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第1章

43. 彼の提案

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正直、その言葉は今の僕には魅力的だった。他の誰にも相談出来ないこの状況でそんなことを言われては心が傾いても仕方ない。普段の状態なら絶対に見ず知らずの人に相談などしないが、今の状態では冷静な判断は出来ず、誰かに話を聞いてもらいたいという気持ちが優っていた。

「あの…本当に相談してもいいんですか…?」

少し心配になり聞いてみた。

「私から言ったんだから君がいいなら話してみて。」

彼はニコリと笑い、そう答えた。

彼のその柔らかい空気が僕の心を絆してくれているようだった。

「あの…僕、気になる人がいて……相手も僕のことを好きなんだと思っていたんです…面と向かって好きと言われたわけじゃないんですけど、そんな態度だったから…。でも相手に恋人がいると知って、僕とのことはなんだったんだろう…ってショックを受けたんです…。可笑しいですよね…僕まだこんな歳なのに本気の恋愛だと勘違いして…。」

僕はそう話しながら、また涙目になってしまう。

彼は最後まで静かに話を聞いてくれていたが、彼との間に沈黙が流れれば流れるほど、だんだんとその状況が恥ずかしくなってきた。

僕はスクッと立ち上がり、

「…あの!ありがとうございました!僕もう行かなくちゃ!失礼します!」

と言って逃げようとした。

すると彼は慌てて僕の手首を握り、

「ちょっと待って。私はまだ何にも話してないよ?少しくらい私の意見を聞いていってよ。」

と困ったように笑った。

僕は真剣に相談をしてしまったことも恥ずかしかったが、言い逃げをしようとしていた自分にも恥ずかしくなり、再びベンチに座り直す。

「ごめんなさい!言ってから恥ずかしくなってしまって…!」

と僕は必死に弁解した。

「フフッ、いいよ、いいよ。若いっていいね。私が君くらいの年齢の時には恋愛はしていなかったけど、真剣に悩んでいる君には真剣に答えなくっちゃね。そうだな~…私は恋愛に年齢なんて関係ないと思うからいくら君が幼くても本気なんだったらそこは気にする必要ないと思うよ。君が気になってる彼に関しては私からしたら"そんな奴やめておけ"だ。だって1人に絞れない奴は自分に戻ってきてもまたフラフラするだけだと思うし。でも、君の態度から推測するに君の中ではまだ納得しきれてないところがあるんでしょう?」

僕はその言葉に静かに頷いた。

「そしたら、納得するまで彼と話し合うべきだね。それで彼と別れが来たとしても納得の上だったら次の恋愛に活かされると思うし…あっ!いいこと思いついた!もし、その彼と話し合ってそれでもダメだったら私のところに嫁いでおいで?」

と彼はいきなりそんなことを言ってきた。

僕が「エェッ!!」と驚くと、

「だってこんな可愛い子に酷いことするなんて、そんなの私が許せないよ。でもね、さっきも言った通り私は君の名前も聞かないし私も名乗らないから、もしこの出会いが運命だったら次もまたどこかで出会えると思うんだ。だから、嫁ぐ話もまた次に会ったときに話そうね。フフッ、大丈夫だよ。悪いようにはしないから。」

彼はそう言うと立ち上がり、僕の頰に流れた涙を拭うと目尻にキスしてきた。

「訓練、頑張ってね。また君に会えるのを心待ちにしているよ。」

そう言って去っていった。

僕はその後ろ姿を呆然と眺める。

「(えっ…?えっ…?どうなってんの?なんで僕、プロポーズされてるの?てか、あの人誰だよ!優しくてカッコよかったけど!でも、こんな7歳児にプロポーズするなんてどう考えても可笑しいよね…?
…きっと揶揄われたんだ!そうだ、僕が泣いていたからそう言って慰めてくれたんだ!うん、そういうことにしておこう!僕だって滅多にここには来ないだろうし、彼に会うこともなさそう。庭園には近付かないでおけば大丈夫。)」

僕はそう考え、彼が去って行った逆方向の校舎の方に向かって歩き出した。





少し歩くと目的の図書室に辿り着く。

彼に相談したことで少しは心が軽くなった…なんてことはなく、むしろ心労が増えたのだが、このまま帰ってしまうのは勿体無いと思い、目的のBLウォッチングをして紛らわせようとした。図書室にも難なく入り込めた僕は一先ず、人影がないか探し始めた。

すると、図書室の一番奥の本棚のところで、

「………て!……に……よ!」

「……じゃ…。」

と声がする。

僕はテンションが上がりながら、コソッと盗み見た。なんと、先程競技場でイチャイチャしていたカップルだった。

「(キャー!ゲームの世界が現実になるー!)」
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