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第1章
53. 目覚め
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僕が再び目を覚ますと、自室のベッドの上だった。
「(やっぱり家に戻って来てるんだ…魔獣の討伐は終わったのかな…?神様が最後に1ヶ月以上経ってるって言ってたけど、イマイチまだ実感が湧かないな…。)」
僕がそうボーッと考えていると、部屋の扉がノックされた。そちらをジッと見るとエリーが入ってくる。エリーはまだ僕が起きたことに気付いてないのか、水差しを持ってこちらに近付いてきた。
そして、僕と目が合うと
「フェンネル様!!!起きられたのですか!?私がわかりますか!?急いで医官を呼んで参ります!」
とエリーはそう早口で言うと足早に部屋を出て行った。
残された僕はその光景を眺め、ゆっくりと身体を起こそうと思った。だが、身体が動かない…というか力が入らない。
「(やっぱり1ヶ月以上経ってるの!?全然起きれないんですけど!)」
僕がそう1人で格闘していると、エリーと母様が慌てて入ってきた。
「フェル!私がわかりますか!?母様ですよ!」
母様はベッドサイドに飛び込んでくると寝たきりの僕を抱き締めた。その目には涙が浮かんでいる。
僕はなんとか返事をしようと口を開いた。
「かあ…さま。」
その声を聞いた母様は静かに涙を流し「よかった…!よかった…!」と言って僕を抱き締める。
それからエリーがハッとしたように「急いで他の皆様にもお知らせして参ります!」と言って出て行った。
母様に抱き締められていた僕は「かあ…さま、泣かないで…。」と言って涙を拭いてあげることが精一杯だった。
少しすると母様も落ち着いてきたのか、抱き締めるのを止めてくれ、僕をベッドに座らせてくれた。
「フェル…心配したのですよ。あなたが魔獣の討伐に行って帰ってきたと思ったら意識がないなんて…。それにあなたが意識を失って35日経ったのです。その間、私達やエリーが付きっきりで看病しました。エリーに関しては寝る間を惜しんで看病してくれたのです。元気になったらお礼を言うのですよ。」
母様はそう言うと僕の頰を撫でた。
「…はい。」
僕はもっと言いたいことや聞きたいことがあったが、母様の雰囲気に言葉が出なかった。
それから暫くすると、父様、ディル兄様、タジェット兄様の順で次々と部屋に入ってきた。皆、急いで来てくれたせいか汗だくで息切れもしている。
「「「フェル!」」」
皆が僕の名を呼びながら急いでベッドサイドまで近付いてきた。
僕は「皆…心配かけてごめんなさい…。」と謝る。
しかし、皆は何も言わず僕を抱き締めた。
ディル兄様に関しては珍しく号泣しており、不謹慎だがちょっと笑ってしまった。
このやり取りが少し落ち着いた頃、父様が口を開く。
「フェル、意識が戻ってホッとした。あの時、フェルの一撃で魔獣は倒すことが出来たのだが、代わりにフェルをこんな目に合わせてしまって申し訳ない…。許してくれ…。」
と父様が頭を下げる。
「父様…父様のせいじゃないよ。僕が魔法を維持出来なかったから悪いんだ。だから自分を責めないで…。それに僕はこうやって生きていたんだから、もう平気だよ?」
と声を掛けたが、
「それは…結果論であって危険な目に合ったのは事実だ。フェル…これからは無茶はしないと約束してくれ。大事な息子を失くしたくないんだ…。」
と父様に必死に言われてしまう。
「うん、わかった。約束する…。ねぇ父様、ライム君は無事だった?」
僕は魔獣に攻撃され、意識を失ってしまった為、ライム君の安否が気になっていた。
「ああ、フェルのお陰で無傷だよ。あの後、お兄さんと一緒に帰って行った。」
「そっか…よかった。無事だったんだね。」
僕がホッとしていると、そのやり取りを聞いていたタジェット兄様が「ライムとは誰だ?」と聞いてくる。
若干、雰囲気がおかしい。怒っているようだ。
「(もしかして…!僕がライム君を庇ったから怪我をしたと思って怒ってる…!?いや、事実なんだけど兄様はきっとライム君がいなければ僕は怪我しなかったって思ってるよ…!このままだとライム君が危ない…!)
あっ…僕の友達。」
「へぇ…友達ね…。」とポツリと零す。
「(兄様のこの反応、怖いー!!!ヤバイヤバイ!どうにかしないと…!)
