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番外編【ディル編】

3. 馴れ初め3

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「(えっ…何?なんで急に!?)」

私はとにかく殿下から離れてくれるのを待った。暫く抱き締められたままでいると漸く離れる。

「あの…殿下…先程、おっしゃったことは本気ですか?」

「勿論だ。」

と間髪を入れずに告げられる。

「ですが、私は殿下に好かれる理由が分からないのですが…。」

そう聞くと殿下がモゴモゴと何か言っている。

「えっ?」と聞き返すと「一目惚れだ!」と叫ばれた。

「(はぁ?…一目惚れ?ファー殿下ともあろう人が私に一目惚れ?でも、私は殿下と会ったのはつい最近のはず…。)」

私はその告白になんて返そうか考えていると、いきなり「それは私がご説明致します。」と本棚の後ろから老紳士が出てきた。私はいきなりのことに身を硬くする。

老紳士はお辞儀をしながら「失礼致しました、私はファー殿下の従者のカルダモンと申します。」と自己紹介をしてくる。

「はっ…はぁ…。」

「殿下がディル様と初めてお会いしたのは今から5年前…ディル様の兄上であるタジェット様の10歳の誕生日会のことでした。」

「(えっ!?)」

「お会いしたという言い方は語弊がありますが、その時、殿下はディル様を見て一目惚れをしたのです。」

「(…でも当時、私は殆ど自己表現をしてなかったし、親しい友人もいなくて決して褒められた性格ではなかったんだけど…。)」

私はチラッとファー殿下を見ると、ファー殿下は顔を赤らめ、こちらをジッと見つめていた。私は急いでバッと目線を逸らしカルダモンさんを見返す。

「あの…それで?」

「それから我々は殿下の指示の下、ディル様について調べ尽くしました。」

その瞬間、ファー殿下が「カルダモン!余計なことは言うんじゃない!」と叫んだが、私の耳にはもう聞こえているので恐怖で震えた。

「(何!?何を調べたの?)」

「そして、殿下はディル様の10歳の誕生日会で再び、お会い出来ることをとても楽しみにしていました。しかし、ディル様は身内で事を済ませてしまいその日から暫くの間、殿下は公務に支障が出るほど落ち込んでおりました。」

「コラッ!余計なことを言うなと言っているだろう!」

と殿下は顔を赤くして怒っている。

私はそれが可愛く思え、フフッと笑ってしまった。すると殿下が「ディルが私の前で初めて笑ってくれた…。」と感動している。

「ゴホンッ!続きを宜しいですか?それから殿下は10歳で再びお会い出来るという目標を果たせず絵描きに描いてもらったディル様の肖像画を眺める日々となりました。」

「えっ…?」

「だから!カルダモン!そういうことは言わなくていい!」

「しかし殿下、こういうことは後に言えば言うほど言われた者は不快になるのですよ。ですから、そこは包み隠さずお伝えしなければ。」

「う"っ…!はぁ~…わかった…。」

「そして殿下はディル様に会えない日々を過ごされましたが、とうとう我慢できずに陛下にこの学院に入学させてもらえる様、直談判したのです。陛下も殿下に想い人がいることは知っていましたし、殿下の落ち込み様も心配しておりました。よって、時期は遅くなりましたが、やっと今春に入学させてもらえたというわけです。」

「…あの…殿下が入学した経緯は分かりましたが、何故急に告白なのですか…?私が言うのも変ですが、こういうものはお互いのことをもっと知ってから告白というものをするのでは…?」

「確かにそうですね、しかし、私達の調べによるとディル様に想い人が出来たということが分かりました。それを殿下に伝えたところ、詳しい事情も聞かずに殿下が勢いで告白してしまった…というわけです。」

「想い人…ですか?
(フェルのことだろうな。)」

「だから!私はディルが他の者に取られてはいけないと思い思わず言ってしまったんだ!ディル!私達はお互いのことを余り知らない、それは分かっている。しかし、これから私のことを恋愛対象として見てくれないか?決してディルの嫌がるようなことはしないと誓う、だから!頼む!」

殿下の必死な様子に私は「はい!わかりましたから!」と返事をした。

「殿下がそこまで私のことを好いて下さっていることは十分わかりました。でも、私に想い人がいることも事実です。ですから、私がその想い人とのことがハッキリするまで待って下さい、話はそれからです、私だって自由に誰かを好きになってみたいのです。殿下…お願いです、分かって下さい。」

私はそう言うと頭を下げた。

「…本当は私以外に目を向けるのは嫌だが…仕方ない…わかった、ディルの気持ちを汲もう。しかし、これからは遠慮なくディルのことを口説くからな…それは許してくれ。」

殿下はそう言うとそっと私を抱き締めた。






それから数年後、私が17歳の年、殿下と婚姻することが決まった。

あの発言からの殿下のお誘いは凄まじかったが、だんだんとそのお誘いも嫌じゃない自分がいた。そう気付いた時にはもう殿下のことを好きになっていたんだと思う。

先程は、散々身体を貪られ「少しは手加減してくれ!」と思ったが懐かしい記憶も思い出せたことだし、会議から帰ってきたら珍しく甘やかしてやろう。

そんなことを考えている内に「ディル!お待たせ!」と殿下が帰ってきた。私は痛む腰を支えながら起き上がり、ベッドサイドに腰掛けてきたファーに抱き着くとファーの目を見つめ「愛してる。」と告げた。
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