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第3章

143. ムスク到着

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「フェンネル、俺達今から何処に向かうんだ?」

確かにこれからどうするかベイローレルさんには伝えなければいけない。

「えっと…今からこの先のムスクというところに行きます。僕の姉が嫁いでその街に住んでるので久しぶりに挨拶をしようかと思っています。それで最終的にはアンバーという街に行きたいです。旅の途中に違う街に立ち寄るのは構いませんが日数が限られているのであまり長居は出来ません。」
 
僕は今後、必ず行かなければいけない場所だけの説明をした。

「そうか…アンバーか。結構な大都市だな。王都とは違うが栄えた街だぞ。」

「えっベイローレルさん、行ったことあるんですか?」

「当たり前だろ、俺はこれでも高位ランク者だぞ。だいたいの街には1度は行ってる。色んな街に行って依頼を受けてランクを上げていったんだ。」

「そうなんですね、すごいです…。僕、こんな旅をしたのが初めてなので色々話を聞きたいです!」

「ああ、行きながら話してやるよ。それで何処で馬車を手配する?」

ベイローレルさんは当たり前の様に聞いてきた。

しかし僕は「いえ…馬車は使いません、というか使えないんです…。」と落ち込みながら答える。

「えっ!?なんでだよ!?馬車が苦手なのか!?」

とベイローレルさんも動揺している。

「(そりゃそうだよね…この長旅に馬車を使わないとか…。)
いえ、苦手というわけではないのですがこの旅をする時に母から馬車を使ってはいけないと言われているんです、それじゃあ冒険にならないからと。」

「…いや、まぁそういう考え方もあるけどよ、正直フェンネルの脚じゃあ1週間以上はかかるぞ?」

「(ですよねー…。)
そうですよね…でも仕方ないんです…せっかくですから僕も出来る限り馬車は使用しないようにしようと思って。」

「まぁフェンネルがそう言うんなら従うけどよ…でも俺は全く使わないのは反対だぞ。できるだけフェンネルの意思は汲むが次の街まで着くのに夜を跨ぎそうになったらそこは遠慮なく馬車か馬を使わせてもらう。アンバーまでの道のりは比較的安全だと言われているが夜は別だ、魔獣が活発になるからいくら安全だと言われてても危険度は増す。だからそのことだけは頭に入れといてくれ。」

「…わかりました。僕もその意見に賛成です。僕としては馬車を使いたいんですけどね…でも強制だったので仕方ないんです…。」

僕はあの時、母様に思い付きのように言われた光景を思い出した。

「そうか、じゃあ馬車を使う時の判断は俺がさせてもらう。」

「はい、お願いします。」


僕達は今後の流れをある程度、共有したところで再びムスクの街を目指して歩き出した。






それから1時間、若干疲れが出てきた。

「(はぁ…はぁ…いつもはこんなに疲れないんだけどな…てか、道がアップダウン激しすぎなんだよ!平坦なら2時間はいけるのに!)」

僕はそう文句をつけながら歩いていると
「おい…フェンネル、大丈夫か?やっぱり馬車を使うか?」と心配される。

「いえ…大丈夫です。」と何故か変な意地からそう返事をした。しかし、それから暫く歩いていたが今度は足の裏が痛くなってきた。

「(うぅ~…さっき大丈夫って言ったばっかりなのに…。)」

そう思いながらトボトボ歩いていると急にベイローレルさんに抱っこされる。

「うわぁ!」と驚いて抱き着くと「…ったく、痛いなら痛いって言えよ。フェンネル1人担ぐくらいなんてことないぜ。」と呆れられた。

「すっ…すみません。」

ベイローレルさんにはバレバレだったらしい。

「変な意地張るな、お前を運ぶのも護衛の仕事だと思え。しんどい時や痛い時は遠慮なく言え。」

僕はベイローレルさんのありがたい申し出に二つ返事で了承した。






それから僕はベイローレルさんに抱っこしてもらう形で旅を続けていた。

「あっ!ベイローレルさん!街が見えてきましたよ!ムスクです!」

僕はやっと現れた街に興奮し、そう叫んだ。

「やっとだな…俺も馬を使わずに来たのは初めてだ。これだけ時間がかかるってことを覚えておくか…。」

ベイローレルさんは全然疲れた様子を見せずに呟いた。

それから30分弱、歩くと街の入り口まで辿り着いた。そこからは降ろしてもらい1人で歩く。

「ベイローレルさん、コッチです!コッチが姉様の家です!」

僕は久しぶりに姉様に会えることが嬉しくてベイローレルさんを急かす。

ベイローレルさんに若干笑われながら、やっと屋敷に着いた。一度ドアの前で深呼吸をする。コンコンッとドアノッカーを叩くと中から知っている執事さんが出て来た。

「あの、こんにちは!フェンネルです。」

「いらっしゃいませ、フェンネル様。ようこそお越し下さいました。上でロザリーナ様もお待ちです。」

そう言って姉様のいる部屋へ案内される。部屋に入ると何故か姉様の他に3名程、女性がソファーに座っていた。

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