上 下
127 / 215
第2章

126. 父様の心配

しおりを挟む
それから暫くして兄様から「そろそろ行こうか。」と言われ立ち上がった。

父様の部屋へ行くまで僕はかなり緊張していたが、兄様に手を握られると幾分、楽になる。



コンコンッ

「父様、タジェットです。少し宜しいですか?」と声を掛けると「ああ、いいぞ。」と返事があり中に入る。

「父様、お帰りなさい。」と僕が言うと「フェルも一緒だったのか、ただいま。それで2人してどうしたんだ?」

父様に聞かれ、少し沈黙になる。

僕が緊張しながらも口を開こうとした時、兄様が先に口を開いた。

「父様、私が10歳の時の約束を覚えていらっしゃいますか?」

「(えっ!?10歳の時!?)」と驚きながら兄様を見ると

「…ああ、覚えているよ。」

父様は少し考える素振りをしたがハッキリと答えた。

「その約束が現実になりました、フェルが私の気持ちを受け入れてくれたのです。」

と兄様は淡々とそのことを伝える。

すると「…そうなのか、フェル?」と父様は僕に聞いてきた。

僕が静かに「うん…。」と答えると、

「そうか………それはおめでとう。
タジェットも長年の夢が叶ってよかったな。こんな日も来るだろうと思い、考えていたことがある。2人には1つだけ守ってほしい。それはこの事実をフェルが成人するまで黙っていることだ。2人も分かっているとは思うが、法律で禁止にはなっていないものの兄弟間での結婚はあまり良く思われていない。私は初めから兄弟間での結婚をとやかく言うつもりはないが、周りの風当たりは厳しいだろう。そしてその何気ない言葉で傷付くのはフェルだ。タジェット、分かっているな?お前がフェルを守るんだぞ。どんなことがあってもフェルのことを一番に考えてやれ。」

珍しく父様の真面目な反応に僕の方が驚いてしまった。

「(そっ…そんなに兄弟間ってよく思われてないんだ…。それに加えて重婚するかもしれない僕って周りから見たらどんなんだろう…。)」

と不安に駆られた。

一方、兄様は

「勿論です。私はどんなことがあってもフェルを第一に考え守っていきます。10年近く片想いをしていたのが叶ったのですから生半可な覚悟ではありません。」

と宣言していた。

「そうか…その言葉忘れるなよ。

フェル…タジェットはきっとお前を裏切ることはないだろう。だからお前もタジェットの気持ちをわかってあげてくれ。

それと…。」

と急に父様は小声になり、僕にだけ聞こえるように耳打ちしてきた。

「…性交はしてもよいが、子作りは成人してからな。」

とニヤニヤして言われてしまう。

僕はボッと顔が赤くなったが、それでも「うん…気を付けます。」と返しておいた。

それから兄様は父様と少し話しをしてから戻ることになった為、僕だけ先に兄様の部屋に戻ることになった。

「(とりあえず、父様に僕達のこと認めてもらえてよかった…。でも兄弟間ってそんなにダメなのかな…僕は愛があればいいと思うんだけど。まぁ日本でも近親相姦ってあんまりよく思われてなかったし…やっぱり問題は子供のことなのかな…。血が濃すぎるとなかなか子供が出来ないって言うし…。
それより兄様…大丈夫かな…?父様に僕のことで怒られてないかな…?)」

とソファーに体育座りをしながら膝に額を乗せて考えていた。

するとガチャと音を立てて兄様が戻ってきた。

僕は急いで兄様の元へ走って行くと兄様の胸へと飛び付いた。

「どうしたの、フェル?寂しかった?」

と兄様は嬉しそうに僕を抱き締める。

僕は少し兄様から顔を上げると、

「それは…大丈夫だったけど…兄様、僕のことで父様に怒られたりしてない?」

と見つめた。

しかし、兄様は驚いた顔で、

「えっ?なんで?もう認めてもらってるのに怒られたりしないよ。ちょっと注意されただけ。」

「ええっ!?なんて?」

「さっき父様が私達のことはフェルが成人を迎えるまで誰にも言わないように言ってたでしょう?でもこの屋敷の関係者には言ってもいいって。それに注意されたのは私が嬉しくて騎士団のメンバーに言わないように、って言われただけだよ。」

と頭を撫でられた。

「(あっ、そうなんだ…。でもどうしよう…それまでにカラマス君とサックルさんのことがあるから2人には伝えないと…。後で父様に相談しに行かなくっちゃ。)

…わかった。気をつけるね!」

と返すと

「やっと…これで心置きなくフェルとイチャイチャ出来るよ。長かったけど、叶うとこんなにも嬉しいものなんだね。」

と改めて抱き締められた。
しおりを挟む
感想 96

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

迷子の僕の異世界生活

クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。 通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。 その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。 冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。 神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。 2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。

女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?

青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。 そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。 そんなユヅキの逆ハーレムのお話。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

処理中です...