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第3章
151. 出発
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姉様の屋敷に戻って来るとベイローレルさんが出迎えてくれた。
「どうだ?アイツとはゆっくり話が出来たのか?」
僕はベイローレルさんの問いに上手く答えれず「…まぁそうですね。」と誤魔化した。
「(カラマス君、今頃、凄く悩んでるだろうな…でも、僕も10歳までに結論を出さないといけないしカラマス君も婚約が迫ってる、この機会にハッキリさせないと。)」
そう自分に言い聞かせた。
お昼頃になると僕達は次の街に行く前にギルドに寄ることにし、屋敷を出発した。カラマス君の返事が聞けてないのは心残りだが、すぐに結論が出るものでもない。自分の都合よりカラマス君の都合に合わせるべきだろう。姉様にも「また報告待ってるわ~!」と元気よく送り出された。
「フェル、まずはギルドに行って依頼完了のサインを見せるんだ。多分それだけじゃランクは上がらないだろうが地道に頑張れよ。」
「はい、わかりました。とりあえず出してきます。」
ギルドに到着した僕達は受付に依頼完了の書類を提出した。それは難なく受領され僕のランクに登録された。
「ローランド様、お疲れ様です。次のランクへ上がるにはあと9ポイント必要です。また依頼をこなしポイントを貯めてください。難しい依頼程ポイントは高いですが危険度も高いです。その辺を踏まえてお考え下さい。」
「はい、ありがとうございます。また宜しくお願いします。」
僕はそう受付にお礼を言うとギルドを後にした。
ギルドの入り口で待ってもらっていたベイローレルさんに声を掛ける。
「終わりました!1ポイント貯まったみたいです。また地道に頑張りますね!」
「ああ、先は長いが頑張れば確実にランクは上がる。頑張れよ。」
と頭を撫でてくれた。
それから僕達は本来の目的である次の街へ向かって歩き出した。2時間ほど歩き、小休憩を取る。ベイローレルさんが「次の街まではあと3時間ってとこだな。前の街が海に近かった分、次は山を登るぞ。フェル、大丈夫か?」と心配してきた。正直「大丈夫です!」と言える程、自信はないがやれるだけやってみようと思い「できるだけ頑張ります。」と答えた。
それから1時間後、僕はベイローレルさんにおんぶされている。やはり僕の体力じゃ山登りは過酷だったようだ。完璧な登山道具は必要ないにしろ、きちんと舗装されているわけではない道をひたすら歩くのは僕には無謀すぎた。最初はなんとかベイローレルさんに手を繋いでもらいながら歩けていたが、進んで行くにつれて難易度が上がっていく。明らかに登れないだろうという絶壁が立ちはだかった時、僕は諦めた。
僕が「(これは無理だー…。)」とその絶壁を見上げていると
「フェル、回り道をすれば向こうに行けなくもないが回り道をすれば夜はここで過ごすことになる。いくら魔獣の少ない土地とはいえゼロじゃない、なんとかこの壁を登るぞ。」
と言われ、僕は情けなくも「むっ…無理です。」と答えた。
僕のその泣きそうな様子にベイローレルさんは「ブフッ!」と笑い出すと
「お前は登らなくてもいいんだよ。俺がおんぶして登るか俺だけ登って後はロープで引っ張るってことも出来るしな。」
と言ってくれた。
話し合いの結果、僕をおんぶした方がいい、という結論となったのでベイローレルさんは楽々と僕をおんぶしたまま壁を登って行った。勿論、登った後下ろして欲しいと頼んだが断られ、今の状態に落ち着いたというわけだ。
ベイローレルさんの歩幅で歩く分、進むスピードは格段に早い。今まで僕のペースに合わせてくれていたことがわかり、申し訳ない気持ちになった。
「ベイローレルさん、すみません…。今まで歩きづらかったですよね…?」
「えっ?ああ、スピードのことか?いや、そりゃフェルの体格を考えればあれぐらい普通だろ?それに俺は護衛として雇われてるんだから別にそんなこと気にしないさ。」
と楽しそうに答える。
「(ベイローレルさん…最初の印象からは考えられないくらい男前になったな…。僕もこんな懐の広い大人になりたい。)」と感心しつつお礼を言った。
それから暫く歩くと街が見えてきた。ベイローレルさんも「やっとだな。」と嬉しそうだ。
しかし、街の入り口が近付いてくるにつれて人々が屯(たむろ)したり、積荷を運ぶ馬車などが立往生している。何事かと近付くと今までの街でなかった身分証の提示を義務付けられているらしい。ここにいる人達はその身分証がない為に中に入れない人々だった。
ベイローレルさんは近くにいた商人のような人に事情を聞いている。
「なぁ、これは一体どういうことだ?」
「いや、俺もよく分からねぇ。噂では今、この街に王族の誰かが泊まっているらしいんだ。だからその人の安全の為に身分証を見せないといけないんだと。全く困ったもんだよ、こっちは注文の品を届けに来てるのにそれも渡せねぇ…!」
