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第3章

172. ディル兄様婚約式

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「そっ…そうなんだ…。
(ディル兄様…殿下と仲良くやってるかな…?前に話した時、なんだかんだ惚気てたから大丈夫だと思うけど…。)」








それからあっという間に2ヶ月が経った。

その間に僕はカラマス君やサックルさんの家に挨拶に行ったり、旦那様同士の顔合わせを行なった。

プレス様からは改めて謝られたり、アニスには「俺達、親戚になるんだな。」と喜ばれた。母様に至ってはサックルさんを見て「まぁまぁ~!」と興奮し、獣化をお願いしていた。

そしてディル兄様とファー・グランド殿下の婚約式が差し迫ったある日、僕は父様に呼ばれた。

「フェル、もうすぐディルと殿下の婚約式だがその後すぐにお前の10歳の誕生パーティーがある、覚えているな?」

「うん、それは勿論。タジェット兄様と挨拶の練習もしているし。」

「そうか、それならいいんだが…。それで今回呼んだのはそのパーティーについてだ。この際だからその誕生パーティーでお前の婚約式も行おうと思う。」

「えっ…?」

僕は余りの急展開に反応できずにいた。

「お前もわかっている通り、正式な婚約は15歳になってからだ。しかし、お前に婚約者がいることを他の方々に知らせておくのもいいだろうと思ってな。今回はお披露目という形をとる、構わないか?」

「…うっ…うん、他の人が良ければだけど…。」

僕はドギマギしながら答えた。

「わかった、この話は私が3人に伝えておこう。とりあえずフェルはディルの婚約式のことを考えていてくれ…フェル、急に話を進めて悪いな。」

と父様は謝った。









それからとうとう、ディル兄様の婚約式当日を迎えた。

この国の殿下…それも将来陛下になる人の婚約式ということで街中がお祭り騒ぎだ。

僕は今更ながら「(ディル兄様、凄い人と結婚するんだなぁ…。)」と思っていた。僕も割りと凄い人と婚約するけど兄様の比ではない。僕は朝からエリーにおめかしされ、薄く化粧も施される。出発するときにはカラマス君が側にいてくれた。

父様や母様は主役の親なので先に会場入りし、お客様の出迎えを、タジェット兄様は親族ではあるが殿下の護衛の為、側に配置されているそうだ。僕の隣にはカラマス君が立ち、エスコートしてくれる。気恥ずかしさはあるものの、これから慣れていかなくては。

僕達は主役2人が現れるまでの間、知り合いの人に挨拶をしたり食事を楽しんだ。するとある1箇所で一際、人が集まっている場所がある。僕達はそこに興味本位で近付くと輪の中心にはあの規制のかかっていた街で出会ったオレガノ様ともう1人見覚えのある人がいた。
きっと今回の主役のご兄弟だから皆んなからお祝いの言葉を言われているのだろう。それに優雅に返答する姿を眺めていると見覚えのある男性の人が「あっ!」という表情を見せ、こちらに近付いてきた。

「やぁ、カラマス。」と親しげにカラマス君に話掛ける。

「タンジー殿下、本日は誠におめでとうございます。本来は私がそちらに出向かなければいけないのに申し訳ございません。」

「いや、あの人数だ。仕方ない、気にするな。」

とタンジー殿下はカラマス君の肩をたたく。

「(この人…この前僕が光魔法で助けた…。)」

僕は思わず殿下に「ご体調は大丈夫でしょうか?」と聞いてしまった。だが殿下は気にせず「?…ああ、特に問題ない。」と答える。僕は少しその答えに不安を持ちつつも改めて挨拶をした。

「…タンジー殿下、初めまして私はフェンネル・ローランドです。この度は誠におめでとうございます。」

「ああ…君がフェンネルか、ディル様から話は聞いているよ、天使のような弟がいると。」

「えっ…いや、そんな…!
(ディル兄様、なんて説明してるの!)」

と僕が焦っていると「殿下。」とカラマス君が口を開く。

「殿下、こちらのフェンネルは私の婚約者でもあるのです。どうぞお見知り置き下さい。」

「おお、そうなのか。それはおめでたいな。カラマスもおめでとう。」

「ありがとうございます。」

そんな会話をしていると「タンジー兄様!」と先程の集団から1人の少年が現れた。
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