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第2章
102. 番い
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サックルさんはよく分かってないように首を傾けた。
「いや、そもそもお互いのこと何も知らないのに"番い"とか変じゃないですか!」
と言うと、サックルさんは「ふむ…。」と考え込み、
「たしかに私はお主の名前さえ知らぬな…。」
と言った。
「そうですよね!?だからいきなり番いになるのは無理だと思います。」
「では、お互いのことを知れば番いになってくれるのか?お主は私の名前を知っている。私はお主の名前は知らぬが匂いは分かるぞ。」
「(にっ…匂い!?獣人だから匂いに敏感なのか…!?)
いや、サックルさんには申し訳ないのですが僕は獣姦は出来ないので番いにもなれませんし…それに好きでもない人と恋人にはなれないというか…。」
とモゴモゴ言っていると、
「獣は嫌いか?それとも私が嫌いか?」
「いや、決してサックルさんが嫌いと言うわけじゃないんですが、とりあえずお互いのことを知らなければ番いにもなれないと思うんです!サックルさんだって番いになる人が性格的に合わない人だったら一緒にいたくないですよね…?
(これ話噛み合ってるよね?さっきから同じような事ばっかり言ってる気がするんだけど…。)」
サックルさんは再び「ふむ…。」と考え込むと、
「お互いのことを知るか…。お主が私の為にその食べ物を外に置いてくれたり、今日も私の為に持ってきてくれたのであろう?その優しい心根であることは知っておるぞ?」
と言った。
「(おぉっ!サンドイッチのこと、そんな嬉しかったの?)
たしかに、これはサックルさんに渡そうと思っていましたが特に深い意味は無く…。」
(ただこの前のお詫びに…。)と言おうとしたが、サックルさんに遮られた。
「わかっておる。アニスの友人であるから私に気を遣ったのであろう?
それでも私はその食べ物に付いたお主の匂いに無性に惹かれたのだ。
それは説明したくても説明できるものではない。アニスに詳しく聞いてみるがいい。もうすぐ此方へ来る。」
サックルさんはそう言うと耳をピクピクと動かし鼻をスンッとしながら上を見上げた。
すると「フェルー!!!何処だー!」とアニスの声が聞こえた。
「(ホントに来た!
それより…熊耳ピクピク動いてて可愛い…触りたいな…。)」
とサックルさんの耳を見つめているとそれに気付いたのか、
「番いになればいつでも触らせてやる。」
とニヤッと笑ったように…見えた。
その間に、アニスが僕がいることに気付き「コッチだ!」と叫んでいる。
アニスは此方を見下ろし「叔父上!」と驚いていた。
「叔父上、フェルを傷付けないで下さい!」と慌てて降りてくる。
「アッ…アニス、大丈夫だから。」と声を掛けるが、相変わらず緊張した面持ちだ。
するとサックルさんが
「心配するな。私はそやつを傷付けるつもりはない。助けに来たのだ。」
「助けに…?」
「左様。フェル、私の背中に掴まれ。」
とサックルさんは言うと僕に背を向けてきた。
僕はアニスをチラッと見るとアニスも驚きながらも頷いた。
そして背中の毛皮にしがみ付くとサックルさんは片手で僕を支え、あとは跳躍を使って崖を登った。
僕は短時間だが熊のモフモフ具合を堪能出来て嬉しかった。降ろされた時も名残惜しく感じたくらい。
サックルさんは僕の表情を見て「また触らせてやる。」と言ってくれた。
その後、アニスも登ってきてローザとバジルさんと合流したが、その頃にはもうサックルさんは森へ還った後だった。
アニスの屋敷へ到着すると、お風呂に直行し、今はアニスとローザに事情聴取をされているところだ。
「とにかく、フェルに怪我がなくて良かった。しかし、なんであの状況になったんだ…?叔父上が助けてくれるなんて滅多なことじゃないぞ?」
とアニスは不思議そうな顔をしている。
僕は何処から言うべきか悩みつつ、
「あぁ…なんかね…サンドイッチが気に入ったらしいよ。(僕、嘘はついてないよね!?)」
「それだけか…?」
「あと、なんか匂いがどうとか言ってたけど…。」
と目を逸らしながら言うと、
「匂いだと!」とアニスが立ち上がった。
「(えっ…そんな大変なこと!?)」
「他には!?」
アニスが鬼気迫る感じで問い詰めてくる。
「あとは…番いとか…?」
「「番い!?」」
アニスとローザの声が被る。
「本当に番いって言ったのか!?」
「うっ…うん。
なんか僕からいい匂いがしたから番いにしたい、って…。
でも!お断りしたんだよ!?そんなお互いのこと知らないのに番いにはなれません!って。」
僕は手を振って必死なのをアピールした。
しかし、アニスは考え込んだまま黙ってしまった。
するとローザが口を開く。
「フェル…知ってるかもしれないけど獣人にとって匂いは重要なんだ。人間には分からない匂いも普段から敏感に感じるし、特に不快な匂いは強烈に感じる。その中でいい匂いがして番いのことを口にするってことは1つの愛情表現なんだ。僕達、獣人は人間より子孫を残すために生殖活動が激しいんだけど、どんなに容姿や性格が良くたって自分にとっていい匂いだと感じないと魅力的にも思わないし、アレが勃たないんだ…。だから、アニスの叔父さんがその事を口にしたってことはフェルが考えてるより大ごとだと思う…。そんな人に生涯で出会える可能性も低いし、見つけた時はどんな手段を使っても手に入れようとする。そりゃあ色んな障害もあるから、出来る限りになっちゃうけどね。」
とローザに説明された。
「いや、そもそもお互いのこと何も知らないのに"番い"とか変じゃないですか!」
と言うと、サックルさんは「ふむ…。」と考え込み、
「たしかに私はお主の名前さえ知らぬな…。」
と言った。
「そうですよね!?だからいきなり番いになるのは無理だと思います。」
「では、お互いのことを知れば番いになってくれるのか?お主は私の名前を知っている。私はお主の名前は知らぬが匂いは分かるぞ。」
「(にっ…匂い!?獣人だから匂いに敏感なのか…!?)
