189 / 215
番外編
8.《会長・副会長の過去とその後1》会長視点
しおりを挟む
ある日突然、幼馴染であるロックから手紙が届いた。内容を見ると念願のフェンネル様の従者になれることが決定したと書かれている。
ロックとは魔法学院をお互い卒業し俺が騎士団、ロックが魔術学校にそれぞれ入学してから数える程しか会えていない。
それには理由がある。
それは俺が騎士団候補生として寮に入り、日々の訓練と各地での実地訓練に赴くからである。そのせいでロックからの手紙も暫く経ってから開封することもしばしばであった。
俺とロックは幼少期から親同士の付き合いもあり、俺達も同い年であったことから自然と一緒にいることが多くなった。俺は昔からあまり頭を使うのは得意ではなく、殆ど腕っ節と魔法の力だけでのし上がってきた部分がある。それに比べてロックは昔から優しくて穏やかな性格をしており、俺が魔法学院で生徒会長に立候補した時も「シアが生徒会長になったら大変だろうから、私も着いていくよ。」と言って副会長になってくれた。
俺はそんな優しいロックを好きになるのにそれほど時間はかからなかった。気付いた時には側にいるのが当たり前だったしロックが隣に居ないのは想像出来なかった。
それから暫く経ち、ローランド家の末のご子息が入学してくることが分かった。それも能力は水。それが分かった時、ロックは今までに無いほど号泣していた。ロックは昔からタジェット様に付いていたグレン様を見ており「いつか自分も…!」と言っていたのを覚えている。それから何年経ってもローランド家には水の能力者が生まれず、半端諦めていたところにフェンネル様が生まれた。それも俺達が在学中に入学してくることからロックの期待は凄まじいものがあっただろう。
とにかく俺はロックの動向を見つつ、フェンネル様のことも観察することに決めた。
結果的に言うとフェンネル様は侯爵家らしからぬ腰の低さで印象はとても良かった。正直、タジェット様を知っている俺としてはとても心配だったが、あのフェンネル様ならロックが従者として付いても大丈夫だろうと判断した。
しかし、いざロックが従者のことをフェンネル様に聞くとよく知らない様子ー…。
まさか…これはマズイのでは?と思い、ロックの部屋に行くと案の定、泣いている。俺が今から慰めてもあまり効果はないだろうが、好きな奴が泣いてるのに放ってはおけない。俺は静かにロックの部屋に入ると背後から抱き締め「きっと良い返事が貰えるから、もう泣き止め。」と頰に口付けた。
ロックは幼馴染のスキンシップの延長だと思っているが、俺は徐々に慣れるように昔から確信的に続けている。ロックも始めは恥ずかしがっていたが今は普通に受け入れるようになった。
「んっ…グズっ…でも…でもフェンネル様…従者のこと…知らな…かった…。」
「…何か事情があったんだって。それにフェンネル様はまだ7歳だろ?タジェット様もある程度年齢がいってからグレン様を付けたじゃないか。心配するな。」
「う…うん…。でも、もし…フェンネル様が嫌だって言ったら…どうしよう…。」
「大丈夫。その時は俺が側にいるから。」
俺はそう言ってロックを正面から抱き締めた。
あれから数年経ち、フェンネル様が婚約したことを知らされた。10歳という年齢での婚約は決して珍しいものではなかったが、まさか重婚するとは思わなかった。
その婚約式にも俺やロックも呼んでもらえ、久しぶりの再会にロックは涙し、俺も心から祝福の言葉を述べた。
それから更に7年程経ち、俺達がそれぞれの場所でそれなりの地位になった頃、あの手紙を受け取った。ロックの話では、フェンネル様がタジェット様の子供を妊娠した為、身の回りのお世話をして欲しいという内容だった。ロックは「やっと!やっとフェンネル様の側に!」と久しぶりの再会もフェンネル様一色の話に付き合わされた。俺はそれに苦笑いを浮かべながらも、嬉しそうなロックの姿を見れるのは嬉しい。俺の笑顔に気付いたロックが「シア、どうしたの?」と可愛らしい顔で聞いてくる。俺は「別になんでも。それより良かったな。」と言うと満面の笑みで「うん!」と返してくる。
「(はぁー…フェンネル様…俺のロックを取らないで下さいね…。)」
と俺は心の中で祈るしかなかった。
ロックとは魔法学院をお互い卒業し俺が騎士団、ロックが魔術学校にそれぞれ入学してから数える程しか会えていない。
それには理由がある。
それは俺が騎士団候補生として寮に入り、日々の訓練と各地での実地訓練に赴くからである。そのせいでロックからの手紙も暫く経ってから開封することもしばしばであった。
