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第十一章 まるでやらせな接待業
CASE84 召喚被害防止委員会 その1
しおりを挟む召喚者エクスカリバー。
言わずと知れた我がリール村の冒険者ギルドに所属する備品(?)。
一昔前のオタク像そのものな言動を持ち、女神さまから賜った特典によってその実力はチート級。そしてチート級のウザい奴。
人を小馬鹿にするかのような台詞に、無駄に高い実力を以て攻撃を仕掛けてくるのである。しかもその実力も肝心な時に発揮しない。
洞窟に飛ばされたときは、宝箱の中を別荘にしてくつろぐという意味不明な状況で合流。
結局なんの役に立つこともなく場を引っ掻き回してその後行方不明だ。
「サトー、エクスカリバーってもしかしなくても……」
「西部でその名前ってことは…………そうなんだろうな」
エクスカリバーはリール村所属となっているが、その実基本的に西部の街【ヴォルフ】に派遣されている。
と言うのもウザすぎるからである────と言うのは9割本当だが、残りの1割はきちんとした理由がある。
王国の中でも有数の経済規模を誇るヴォルフの街。当然ながら冒険者ギルドの活動なども活発であり、様々な方面の職員が視察に訪れる先としても有名なのだ。
そんな場所にエクスカリバーを送るのだから、目的はやはりギルドの視察である。彼がまとめたレポートの中には、形式はめちゃくちゃだが連絡網としてとても優秀なものも存在した。
加えて彼はオタク。オタクたちのメッカとなっているヴォルフの街には視察でなくとも行きたがる。
彼の趣向とギルドの利益、そして俺の心の平穏のために彼を西部へと送っているのである。
「私は現在、ヴォルフの街にて複数人の召喚者の監視を行っているのですが、数か月前からこの街に現れたエクスカリバーによって様々な被害が発生しています」
「様々ってぇのは?」
「例えばアイドルのファンクラブ間の抗争を煽る行為ですね。その時の彼の発言がありますので、手元の資料をご覧ください」
ワルジュから配られていた資料に目を通すと、そこには文字だけでエクスカリバーの発言だとわかる文章が書かれていた。
『アイドルはみぽりん氏が至高! それ以外は有象無象で等しく以下でござる!!』
「ふざけんな! てぃにゃさん一番に決まってんだろうが! 最大手だからってほかを馬鹿にすんな!!」
「はぁっ!? 何をたわけたことを! みぽりんもてぃにゃもカジィ様の足元にも及ばねぇよ! ワッフルワッフル!」
「古いんだよ表現が! ババア専は黙ってろ!!」
「君たち落ち着き給え。結局あれこれ言っていても、やはりカリバー氏の言う通りトップアイドルはみぽりんちゃんで決まりでしょう。あの美しく整った胸! そしてうなじ! まさに至高!!」
『ああん!? みぽりん氏はおみ足でござろうが! どこに目をつけてるでござるか!!』
「何考えてんだお前ら! てぃにゃさん命の俺だが、みぽりんはへそだよへそ!!」
「そういうことなら言わせてもらう!! みぽりんは口元だ! 若々しいのに妖艶な唇が良いんだろうが!!」
と、その後にも醜い争いが書き連ねてあるのだが長くなりすぎるので割愛。
とにかく醜い争いにエクスカリバーが油を注いだと見るのが正しいだろう。ちなみにみぽりんさんは一度見ただけだが、個人的には腰のラインだと思う。
「その他にも、冒険者ギルドサブマスターにして下院議員なども務めるルトン・ヴォルフ18世とも懇意にしているらしく、最近は「うるせぇ! 今は政治よりもカリバー氏と協力してオタ業務が優先じゃい!!」等と言って仕事をサボらせまくっています」
「何やってんだあいつ……」
ルトンサブマスとはオタク友達であることは知っていたが、まさか業務に差し支えるほど付き合いがあるとは初耳だ。
所属地方が違うとはいえ、冒険者ギルドの重鎮に何してくれてるんだ。
「業務を抜け出すために、ルトンさんの秘書の方と毎度ドンパチをやっているそうです。その余波で氏の邸宅がたびたび半壊状態になっています。ヴォルフ家の邸宅は歴史的文化財でもあるので、その方面の皆々様から怨嗟の声がささやかれています」
何せ18世と付くぐらい、歴史のある家柄だ。その文化財を破壊ともなれば人類の損失レベルでやばい話。と言うかクーデリアさんは一緒になって何やってんだよ。
「その他にもまだまだ被害はあるのですが、残りは各自資料をご参照ください。キリがありませんので──という訳でまとめですが、このエクスカリバーと言う召喚者。脅威レベルを最高水準。【Sランク】として申請いたします」
「何だと!? おいおい正気かよ!」
「Sランクつったら、歩くマッチポンプのキサラギ・コースケ並みじゃあねぇか! そんなにやべぇのかよ!」
「…………あ、あの……私の担当がすみません」
うちの身内がすみません。
「実力で見ても被害規模で見ても妥当だと考えます。可能であれば委員会から人員を増派して頂きたく思います────チッ、ホントろくなもんじゃありゃしない」
ワルジュの閉じた両目が鈍く光りながら開いている。どうやら本気で怒っているらしい。
わかるよ。エクスカリバーの相手なんて、仕事であってもやりたくないもんな。本当にご苦労様です。
「ま、まあ……ワルジュの苦労は分かったよ。でも会合中だし、愚痴はまた今度な────という訳で、今度は俺の番だな」
ワルジュに次いで、今度はディルが名乗りを上げた。
「俺の担当はみんな知っての通り──ああ、ママルカとパプカは知らなかったな。じゃあ最初から────俺の担当はさっきも出たコースケ…………のハーレムの一人。ミヤザキ・ハルカについて回ってるんだ」
──またしても知り合いの犯行であった。
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