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第十一章 まるでやらせな接待業
CASE84 召喚被害防止委員会 その4
しおりを挟む「いやぁ、実は気づいてたよ。見た目も雰囲気も名前も似てるんだもん。なんで俺って知り合いの身内とこんなにエンカウントするんだろうね? 不思議だねぇ?」
「何ぶつぶつ言ってるんでちかサトー、怖いでち」
我がギルドの一員であるアヤセの生前。この世界に召喚された際の特典にて、自らのオタク部屋を共に召喚した彼女は、特典を活かすことなく非業の死を遂げた。
その際に遺したのがオタク部屋。恐らくルテオラが管理していたというのはこの部屋を指すのだろう。
そしてその管理が件のメテオラへと移行して、数か月前のリール村襲来と相成ったわけだ。
「はぁ……せっかくサブカルとやらにも触れさせず、厳格に育て上げたってのに。──いや、今思えば厳しすぎたかもしれねぇが、今じゃアイドルの追っかけ以外何もしてねぇからなぁ……」
厳しく育てた子供は、独立した後反動で極端な趣味に走りやすいと聞いたことがある。
ならばメテオラもそういった影響があるのかもしれない。
──とはいえ、さすがに沼にハマりすぎな気もするが。
人間界と魔界の通貨は違うので、メテオラが人間界でオタク趣味に走るためには現地で稼ぐ必要がある。そういった理由で冒険者登録もしているのだが、稼いだ金は全て趣味に費やすという自堕落な生活を続けているのだ。
ダメ人間まっしぐらである。
「むかついて例の部屋をぶっ壊そうとしても、女神の結界が張られてる上に、重ねてメテオラの加護までつけられてるから俺じゃ傷一つすらつけらんねぇ」
「あぁ……八つ当たりもできないのか……」
メテオラの父親ってことは、実力はそう変わらないのだろう。
そんな男の攻撃ですら歯が立たないって、どんだけ厳重に管理してるんだメテオラは。
「ま、まあ最近じゃサブカルも立派な文化になってるし、そこまで悲観的にならなくても良いんじゃないか? ほら、同じ四天王のディーヴァって人も今じゃアイドル目指して活動してるって話だし……」
「ああ、それは俺も聞いた。だがそのアイドルになるってきっかけが、息子のオタク趣味に影響を受けたって話は知ってるか? 四天王の中でオタク文化が広がってるのは息子のせいなんだと……」
メテオラさん、布教タイプのオタクだった。
「俺だってなぁ! いい歳した息子の趣味をとやかく言うつもりはねぇんだよ! でもな!? それにかまけてニートになるってんなら話は別なんだよ!」
「おや? でも、彼はマオー様の会社で働いているから、四天王と言うのではありませんでしたか?」
「俺の古巣でもあるからな。知り合いに聞いたら、冒険者の質が低すぎて四天王までたどり着けないんだと。つまり、息子は会社に在籍してるだけで働いてはいない!」
…………ニートじゃん。
「メテオラの奴、そんな堕落した生活をしてたのか……」
「さっきから皆は何の話をしてるのでちか? 全然ついていけないのでちが、メテオラってうちの村にいるあの方の事でちか?」
……そういえば、メテオラの正体はごく一部を除いて秘密にしているのだった。
ゆえにパプカも彼の正体を知らない。だからこそこんなにも冷静に居られるのだろう。知らぬが仏とはこのことだ。
「同じ名前の奴なんて珍しくもないだろ。俺の知り合いにもメテオラなんて15人はいるからな」
「いやそれはいすぎでしょ」
「とにかく! うちのメテオラと今話に出てきている奴は別人だから! 深くかかわるんじゃねぇお願いします!!」
「わ、わかりまちたよ……」
なぜ俺がこんなにも必死になっているのか。それは、我がリール村にはメテオラをオタクの道に引き入れた人物が少なくとも三人在籍しているからだ。
一人目はきっかけ。今話題に挙がっているアヤセ・ナナミ。オタク部屋の正統所有者。
二人目は先生。オタクのいろはを教え込んだある意味元凶、エクスカリバー。
三人目は友人。ことあるごとにヴォルフの街へ遊びに行くヘビーユーザー、リュカン。
もし俺とパプカがそいつらが居る村の所属だと知られたならば、ルテオラの怒りの矛先が向けられる可能性がある。
大事な息子をニート化させた奴らの仲間と思われたならば、その怒りはある程度正統性を帯びるだろう。
ゆえに、俺は人族であることと奴らの関係者であることを絶対に隠そうと、改めて心の中で決意した。
「まあまあ。愚痴はそのぐらいにして、お仕事の話に戻りましょう。ルテオラさん、ほかに報告することは無いんですか?」
「あ、悪い……そうだなぁ。その管理してる部屋に関することなんだが、持ち主である召喚者の足取りを調べているうちに、やけに出てくる名前があってな」
「召喚者の関係者でしょうか? 彼らは影響力が強いですからね」
「いや、召喚者の影響力っていうか、この人物の影響を召喚者が受けてるって言うのか? 奴らの中で噂になってるやつの名前なんだが──」
召喚者にかかわろうとする人間など、基本的にろくな奴はいない。
彼らの対策に回っている委員会はともかくとして、奇人変人のオンパレードである。
エクスカリバーに好んでつるむのは同じオタク趣味の野郎ども。コースケやハルカについていくのは、その特性に中てられた恋愛脳どもだ。
どいつもこいつもキャラが濃い。もう少し大人しくしていられないのだろうか。
「サトーっていう奴らしい」
────はい?
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