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番外編

8.《会長・副会長の過去とその後1》会長視点

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ある日突然、幼馴染であるロックから手紙が届いた。内容を見ると念願のフェンネル様の従者になれることが決定したと書かれている。

ロックとは魔法学院をお互い卒業し俺が騎士団、ロックが魔術学校にそれぞれ入学してから数える程しか会えていない。

それには理由がある。

それは俺が騎士団候補生として寮に入り、日々の訓練と各地での実地訓練に赴くからである。そのせいでロックからの手紙も暫く経ってから開封することもしばしばであった。



俺とロックは幼少期から親同士の付き合いもあり、俺達も同い年であったことから自然と一緒にいることが多くなった。俺は昔からあまり頭を使うのは得意ではなく、殆ど腕っ節と魔法の力だけでのし上がってきた部分がある。それに比べてロックは昔から優しくて穏やかな性格をしており、俺が魔法学院で生徒会長に立候補した時も「シアが生徒会長になったら大変だろうから、私も着いていくよ。」と言って副会長になってくれた。

俺はそんな優しいロックを好きになるのにそれほど時間はかからなかった。気付いた時には側にいるのが当たり前だったしロックが隣に居ないのは想像出来なかった。

それから暫く経ち、ローランド家の末のご子息が入学してくることが分かった。それも能力は水。それが分かった時、ロックは今までに無いほど号泣していた。ロックは昔からタジェット様に付いていたグレン様を見ており「いつか自分も…!」と言っていたのを覚えている。それから何年経ってもローランド家には水の能力者が生まれず、半端諦めていたところにフェンネル様が生まれた。それも俺達が在学中に入学してくることからロックの期待は凄まじいものがあっただろう。

とにかく俺はロックの動向を見つつ、フェンネル様のことも観察することに決めた。



結果的に言うとフェンネル様は侯爵家らしからぬ腰の低さで印象はとても良かった。正直、タジェット様を知っている俺としてはとても心配だったが、あのフェンネル様ならロックが従者として付いても大丈夫だろうと判断した。

しかし、いざロックが従者のことをフェンネル様に聞くとよく知らない様子ー…。

まさか…これはマズイのでは?と思い、ロックの部屋に行くと案の定、泣いている。俺が今から慰めてもあまり効果はないだろうが、好きな奴が泣いてるのに放ってはおけない。俺は静かにロックの部屋に入ると背後から抱き締め「きっと良い返事が貰えるから、もう泣き止め。」と頰に口付けた。

ロックは幼馴染のスキンシップの延長だと思っているが、俺は徐々に慣れるように昔から確信的に続けている。ロックも始めは恥ずかしがっていたが今は普通に受け入れるようになった。

「んっ…グズっ…でも…でもフェンネル様…従者のこと…知らな…かった…。」

「…何か事情があったんだって。それにフェンネル様はまだ7歳だろ?タジェット様もある程度年齢がいってからグレン様を付けたじゃないか。心配するな。」

「う…うん…。でも、もし…フェンネル様が嫌だって言ったら…どうしよう…。」

「大丈夫。その時は俺が側にいるから。」

俺はそう言ってロックを正面から抱き締めた。






あれから数年経ち、フェンネル様が婚約したことを知らされた。10歳という年齢での婚約は決して珍しいものではなかったが、まさか重婚するとは思わなかった。

その婚約式にも俺やロックも呼んでもらえ、久しぶりの再会にロックは涙し、俺も心から祝福の言葉を述べた。



それから更に7年程経ち、俺達がそれぞれの場所でそれなりの地位になった頃、あの手紙を受け取った。ロックの話では、フェンネル様がタジェット様の子供を妊娠した為、身の回りのお世話をして欲しいという内容だった。ロックは「やっと!やっとフェンネル様の側に!」と久しぶりの再会もフェンネル様一色の話に付き合わされた。俺はそれに苦笑いを浮かべながらも、嬉しそうなロックの姿を見れるのは嬉しい。俺の笑顔に気付いたロックが「シア、どうしたの?」と可愛らしい顔で聞いてくる。俺は「別になんでも。それより良かったな。」と言うと満面の笑みで「うん!」と返してくる。

「(はぁー…フェンネル様…俺のロックを取らないで下さいね…。)」

と俺は心の中で祈るしかなかった。
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