あの…ぼくお腹空いたな…。」
とどうにか話題を変える作戦を試みた。
すると父様が、
「そうだな、まともに食事をしていなかったからな。身体に優しいものを作らせよう。エリー、頼む。」
父様がそう言うと「畏まりました。」とエリーが部屋から出て行った。
なんとかそこからエリーに食事を持ってきてもらうまで話題を変えることに成功し、この1ヶ月程の間のことを聞いた。
結局、魔獣の討伐はあれから3日程で鎮静化し再び平和な日常が戻ってきた。魔獣に襲われた街は今、復興中だそうだ。
それと僕が植物状態の間にロザリーナ姉様やカラマス君もお見舞いに来てくれたらしく、後でお礼の手紙を書こうと決める。
少しするとエリーがお粥の入った器をお盆に乗せて持ってきた。
「フェンネル様、お待たせ致しました。」
「ありがとう、エリー。」
と笑顔でお礼を言うと、エリーも涙ぐんでいた。
エリーに持ってきてもらったお粥は母様に食べさせてもらい、久しぶりの感覚に恥ずかしくもあったが、そこは大人しく甘えておいた。
そして、その日は目を覚ましたばかりということでそのまま休ませてもらうことになり、ベッドに横になる。ふとタジェット兄様を見ると何か言いたげに皆と共に部屋を出て行った。
「(やっぱり家に戻って来てるんだ…魔獣の討伐は終わったのかな…?神様が最後に1ヶ月以上経ってるって言ってたけど、イマイチまだ実感が湧かないな…。)」
僕がそうボーッと考えていると、部屋の扉がノックされた。そちらをジッと見るとエリーが入ってくる。エリーはまだ僕が起きたことに気付いてないのか、水差しを持ってこちらに近付いてきた。
そして、僕と目が合うと
「フェンネル様!!!起きられたのですか!?私がわかりますか!?急いで医官を呼んで参ります!」
とエリーはそう早口で言うと足早に部屋を出て行った。
残された僕はその光景を眺め、ゆっくりと身体を起こそうと思った。だが、身体が動かない…というか力が入らない。
「(やっぱり1ヶ月以上経ってるの!?全然起きれないんですけど!)」
僕がそう1人で格闘していると、エリーと母様が慌てて入ってきた。
「フェル!私がわかりますか!?母様ですよ!」
母様はベッドサイドに飛び込んでくると寝たきりの僕を抱き締めた。その目には涙が浮かんでいる。
僕はなんとか返事をしようと口を開いた。
「かあ…さま。」
その声を聞いた母様は静かに涙を流し「よかった…!よかった…!」と言って僕を抱き締める。
それからエリーがハッとしたように「急いで他の皆様にもお知らせして参ります!」と言って出て行った。
母様に抱き締められていた僕は「かあ…さま、泣かないで…。」と言って涙を拭いてあげることが精一杯だった。
少しすると母様も落ち着いてきたのか、抱き締めるのを止めてくれ、僕をベッドに座らせてくれた。
「フェル…心配したのですよ。あなたが魔獣の討伐に行って帰ってきたと思ったら意識がないなんて…。それにあなたが意識を失って35日経ったのです。その間、私達やエリーが付きっきりで看病しました。エリーに関しては寝る間を惜しんで看病してくれたのです。元気になったらお礼を言うのですよ。」
母様はそう言うと僕の頰を撫でた。
「…はい。」
僕はもっと言いたいことや聞きたいことがあったが、母様の雰囲気に言葉が出なかった。
それから暫くすると、父様、ディル兄様、タジェット兄様の順で次々と部屋に入ってきた。皆、急いで来てくれたせいか汗だくで息切れもしている。
「「「フェル!」」」
皆が僕の名を呼びながら急いでベッドサイドまで近付いてきた。
僕は「皆…心配かけてごめんなさい…。」と謝る。
しかし、皆は何も言わず僕を抱き締めた。
ディル兄様に関しては珍しく号泣しており、不謹慎だがちょっと笑ってしまった。
このやり取りが少し落ち着いた頃、父様が口を開く。
「フェル、意識が戻ってホッとした。あの時、フェルの一撃で魔獣は倒すことが出来たのだが、代わりにフェルをこんな目に合わせてしまって申し訳ない…。許してくれ…。」
と父様が頭を下げる。
「父様…父様のせいじゃないよ。僕が魔法を維持出来なかったから悪いんだ。だから自分を責めないで…。それに僕はこうやって生きていたんだから、もう平気だよ?」
と声を掛けたが、
「それは…結果論であって危険な目に合ったのは事実だ。フェル…これからは無茶はしないと約束してくれ。大事な息子を失くしたくないんだ…。」
と父様に必死に言われてしまう。
「うん、わかった。約束する…。ねぇ父様、ライム君は無事だった?」
僕は魔獣に攻撃され、意識を失ってしまった為、ライム君の安否が気になっていた。
「ああ、フェルのお陰で無傷だよ。あの後、お兄さんと一緒に帰って行った。」
「そっか…よかった。無事だったんだね。」
僕がホッとしていると、そのやり取りを聞いていたタジェット兄様が「ライムとは誰だ?」と聞いてくる。
若干、雰囲気がおかしい。怒っているようだ。
「(もしかして…!僕がライム君を庇ったから怪我をしたと思って怒ってる…!?いや、事実なんだけど兄様はきっとライム君がいなければ僕は怪我しなかったって思ってるよ…!このままだとライム君が危ない…!)
あっ…僕の友達。」
「へぇ…友達ね…。」とポツリと零す。
「(兄様のこの反応、怖いー!!!ヤバイヤバイ!どうにかしないと…!)
あの…ぼくお腹空いたな…。」
とどうにか話題を変える作戦を試みた。
すると父様が、
「そうだな、まともに食事をしていなかったからな。身体に優しいものを作らせよう。エリー、頼む。」
父様がそう言うと「畏まりました。」とエリーが部屋から出て行った。
なんとかそこからエリーに食事を持ってきてもらうまで話題を変えることに成功し、この1ヶ月程の間のことを聞いた。
結局、魔獣の討伐はあれから3日程で鎮静化し再び平和な日常が戻ってきた。魔獣に襲われた街は今、復興中だそうだ。
それと僕が植物状態の間にロザリーナ姉様やカラマス君もお見舞いに来てくれたらしく、後でお礼の手紙を書こうと決める。
少しするとエリーがお粥の入った器をお盆に乗せて持ってきた。
「フェンネル様、お待たせ致しました。」
「ありがとう、エリー。」
と笑顔でお礼を言うと、エリーも涙ぐんでいた。
エリーに持ってきてもらったお粥は母様に食べさせてもらい、久しぶりの感覚に恥ずかしくもあったが、そこは大人しく甘えておいた。
そして、その日は目を覚ましたばかりということでそのまま休ませてもらうことになり、ベッドに横になる。ふとタジェット兄様を見ると何か言いたげに皆と共に部屋を出て行った。
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