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第3章
160. ベイローレルの事情
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草木が鬱蒼と生え、そのせいで視界は狭く足元もおぼつかない。僕は懸命に足を踏み出し、一歩一歩確実に進んで行った。
「(急に崖とかやめてよー…。)」
僕がそんなことを考えていると足元に伸びていた蔦に足を取られた。咄嗟に受け身を取ったので顔面強打は免れたが身体が一瞬熱くなるような冷や汗をかいた。フゥ~と溜息を吐き、立ち上がろうとした瞬間、片足にその蔦が絡みつく。
「(えっ!?)」と思ったときには足首から太ももにかけて蔦が巻き付き、逆さま状態で吊るされていた。僕はこの蔦をどうにかしようと蔦に水魔法で攻撃を仕掛ける。
しかし、いくら攻撃しても蔦が切れることがない。
「(えっ!?ちょっ…ヤバイ!コレただの蔦じゃない!)」
だんだん頭に血が上ってきて、苦しくなってきた。奏功しているうちに蔦の先端からドロドロとした透明な樹液が流れ、その樹液は絡みついている衣類を溶かし始めた。
「(いやー!触手プレイみたいになるー!)」
僕は出来る限りの腹筋を使い、魔法でダメならナイフだ!と切りかかる。しかし、今度はその樹液のせいで蔦が保護されているせいか切ることが出来ない。
「(コレ、ホントにヤバイ!兄様云々とか言ってられないよ!僕の初めてが蔦とか嫌すぎる!)」
僕は思い切って叫んだ。
「誰か助けてー!!!」
その瞬間、僕は誰かの手によって助けられていた。誰かに抱き締められているが僕の顔は相手の胸辺りにある為、誰が助けてくれたか知ることが出来ない。
僕が「ありがとうございます!」と顔を上げるとそこには先程、別れたはずのベイローレルさんの呆れた顔があった。
「ベイローレルさん!」と驚いて声をあげると「全く…ヒヤヒヤさせるなよな。」と笑われ、なんとか蔦の拘束から抜け出すことができた。
「ベイローレルさん、なんでここに?」
僕は疑問をぶつける。
「お前、ギルドに来ただろう?あの時、俺も奥の席で時間つぶしてたんだ。そしたらお前が何かの依頼に行くのを見えて心配になって着いてきた。お前がこのまま何事もなく依頼を遂行してたら手を出すつもりはなかったんだが…着いてきてよかったわ。」
「うっ…すみません、ありがとうございます。危うく蔦に襲われるところでした…。」
「…アレは只の蔦じゃねぇぞ。蔦に見せかけて人の血を吸う吸血植物だ。それも穴という穴に蔦を突っ込んで相手を気絶させてから吸血するっていうエグい植物だ。アイツにはフェンネルの能力は効かねぇ、火魔法しか通用しねぇんだ。」
「(怖っっ!)
そっ…そうだったんですね。本当にありがとうございました…ベイローレルさんが来てくれなかったら僕の命は無かったかもしれません…。」
「まぁ、なんとか助けれてよかったわ。それでフェンネル、俺はお前に一言言っておきたいことがある。お前は出来るだけ戦いたくないから採取系の依頼を受けてるだろう?それが悪いとは言わねぇ。だが、今回みたいなこともあるんだと知っていてくれ。採取自体は容易くても何処に生えてるかで危険度が違う。今回、依頼された植物は比較的、容易に採取できるもんだ。だが、いかんせん量が多い。すると必然的にこんな森の奥まで来ないといけなくなる。初心者の冒険者は依頼をこなそうとどんどん奥まで来ちまって、こんな植物にやられちまうってわけだ。いくらお前が特殊だといっても効果のない相手だと簡単に死ぬぞ?いいか、危険だと思ったら一度そこで止めろ、初心者なのを自覚してくれ。」
そうベイローレルさんに注意された。
「…たしかにそうですね、危険を承知で森の奥まで入ってきてしまいました。正直、自分の能力が特殊なので驕っていたのかもしれません。すみません…ご心配おかけして。」
僕はそう反省し謝罪した。
「いや、分かってくれたんならそれでいい。次からは俺がいるとは限らないんだし、注意してくれ。」
僕達は森を抜け、街まで戻ってきた。
あの後、ベイローレルさんのおかげで無事依頼を遂行でき、ポイントも貰えた。
再び合流できたベイローレルさんにお礼を言うと僕は別れ際のことを聞いてみることにした。
「ベイローレルさん…僕が叔父様の屋敷に到着した時、なんであんなにあっさり立ち去ったんですか…?たしかに叔父様の家までの護衛を依頼したのは僕ですけど、てっきり最後まで付き合ってくれるものだと思ってました。」
最後は少し語尾がキツくなり、責めるような言い方をしてしまった。
するとベイローレルさんは目線を僕から外し「うん…いや…うん…。」と言葉を濁す。
「僕が貴族だったから離れたんですか…?」と聞くと「いや、そうじゃない。」と言う。
「じゃあ、叔父様ですか?」と聞くとあからさまにビクッと反応した。
「叔父様が苦手なんですか?」と再度聞くと「いや、苦手というかなんというか…。」とさらに言葉を濁された。
「あの、決して無理強いはしたくないのですがどうしても引っかかって…。ベイローレルさん、お願いです!教えて下さい!」