と愚痴を言っていた。
「どうだ?アイツとはゆっくり話が出来たのか?」
僕はベイローレルさんの問いに上手く答えれず「…まぁそうですね。」と誤魔化した。
「(カラマス君、今頃、凄く悩んでるだろうな…でも、僕も10歳までに結論を出さないといけないしカラマス君も婚約が迫ってる、この機会にハッキリさせないと。)」
そう自分に言い聞かせた。
お昼頃になると僕達は次の街に行く前にギルドに寄ることにし、屋敷を出発した。カラマス君の返事が聞けてないのは心残りだが、すぐに結論が出るものでもない。自分の都合よりカラマス君の都合に合わせるべきだろう。姉様にも「また報告待ってるわ~!」と元気よく送り出された。
「フェル、まずはギルドに行って依頼完了のサインを見せるんだ。多分それだけじゃランクは上がらないだろうが地道に頑張れよ。」
「はい、わかりました。とりあえず出してきます。」
ギルドに到着した僕達は受付に依頼完了の書類を提出した。それは難なく受領され僕のランクに登録された。
「ローランド様、お疲れ様です。次のランクへ上がるにはあと9ポイント必要です。また依頼をこなしポイントを貯めてください。難しい依頼程ポイントは高いですが危険度も高いです。その辺を踏まえてお考え下さい。」
「はい、ありがとうございます。また宜しくお願いします。」
僕はそう受付にお礼を言うとギルドを後にした。
ギルドの入り口で待ってもらっていたベイローレルさんに声を掛ける。
「終わりました!1ポイント貯まったみたいです。また地道に頑張りますね!」
「ああ、先は長いが頑張れば確実にランクは上がる。頑張れよ。」
と頭を撫でてくれた。
それから僕達は本来の目的である次の街へ向かって歩き出した。2時間ほど歩き、小休憩を取る。ベイローレルさんが「次の街まではあと3時間ってとこだな。前の街が海に近かった分、次は山を登るぞ。フェル、大丈夫か?」と心配してきた。正直「大丈夫です!」と言える程、自信はないがやれるだけやってみようと思い「できるだけ頑張ります。」と答えた。
それから1時間後、僕はベイローレルさんにおんぶされている。やはり僕の体力じゃ山登りは過酷だったようだ。完璧な登山道具は必要ないにしろ、きちんと舗装されているわけではない道をひたすら歩くのは僕には無謀すぎた。最初はなんとかベイローレルさんに手を繋いでもらいながら歩けていたが、進んで行くにつれて難易度が上がっていく。明らかに登れないだろうという絶壁が立ちはだかった時、僕は諦めた。
僕が「(これは無理だー…。)」とその絶壁を見上げていると
「フェル、回り道をすれば向こうに行けなくもないが回り道をすれば夜はここで過ごすことになる。いくら魔獣の少ない土地とはいえゼロじゃない、なんとかこの壁を登るぞ。」
と言われ、僕は情けなくも「むっ…無理です。」と答えた。
僕のその泣きそうな様子にベイローレルさんは「ブフッ!」と笑い出すと
「お前は登らなくてもいいんだよ。俺がおんぶして登るか俺だけ登って後はロープで引っ張るってことも出来るしな。」
と言ってくれた。
話し合いの結果、僕をおんぶした方がいい、という結論となったのでベイローレルさんは楽々と僕をおんぶしたまま壁を登って行った。勿論、登った後下ろして欲しいと頼んだが断られ、今の状態に落ち着いたというわけだ。
ベイローレルさんの歩幅で歩く分、進むスピードは格段に早い。今まで僕のペースに合わせてくれていたことがわかり、申し訳ない気持ちになった。
「ベイローレルさん、すみません…。今まで歩きづらかったですよね…?」
「えっ?ああ、スピードのことか?いや、そりゃフェルの体格を考えればあれぐらい普通だろ?それに俺は護衛として雇われてるんだから別にそんなこと気にしないさ。」
と楽しそうに答える。
「(ベイローレルさん…最初の印象からは考えられないくらい男前になったな…。僕もこんな懐の広い大人になりたい。)」と感心しつつお礼を言った。
それから暫く歩くと街が見えてきた。ベイローレルさんも「やっとだな。」と嬉しそうだ。
しかし、街の入り口が近付いてくるにつれて人々が屯(たむろ)したり、積荷を運ぶ馬車などが立往生している。何事かと近付くと今までの街でなかった身分証の提示を義務付けられているらしい。ここにいる人達はその身分証がない為に中に入れない人々だった。
ベイローレルさんは近くにいた商人のような人に事情を聞いている。
「なぁ、これは一体どういうことだ?」
「いや、俺もよく分からねぇ。噂では今、この街に王族の誰かが泊まっているらしいんだ。だからその人の安全の為に身分証を見せないといけないんだと。全く困ったもんだよ、こっちは注文の品を届けに来てるのにそれも渡せねぇ…!」
と愚痴を言っていた。
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