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第1章
49. 討伐隊と合流
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それから1日かけて討伐に合流するための準備を行う。
当たり前だが、僕は前線には行かず避難場所に帰ってきた騎士や怪我をした人々を治療する役割となった。
光魔法を使えるマシュー先生やヒソップ先生も先に合流していると言う。僕は光魔法を使えることは学院の一部の人しか知らないので、クラスではまた熱がぶり返したということにしてもらった。
そしていよいよ出発当日、僕は最低限の荷物を持ち、父様の火竜に乗って魔獣に襲われているという街を目指した。
体感にして1時間程経った頃、遠くの方で噴煙が立ち昇っているのが見える。
「父様!あの場所なの!?」と指差すと、
「ああ、もうすぐ着くぞ、しっかり掴まっておけ。」
父様は火竜を目的地近くの安全な場所に降下させた。
地表に着くと火竜の存在が見えたからか騎士団の数名が近付いてきた。
少し警戒している様子だったが、
「私はアトラス・ローランド侯爵。光魔法を使える人物を連れてきた。」
父様がそう言うと
「………副隊長の血縁の方ですね。お待ちしておりました。どうぞこちらへ。」
とテントなどが張ってある場所へ案内される。
そこには多くの怪我人と騎士がいるものの、光魔法を使っている人が十数人ほどしかいなかった。あきらかに光魔法を使える人が足りていない。重症患者から優先的に診てはいるが、擦り傷程度では小さな子供も後回しにされる程だった。
僕はすぐに「父様!もう始めていい!?」と聞き、了承されると小さな子供から早急に診始めた。
「(こんな時のチートだ!僕の無限の魔力で皆を助けなきゃ!)」
僕は必死に魔法を施し、怪我人がある程度の人数に落ち着くまで続けた。
僕は必死すぎて気付かなかったが、無詠唱・短時間で行われる、その行為に誰しもが驚いていた。さらにこんな小さな子供がどれだけ魔力を消費しても次々と治療していくので余計に驚かれていた…らしい。
暫くして僕は周りを見渡し、怪我人が光魔法を使える人ぐらいの人数に減ったのを確認すると魔法を使うのをやめた。
その時「もう十分だぞ、フェル。」と父様に声をかけられる。
僕が振り返ると父様の後ろにはマシュー先生がおり「お久しぶりです、フェル君。」と笑顔で迎えてくれた。
「お久しぶりです、マシュー先生。」
「流石フェル君ですね、こんな短時間でこれだけの人数を治療するなんて。体調は大丈夫ですか?」
と心配されたが「身体は全然大丈夫です。」と答えると苦笑された。
それから僕は念のため休憩することを勧められ、救護用テントで休んでいた。
すると「すみません、怪我人に与える飲み水はありませんか?」と聞いたことのある声が聞こえる。
そちらをパッと見ると、なんとそこには競技場で出会ったライム君が立っていた。
僕はビックリして固まってしまったが、他の人が対応してくれていたのでその光景を静かに見つめる。
「ありがとうございます。では、渡してきます。」
ライム君はそう言うと足早に去っていった。
僕はライム君を見送ると、「(バッ…バレてない~!セーフ!)」と胸を撫で下ろした。
「(でもいつかは言わなくちゃいけないよね…。流石にこんな場所でもう一度会ったら嘘も突き通せるかわからないし…。)」
あの時は茶髪のカツラを被ってさらに前髪も長かったので、さっきの出来事でもライム君に気付かれはしなかったが、なにかの拍子にバレた時のライム君の反応が怖い。
僕はなんとか言い出すタイミングは無いかと考えていた。
それから暫くすると、父様がテントに入ってきた。
「フェル、ちょっとコッチへ来てくれ。重症患者がいるんだ。」
父様に促されて別のテントに行くと、魔獣に襲われ背中を大きく引っ掻かれた騎士がベッドにうつ伏せに横たわっていた。
僕は「今から治療しますからね。」と声をかけ治療を始める。
最初は痛みで唸り声を上げていた騎士だったが徐々に傷口が塞がると静かに呼吸をし始めた。
僕がホッとしていると「ナルシス!大丈夫か!?」とライム君がテントに飛び込むように入ってくる。
ライム君は騎士の様子を見てホッとした表情となり、慌ててこちらを向くと
「兄を助けて頂きありがとうございました!瀕死の状態だったのにここまで治して頂けるなんて…。本当に感謝しています!ありがとうございました!」
とバッと頭を下げられる。
僕は「あっ…いや…あの…頭を上げてください!」と言うので必死だった。
ライム君は顔を上げ、
「あの、兄にも助けて下さったあなたのことを伝えたいので名前を教えて頂けませんか?」
と聞いてきた。
「(えーっ!どうしよう…僕、言っちゃう!?言っちゃおうか…うーん…もう言っちゃえ!)