と必死にお願いした。
するとベイローレルさんは観念したのか、ハァ~と溜息を吐くとこう答えた。
「実は昔、タイン様に告白して振られたんだよ。」
「(急に崖とかやめてよー…。)」
僕がそんなことを考えていると足元に伸びていた蔦に足を取られた。咄嗟に受け身を取ったので顔面強打は免れたが身体が一瞬熱くなるような冷や汗をかいた。フゥ~と溜息を吐き、立ち上がろうとした瞬間、片足にその蔦が絡みつく。
「(えっ!?)」と思ったときには足首から太ももにかけて蔦が巻き付き、逆さま状態で吊るされていた。僕はこの蔦をどうにかしようと蔦に水魔法で攻撃を仕掛ける。
しかし、いくら攻撃しても蔦が切れることがない。
「(えっ!?ちょっ…ヤバイ!コレただの蔦じゃない!)」
だんだん頭に血が上ってきて、苦しくなってきた。奏功しているうちに蔦の先端からドロドロとした透明な樹液が流れ、その樹液は絡みついている衣類を溶かし始めた。
「(いやー!触手プレイみたいになるー!)」
僕は出来る限りの腹筋を使い、魔法でダメならナイフだ!と切りかかる。しかし、今度はその樹液のせいで蔦が保護されているせいか切ることが出来ない。
「(コレ、ホントにヤバイ!兄様云々とか言ってられないよ!僕の初めてが蔦とか嫌すぎる!)」
僕は思い切って叫んだ。
「誰か助けてー!!!」
その瞬間、僕は誰かの手によって助けられていた。誰かに抱き締められているが僕の顔は相手の胸辺りにある為、誰が助けてくれたか知ることが出来ない。
僕が「ありがとうございます!」と顔を上げるとそこには先程、別れたはずのベイローレルさんの呆れた顔があった。
「ベイローレルさん!」と驚いて声をあげると「全く…ヒヤヒヤさせるなよな。」と笑われ、なんとか蔦の拘束から抜け出すことができた。
「ベイローレルさん、なんでここに?」
僕は疑問をぶつける。
「お前、ギルドに来ただろう?あの時、俺も奥の席で時間つぶしてたんだ。そしたらお前が何かの依頼に行くのを見えて心配になって着いてきた。お前がこのまま何事もなく依頼を遂行してたら手を出すつもりはなかったんだが…着いてきてよかったわ。」
「うっ…すみません、ありがとうございます。危うく蔦に襲われるところでした…。」
「…アレは只の蔦じゃねぇぞ。蔦に見せかけて人の血を吸う吸血植物だ。それも穴という穴に蔦を突っ込んで相手を気絶させてから吸血するっていうエグい植物だ。アイツにはフェンネルの能力は効かねぇ、火魔法しか通用しねぇんだ。」
「(怖っっ!)
そっ…そうだったんですね。本当にありがとうございました…ベイローレルさんが来てくれなかったら僕の命は無かったかもしれません…。」
「まぁ、なんとか助けれてよかったわ。それでフェンネル、俺はお前に一言言っておきたいことがある。お前は出来るだけ戦いたくないから採取系の依頼を受けてるだろう?それが悪いとは言わねぇ。だが、今回みたいなこともあるんだと知っていてくれ。採取自体は容易くても何処に生えてるかで危険度が違う。今回、依頼された植物は比較的、容易に採取できるもんだ。だが、いかんせん量が多い。すると必然的にこんな森の奥まで来ないといけなくなる。初心者の冒険者は依頼をこなそうとどんどん奥まで来ちまって、こんな植物にやられちまうってわけだ。いくらお前が特殊だといっても効果のない相手だと簡単に死ぬぞ?いいか、危険だと思ったら一度そこで止めろ、初心者なのを自覚してくれ。」
そうベイローレルさんに注意された。
「…たしかにそうですね、危険を承知で森の奥まで入ってきてしまいました。正直、自分の能力が特殊なので驕っていたのかもしれません。すみません…ご心配おかけして。」
僕はそう反省し謝罪した。
「いや、分かってくれたんならそれでいい。次からは俺がいるとは限らないんだし、注意してくれ。」
僕達は森を抜け、街まで戻ってきた。
あの後、ベイローレルさんのおかげで無事依頼を遂行でき、ポイントも貰えた。
再び合流できたベイローレルさんにお礼を言うと僕は別れ際のことを聞いてみることにした。
「ベイローレルさん…僕が叔父様の屋敷に到着した時、なんであんなにあっさり立ち去ったんですか…?たしかに叔父様の家までの護衛を依頼したのは僕ですけど、てっきり最後まで付き合ってくれるものだと思ってました。」
最後は少し語尾がキツくなり、責めるような言い方をしてしまった。
するとベイローレルさんは目線を僕から外し「うん…いや…うん…。」と言葉を濁す。
「僕が貴族だったから離れたんですか…?」と聞くと「いや、そうじゃない。」と言う。
「じゃあ、叔父様ですか?」と聞くとあからさまにビクッと反応した。
「叔父様が苦手なんですか?」と再度聞くと「いや、苦手というかなんというか…。」とさらに言葉を濁された。
「あの、決して無理強いはしたくないのですがどうしても引っかかって…。ベイローレルさん、お願いです!教えて下さい!」
と必死にお願いした。
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