ベットの上に寝かされた。
「この村では冒険者が村の中で死ぬのが普通なのですか?」
「そんなわけはないでしょう。まあ、悪ノリで流血沙汰になるのは日常茶飯事ではありますが」
「それはそれでどうなんです?」
呆れるようにため息をついたクーデリア。どうやら村の恥部を晒してしまったらしい。視察評価に響かなければよいのだが。
「しかしこれで被害者が二人になりましたね。しかも両方心臓発作という事は、事件の可能性はますます高まったと言えるでしょう」
「なんか楽しそうだなパプカ?」
「そう言えばジュリアスの推理が途中でしたね。改めて聞いてみることにしましょう」
「うぅ……それはちょっと意地悪じゃないか? 私はてっきりメテオラが第一容疑者だとばかり…………ん?」
ジュリアスがメテオラの顔を覗き込んだ。
目を細め、何かを凝視したかと思えば、俺たちを呼んでメテオラの手元を指さした。
「…………紙だな?」
「…………紙ですね?」
「またですか」
オッサンと同じように、メテオラの手にはどうやら紙が握りしめられているようだった。
「この紙、よく見たら手紙じゃないか? 同じ便箋が使われているみたいだ」
「ああ、今朝がた来た郵便だろうな。リール村は辺境過ぎて、魔法が込められた丈夫な便箋に入れられるから、見た目は全部同じになるはずだし」
「つまりだサトー。二人の死因はこの手紙が原因の可能性があるわけだ!」
「不幸の手紙ですか? ああ、一時期流行りましたねぇ」
「えっ? 不幸の手紙ってこっちの世界でも実在すんの?」
「どこかの召喚者がまき散らしたと聞いております。流石に死にはしませんが、しばらくの間しゃっくりが止まらなくなる呪いがかけられていたとか」
「地味だけどうぜぇな!」
完全に悪ふざけである。
「……はっ! ま、まさかそんな……いやしかし、可能性としてある以上はこの事を……」
「ジュリアス、何か気が付いたんですか?」
「あ、いや……うーん。実は、私もこの二人と同じ便箋を持っているんだが……」
そう言って腰のバッグから取り出した便箋。それは確かに、オッサンとメテオラが握りつぶしている物と同一の物が使われていた。
だが、倒れている二人が持っている物よりも先に、俺たちはこの便箋を目にしていた。
────そう。それは、かの怪盗テュランから投げ渡された……予告状だったのである。
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