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第3章

150. 選択

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次の日、僕は1人でカラマス君の家へと向かった。すると門のところでカラマス君が立っている。近付いていくとカラマス君は僕に気付き「フェル!良かった、来てくれて!」と嬉しそうに告げた。

「そりゃあ約束したんだからちゃんと来るよ?」と笑うと「でも、昨日は不快な思いをさせて帰らせたから怒って来てくれないかと思ってたんだ。」と不安そうな顔をしたが直ぐに笑顔になった。

「ほら!僕はちゃんと来たんだし、カラマス君も僕に話があったんでしょう?なら何処か座って話そうよ。」

「ああ、そうだな。じゃあフェルが昨日、綺麗にしてくれた庭のベンチに行こう。俺達の思い出の場所だからな。」






ベンチの前に辿り着き、いざ座ろうとすると僕はいきなりカラマス君に抱き締められた。

ビックリして固まっていると「フェル…少しだけ抱き締めさせてくれ…。昨日は本当にすまない、不快な思いをさせて…。」と謝ってきた。

僕はカラマス君の背中をポンポン叩くと

「別に気にしてないよ、この世界じゃよくあることなんだし。」

と笑ってみせた。

それでもカラマス君は気になるのか僕の手を握りしめたままベンチに座る。そして真剣な目をしてこちらを見つめた。

「フェル…お前に誤解されたくないから先に言っておく。俺が愛してるのは今も昔もフェルだけだ。だから、俺のことを忘れないでくれ。」

「えっ?…忘れるってどういうこと?」

「いくら、お前と手紙のやり取りはしてるといえ、ここ何ヶ月かはほとんどやれていない状況だ。だから、フェルが…俺がお前のことを好きだということが忘れられそうで怖い…。
フェルのことだから昨日の状況から察してるとは思うが、実はまだ婚約解消出来ていないんだ。昨日の女性は俺の婚約者候補の1人でベリーと言う。最初、父様に用意された婚約者候補は5人もいたんだ。この2年間、時間をかけて円満に解決しようと思い4人は解消できた。でもあのベリーだけは首を縦に振らなくて…。アイツは俺と同じ公爵家の人間で親もそれなりに地位のある人間だ。だから本人も自分には同じような地位のある人物じゃないと婚約者として認めないという節がある。そこで候補に挙がったのが俺だ。」

カラマス君はそう切実に話してきた。

「そうだったんだ…。でも僕はカラマス君の気持ちを忘れてないから安心して。
僕、実はずっと悩んでたんだ、カラマス君の僕に対する気持ちは最初に優しくしたことへの錯覚なんじゃないかって。あの時は否定してくれたけど時間が経てば忘れるものなんじゃないかって。だから正直、この2年間でカラマス君は婚約者候補の誰かと結婚するんじゃないかって思ってた。」

「そんな…!」とカラマス君は悲痛な声を上げる。

「…うん、ゴメン。それは僕がカラマス君を信じてきれてなかったからだね。でもそう思ってたのは最初だけだよ。この2年間、忙しくしてる中で手紙をくれて愛の言葉をくれるカラマス君を僕はだんだん好きになった。またいつかカラマス君と会って話すことが出来たら僕の気持ちを伝えようって思ってた…けど…。」

そう伝えるとカラマス君は「フェル!」と感動したように抱き締めてきた。しかし、僕はその抱擁を素直に喜べない。何故なら今から彼に残酷なことを伝えるからだ。

僕はカラマス君の抱擁を少し離すと、覚悟を決めカラマス君を見つめた。

「カラマス君、僕は君に大事なことを伝えないといけない。実はこの間、僕はタジェット兄様と婚約したんだ。」

「…えっ?なっ…んで?」

「…今まで色んなことがあって兄様には沢山助けてもらった。それにずっと兄様には好きだと言われていたんだ。あることがあって僕も兄様のことが好きなんだと自覚してこの間、その告白を受け入れた。」

「えっ…でも…!今、俺のことが好きだって…!」

「うん…僕は兄様もカラマス君も好きなんだ。だから2人どちらかなんて選べない。僕はカラマス君の了承が貰えるなら"重婚"って形をとりたいんだ。」

「じゅう…こん。」

カラマス君は怒っているような悲しんでいるような複雑な表情をしている。

「重婚って知ってる…?一妻多夫のような形が取れる制度なんだ。僕は結局、兄様もカラマス君も選ぶことが出来なくてずるい選択をした。僕が偉そうに言える立場じゃないけど、カラマス君にはどうするか選んでほしい。」

カラマス君はその言葉にどうすればいいか分からず狼狽えているようだった。

「…そういえばそんな制度があると習ったことがある…。まさかフェルがその選択をするなんて…悪い…ちょっと考えさせてくれ。」

カラマス君はそう言うと頭を抱えてベンチに座った。

僕はその様子を静かに見つめ、その場を後にした。
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