いや、サックルさんには申し訳ないのですが僕は獣姦は出来ないので番いにもなれませんし…それに好きでもない人と恋人にはなれないというか…。」
とモゴモゴ言っていると、
「獣は嫌いか?それとも私が嫌いか?」
「いや、決してサックルさんが嫌いと言うわけじゃないんですが、とりあえずお互いのことを知らなければ番いにもなれないと思うんです!サックルさんだって番いになる人が性格的に合わない人だったら一緒にいたくないですよね…?
(これ話噛み合ってるよね?さっきから同じような事ばっかり言ってる気がするんだけど…。)」
サックルさんは再び「ふむ…。」と考え込むと、
「お互いのことを知るか…。お主が私の為にその食べ物を外に置いてくれたり、今日も私の為に持ってきてくれたのであろう?その優しい心根であることは知っておるぞ?」
と言った。
「(おぉっ!サンドイッチのこと、そんな嬉しかったの?)
たしかに、これはサックルさんに渡そうと思っていましたが特に深い意味は無く…。」
(ただこの前のお詫びに…。)と言おうとしたが、サックルさんに遮られた。
「わかっておる。アニスの友人であるから私に気を遣ったのであろう?
それでも私はその食べ物に付いたお主の匂いに無性に惹かれたのだ。
それは説明したくても説明できるものではない。アニスに詳しく聞いてみるがいい。もうすぐ此方へ来る。」
サックルさんはそう言うと耳をピクピクと動かし鼻をスンッとしながら上を見上げた。
すると「フェルー!!!何処だー!」とアニスの声が聞こえた。
「(ホントに来た!
それより…熊耳ピクピク動いてて可愛い…触りたいな…。)」
とサックルさんの耳を見つめているとそれに気付いたのか、
「番いになればいつでも触らせてやる。」
とニヤッと笑ったように…見えた。
その間に、アニスが僕がいることに気付き「コッチだ!」と叫んでいる。
アニスは此方を見下ろし「叔父上!」と驚いていた。
「叔父上、フェルを傷付けないで下さい!」と慌てて降りてくる。
「アッ…アニス、大丈夫だから。」と声を掛けるが、相変わらず緊張した面持ちだ。
するとサックルさんが
「心配するな。私はそやつを傷付けるつもりはない。助けに来たのだ。」
「助けに…?」
「左様。フェル、私の背中に掴まれ。」
とサックルさんは言うと僕に背を向けてきた。
僕はアニスをチラッと見るとアニスも驚きながらも頷いた。
そして背中の毛皮にしがみ付くとサックルさんは片手で僕を支え、あとは跳躍を使って崖を登った。
僕は短時間だが熊のモフモフ具合を堪能出来て嬉しかった。降ろされた時も名残惜しく感じたくらい。
サックルさんは僕の表情を見て「また触らせてやる。」と言ってくれた。
その後、アニスも登ってきてローザとバジルさんと合流したが、その頃にはもうサックルさんは森へ還った後だった。
アニスの屋敷へ到着すると、お風呂に直行し、今はアニスとローザに事情聴取をされているところだ。
「とにかく、フェルに怪我がなくて良かった。しかし、なんであの状況になったんだ…?叔父上が助けてくれるなんて滅多なことじゃないぞ?」
とアニスは不思議そうな顔をしている。
僕は何処から言うべきか悩みつつ、
「あぁ…なんかね…サンドイッチが気に入ったらしいよ。(僕、嘘はついてないよね!?)」
「それだけか…?」
「あと、なんか匂いがどうとか言ってたけど…。」
と目を逸らしながら言うと、
「匂いだと!」とアニスが立ち上がった。
「(えっ…そんな大変なこと!?)」
「他には!?」
アニスが鬼気迫る感じで問い詰めてくる。
「あとは…番いとか…?」
「「番い!?」」
アニスとローザの声が被る。
「本当に番いって言ったのか!?」
「うっ…うん。
なんか僕からいい匂いがしたから番いにしたい、って…。
でも!お断りしたんだよ!?そんなお互いのこと知らないのに番いにはなれません!って。」
僕は手を振って必死なのをアピールした。
しかし、アニスは考え込んだまま黙ってしまった。
するとローザが口を開く。
「フェル…知ってるかもしれないけど獣人にとって匂いは重要なんだ。人間には分からない匂いも普段から敏感に感じるし、特に不快な匂いは強烈に感じる。その中でいい匂いがして番いのことを口にするってことは1つの愛情表現なんだ。僕達、獣人は人間より子孫を残すために生殖活動が激しいんだけど、どんなに容姿や性格が良くたって自分にとっていい匂いだと感じないと魅力的にも思わないし、アレが勃たないんだ…。だから、アニスの叔父さんがその事を口にしたってことはフェルが考えてるより大ごとだと思う…。そんな人に生涯で出会える可能性も低いし、見つけた時はどんな手段を使っても手に入れようとする。そりゃあ色んな障害もあるから、出来る限りになっちゃうけどね。」
とローザに説明された。
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