あのライム君、僕、フェンなんだけど…。」
そうおずおずと言った瞬間、ライム君の顔は「えっ?」と目を点にする。
「えっ…えっ?フェン?いや、でもフェンは茶髪の男だけど、あなたは女性では…?」
と性別から間違えていた。
当たり前だが、僕は前線には行かず避難場所に帰ってきた騎士や怪我をした人々を治療する役割となった。
光魔法を使えるマシュー先生やヒソップ先生も先に合流していると言う。僕は光魔法を使えることは学院の一部の人しか知らないので、クラスではまた熱がぶり返したということにしてもらった。
そしていよいよ出発当日、僕は最低限の荷物を持ち、父様の火竜に乗って魔獣に襲われているという街を目指した。
体感にして1時間程経った頃、遠くの方で噴煙が立ち昇っているのが見える。
「父様!あの場所なの!?」と指差すと、
「ああ、もうすぐ着くぞ、しっかり掴まっておけ。」
父様は火竜を目的地近くの安全な場所に降下させた。
地表に着くと火竜の存在が見えたからか騎士団の数名が近付いてきた。
少し警戒している様子だったが、
「私はアトラス・ローランド侯爵。光魔法を使える人物を連れてきた。」
父様がそう言うと
「………副隊長の血縁の方ですね。お待ちしておりました。どうぞこちらへ。」
とテントなどが張ってある場所へ案内される。
そこには多くの怪我人と騎士がいるものの、光魔法を使っている人が十数人ほどしかいなかった。あきらかに光魔法を使える人が足りていない。重症患者から優先的に診てはいるが、擦り傷程度では小さな子供も後回しにされる程だった。
僕はすぐに「父様!もう始めていい!?」と聞き、了承されると小さな子供から早急に診始めた。
「(こんな時のチートだ!僕の無限の魔力で皆を助けなきゃ!)」
僕は必死に魔法を施し、怪我人がある程度の人数に落ち着くまで続けた。
僕は必死すぎて気付かなかったが、無詠唱・短時間で行われる、その行為に誰しもが驚いていた。さらにこんな小さな子供がどれだけ魔力を消費しても次々と治療していくので余計に驚かれていた…らしい。
暫くして僕は周りを見渡し、怪我人が光魔法を使える人ぐらいの人数に減ったのを確認すると魔法を使うのをやめた。
その時「もう十分だぞ、フェル。」と父様に声をかけられる。
僕が振り返ると父様の後ろにはマシュー先生がおり「お久しぶりです、フェル君。」と笑顔で迎えてくれた。
「お久しぶりです、マシュー先生。」
「流石フェル君ですね、こんな短時間でこれだけの人数を治療するなんて。体調は大丈夫ですか?」
と心配されたが「身体は全然大丈夫です。」と答えると苦笑された。
それから僕は念のため休憩することを勧められ、救護用テントで休んでいた。
すると「すみません、怪我人に与える飲み水はありませんか?」と聞いたことのある声が聞こえる。
そちらをパッと見ると、なんとそこには競技場で出会ったライム君が立っていた。
僕はビックリして固まってしまったが、他の人が対応してくれていたのでその光景を静かに見つめる。
「ありがとうございます。では、渡してきます。」
ライム君はそう言うと足早に去っていった。
僕はライム君を見送ると、「(バッ…バレてない~!セーフ!)」と胸を撫で下ろした。
「(でもいつかは言わなくちゃいけないよね…。流石にこんな場所でもう一度会ったら嘘も突き通せるかわからないし…。)」
あの時は茶髪のカツラを被ってさらに前髪も長かったので、さっきの出来事でもライム君に気付かれはしなかったが、なにかの拍子にバレた時のライム君の反応が怖い。
僕はなんとか言い出すタイミングは無いかと考えていた。
それから暫くすると、父様がテントに入ってきた。
「フェル、ちょっとコッチへ来てくれ。重症患者がいるんだ。」
父様に促されて別のテントに行くと、魔獣に襲われ背中を大きく引っ掻かれた騎士がベッドにうつ伏せに横たわっていた。
僕は「今から治療しますからね。」と声をかけ治療を始める。
最初は痛みで唸り声を上げていた騎士だったが徐々に傷口が塞がると静かに呼吸をし始めた。
僕がホッとしていると「ナルシス!大丈夫か!?」とライム君がテントに飛び込むように入ってくる。
ライム君は騎士の様子を見てホッとした表情となり、慌ててこちらを向くと
「兄を助けて頂きありがとうございました!瀕死の状態だったのにここまで治して頂けるなんて…。本当に感謝しています!ありがとうございました!」
とバッと頭を下げられる。
僕は「あっ…いや…あの…頭を上げてください!」と言うので必死だった。
ライム君は顔を上げ、
「あの、兄にも助けて下さったあなたのことを伝えたいので名前を教えて頂けませんか?」
と聞いてきた。
「(えーっ!どうしよう…僕、言っちゃう!?言っちゃおうか…うーん…もう言っちゃえ!)
あのライム君、僕、フェンなんだけど…。」
そうおずおずと言った瞬間、ライム君の顔は「えっ?」と目を点にする。
「えっ…えっ?フェン?いや、でもフェンは茶髪の男だけど、あなたは女性では…?」
と性別から間違えていた。
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