俺とロックは幼少期から親同士の付き合いもあり、俺達も同い年であったことから自然と一緒にいることが多くなった。俺は昔からあまり頭を使うのは得意ではなく、殆ど腕っ節と魔法の力だけでのし上がってきた部分がある。それに比べてロックは昔から優しくて穏やかな性格をしており、俺が魔法学院で生徒会長に立候補した時も「シアが生徒会長になったら大変だろうから、私も着いていくよ。」と言って副会長になってくれた。
俺はそんな優しいロックを好きになるのにそれほど時間はかからなかった。気付いた時には側にいるのが当たり前だったしロックが隣に居ないのは想像出来なかった。
それから暫く経ち、ローランド家の末のご子息が入学してくることが分かった。それも能力は水。それが分かった時、ロックは今までに無いほど号泣していた。ロックは昔からタジェット様に付いていたグレン様を見ており「いつか自分も…!」と言っていたのを覚えている。それから何年経ってもローランド家には水の能力者が生まれず、半端諦めていたところにフェンネル様が生まれた。それも俺達が在学中に入学してくることからロックの期待は凄まじいものがあっただろう。
とにかく俺はロックの動向を見つつ、フェンネル様のことも観察することに決めた。
結果的に言うとフェンネル様は侯爵家らしからぬ腰の低さで印象はとても良かった。正直、タジェット様を知っている俺としてはとても心配だったが、あのフェンネル様ならロックが従者として付いても大丈夫だろうと判断した。
しかし、いざロックが従者のことをフェンネル様に聞くとよく知らない様子ー…。
まさか…これはマズイのでは?と思い、ロックの部屋に行くと案の定、泣いている。俺が今から慰めてもあまり効果はないだろうが、好きな奴が泣いてるのに放ってはおけない。俺は静かにロックの部屋に入ると背後から抱き締め「きっと良い返事が貰えるから、もう泣き止め。」と頰に口付けた。
ロックは幼馴染のスキンシップの延長だと思っているが、俺は徐々に慣れるように昔から確信的に続けている。ロックも始めは恥ずかしがっていたが今は普通に受け入れるようになった。
「んっ…グズっ…でも…でもフェンネル様…従者のこと…知らな…かった…。」
「…何か事情があったんだって。それにフェンネル様はまだ7歳だろ?タジェット様もある程度年齢がいってからグレン様を付けたじゃないか。心配するな。」
「う…うん…。でも、もし…フェンネル様が嫌だって言ったら…どうしよう…。」
「大丈夫。その時は俺が側にいるから。」
俺はそう言ってロックを正面から抱き締めた。
あれから数年経ち、フェンネル様が婚約したことを知らされた。10歳という年齢での婚約は決して珍しいものではなかったが、まさか重婚するとは思わなかった。
その婚約式にも俺やロックも呼んでもらえ、久しぶりの再会にロックは涙し、俺も心から祝福の言葉を述べた。
それから更に7年程経ち、俺達がそれぞれの場所でそれなりの地位になった頃、あの手紙を受け取った。ロックの話では、フェンネル様がタジェット様の子供を妊娠した為、身の回りのお世話をして欲しいという内容だった。ロックは「やっと!やっとフェンネル様の側に!」と久しぶりの再会もフェンネル様一色の話に付き合わされた。俺はそれに苦笑いを浮かべながらも、嬉しそうなロックの姿を見れるのは嬉しい。俺の笑顔に気付いたロックが「シア、どうしたの?」と可愛らしい顔で聞いてくる。俺は「別になんでも。それより良かったな。」と言うと満面の笑みで「うん!」と返してくる。
「(はぁー…フェンネル様…俺のロックを取らないで下さいね…。)」
と俺は心の中で祈るしかなかった。
36
お気に入りに追加
4,593
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
迷子の僕の異世界生活
クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。
通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。
その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。
冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。
神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。
2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる