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第1章
42. 二股疑惑
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「(こっ…恋人…!?兄様に恋人がいるの?)」
と僕がショックを受けていると、
「でも、ローランド様に愛されてる恋人って幸せ者だよなー。カッコよくて一途、家もお金持ちだし、地位もある!最高の条件だよ。きっと凄い美人なんだろうなー。」
と彼はワクワクしながら言っている。
しかし、僕は兄様のまだ見ぬ恋人に少なからず嫉妬し、その言葉にイマイチ反応出来なかった。
「(兄様…恋人いたんだ…そうだよね…僕、昔、愛してる!って叫ばれた以降、好きって言われたことないし。でも、恋人がいるのに僕に手を出すってどうなの!?それに毎日、毎日家に帰って来てさ…!恋人のところに帰ればいいのに…!………ん?毎日、家に帰って来る…?それって僕の為…?イヤイヤ!ここで調子に乗ったらダメだよね!?兄様、絶対モテるから恋人の1人や2人いたっておかしくないもん!僕はきっとその何番目かなんだ…。)」
と僕があからさまにシュンと落ち込んでいると、
「どうした…?ローランド様に恋人がいてショックなのか?まぁお前よく見たら可愛い顔してるし、頼んだら一晩相手してくれるんじゃないのか?」
と言ってきた。
「えっ…それどういうこと?」
「ローランド様は優しいからな、一晩お願いしたら、ある条件を満たせば抱いてくれるらしい。」
「えっ!?それどんな条件!?」
僕はかなり動揺していたと思う。
「いや…それは俺も分からないけど、実際、何人か抱かれたって言ってた奴がいたらしいぞ。」
僕はその言葉に血の気が引いた。
「(まさか…そんな…兄様色んな人に手を出すような人だったの…?でも…兄様は年頃だし、性欲が溜まるのは仕方ないか…。生前の僕は割と淡白だったから自分でするのもそんなに頻繁にはやらなかったけど、世間一般は毎日だって可笑しくないって聞いたことがある。それに今の僕じゃ兄様のこと満足させられないし、恋人なわけじゃないもんね…嫉妬しても言える立場じゃないか…。)」
「あっ、そういえば名前言ってなかったな、俺はライムだ。お前は?」
「僕はフェ…
(うわ!マズイ!)」
「フェ?」
「フェンだよ!」
「フェンか、わかった。これから宜しくな。」
なんとか誤魔化せたようだ。
それから2人で上級生の練習風景を眺め、強い人の動きを見ながら勉強した。
「(僕的には必要ないんだけどね…。)」
と思いながらもライム君の話を聞いていた。
すると、ライム君から誰と誰がカップルだ、という僕が欲しかった情報をもらう。僕が"腐仲間!?"と興奮していると、ライム君にはお兄さんがいるらしく、そのお兄さんから聞いてもないのに誰と誰がくっ付いたとかいうことを話してくるそうだ。そのこともあって騎士団の人達の情報には自然と詳しくなるらしい。
なんだか、そのお兄さんとは仲良くなれそうな気がするよ…!
それから僕は定期的にライム君に会うことを約束し、次の目的地へと向かった。
当たり前だが、最初は騎士団候補生でもない自分がそんな約束を了承できるはずもなく渋っていた。しかし、滅多に1年生同士はクラスが違うと関わらないらしく、むしろ上級生から教わるので横の繋がりより縦の繋がりの方が強いということがわかり了承した。それにタジェット兄様のことが気になり、ライム君と話せば少しは兄様の恋人についても情報が得られると思ったからだ。
僕は次の目的地である図書室に向かってコソコソと歩いていた。すると、宿舎敷地内の隅にある庭園を見つけた。僕は思っていたよりも傷ついていたらしく潜入していることを忘れ、庭園のベンチに腰掛けた。
「(はぁ~…兄様に恋人がいるなんて…。騎士団の宿舎に潜入できたものの、知りたくない情報まで得られちゃったな…。今日の夜から兄様にどんな顔して会えばいいんだろ…暫くは体調が悪いとか言って誤魔化せるけど、その場しのぎみたいなものだもんね。でも、僕の気持ちが落ち着くまでキスはしたくないな…。)」
考えれば考えるほど後ろ向きになっていく。終いには涙目になってしまい、流れそうになる涙を拭おうと手を上げた。
その時、カサッと音がしたので思わず涙を流しながらその方向を見上げた。すると、こちらに手を伸ばしかけた男性と目が合い、僕は人に見つかってしまったことと泣いているところを見られたことで固まってしまった。
「大丈夫?」
その人は伸ばしかけた手を引っ込め、僕の目線に合うようにこちらを見つめてきた。
僕は固まっていた思考を引き戻すと、
「…だっ大丈夫です!なんでもありません!」
と涙を拭いて答えた。
しかし、彼は心配そうな顔で「でも泣いてたから…、なんでもないことないよね?」と続ける。
「いえ…!ご心配ありがとうございます。でも、本当に大丈夫なので!」
僕はあまりここに長居するのもマズイので早々に話を切り上げようとした。
だが彼は僕の隣に腰掛け「この場所、凄くいいでしょ?私のお気に入りなんだ。」と言ってきた。
僕はその言葉に"えっ?"となりながらも次の言葉を待った。
「この場所は私も嫌なことがあった時の避難場所にしてるんだ。自然とこの場所にいると気持ちが穏やかになって嫌なこともそうじゃなくなる。自分でも不思議だな、って思うんだけど、この宿舎内で唯一キレイなところだからかもしれないね。男ばかりだから…こういうキレイなところに来たいのかも…
あのね、唐突だけど、もし良かったら君の悩んでいたことを聞かせてくれないかな?なんで?って思うだろうけど、せっかくここで会えたのも縁だと思うし。…大丈夫、私は他の誰にも言わないし、私の中で留めておくよ。それに君の名前も聞かないし、私も名乗らない。これから一生、君に会わないかもしれない偶然会った私に話してみない?」
彼はそう言った。
と僕がショックを受けていると、
「でも、ローランド様に愛されてる恋人って幸せ者だよなー。カッコよくて一途、家もお金持ちだし、地位もある!最高の条件だよ。きっと凄い美人なんだろうなー。」
と彼はワクワクしながら言っている。
しかし、僕は兄様のまだ見ぬ恋人に少なからず嫉妬し、その言葉にイマイチ反応出来なかった。
「(兄様…恋人いたんだ…そうだよね…僕、昔、愛してる!って叫ばれた以降、好きって言われたことないし。でも、恋人がいるのに僕に手を出すってどうなの!?それに毎日、毎日家に帰って来てさ…!恋人のところに帰ればいいのに…!………ん?毎日、家に帰って来る…?それって僕の為…?イヤイヤ!ここで調子に乗ったらダメだよね!?兄様、絶対モテるから恋人の1人や2人いたっておかしくないもん!僕はきっとその何番目かなんだ…。)」
と僕があからさまにシュンと落ち込んでいると、
「どうした…?ローランド様に恋人がいてショックなのか?まぁお前よく見たら可愛い顔してるし、頼んだら一晩相手してくれるんじゃないのか?」
と言ってきた。
「えっ…それどういうこと?」
「ローランド様は優しいからな、一晩お願いしたら、ある条件を満たせば抱いてくれるらしい。」
「えっ!?それどんな条件!?」
僕はかなり動揺していたと思う。
「いや…それは俺も分からないけど、実際、何人か抱かれたって言ってた奴がいたらしいぞ。」
僕はその言葉に血の気が引いた。
「(まさか…そんな…兄様色んな人に手を出すような人だったの…?でも…兄様は年頃だし、性欲が溜まるのは仕方ないか…。生前の僕は割と淡白だったから自分でするのもそんなに頻繁にはやらなかったけど、世間一般は毎日だって可笑しくないって聞いたことがある。それに今の僕じゃ兄様のこと満足させられないし、恋人なわけじゃないもんね…嫉妬しても言える立場じゃないか…。)」
「あっ、そういえば名前言ってなかったな、俺はライムだ。お前は?」
「僕はフェ…
(うわ!マズイ!)」
「フェ?」
「フェンだよ!」
「フェンか、わかった。これから宜しくな。」
なんとか誤魔化せたようだ。
それから2人で上級生の練習風景を眺め、強い人の動きを見ながら勉強した。
「(僕的には必要ないんだけどね…。)」
と思いながらもライム君の話を聞いていた。
すると、ライム君から誰と誰がカップルだ、という僕が欲しかった情報をもらう。僕が"腐仲間!?"と興奮していると、ライム君にはお兄さんがいるらしく、そのお兄さんから聞いてもないのに誰と誰がくっ付いたとかいうことを話してくるそうだ。そのこともあって騎士団の人達の情報には自然と詳しくなるらしい。
なんだか、そのお兄さんとは仲良くなれそうな気がするよ…!
それから僕は定期的にライム君に会うことを約束し、次の目的地へと向かった。
当たり前だが、最初は騎士団候補生でもない自分がそんな約束を了承できるはずもなく渋っていた。しかし、滅多に1年生同士はクラスが違うと関わらないらしく、むしろ上級生から教わるので横の繋がりより縦の繋がりの方が強いということがわかり了承した。それにタジェット兄様のことが気になり、ライム君と話せば少しは兄様の恋人についても情報が得られると思ったからだ。
僕は次の目的地である図書室に向かってコソコソと歩いていた。すると、宿舎敷地内の隅にある庭園を見つけた。僕は思っていたよりも傷ついていたらしく潜入していることを忘れ、庭園のベンチに腰掛けた。
「(はぁ~…兄様に恋人がいるなんて…。騎士団の宿舎に潜入できたものの、知りたくない情報まで得られちゃったな…。今日の夜から兄様にどんな顔して会えばいいんだろ…暫くは体調が悪いとか言って誤魔化せるけど、その場しのぎみたいなものだもんね。でも、僕の気持ちが落ち着くまでキスはしたくないな…。)」
考えれば考えるほど後ろ向きになっていく。終いには涙目になってしまい、流れそうになる涙を拭おうと手を上げた。
その時、カサッと音がしたので思わず涙を流しながらその方向を見上げた。すると、こちらに手を伸ばしかけた男性と目が合い、僕は人に見つかってしまったことと泣いているところを見られたことで固まってしまった。
「大丈夫?」
その人は伸ばしかけた手を引っ込め、僕の目線に合うようにこちらを見つめてきた。
僕は固まっていた思考を引き戻すと、
「…だっ大丈夫です!なんでもありません!」
と涙を拭いて答えた。
しかし、彼は心配そうな顔で「でも泣いてたから…、なんでもないことないよね?」と続ける。
「いえ…!ご心配ありがとうございます。でも、本当に大丈夫なので!」
僕はあまりここに長居するのもマズイので早々に話を切り上げようとした。
だが彼は僕の隣に腰掛け「この場所、凄くいいでしょ?私のお気に入りなんだ。」と言ってきた。
僕はその言葉に"えっ?"となりながらも次の言葉を待った。
「この場所は私も嫌なことがあった時の避難場所にしてるんだ。自然とこの場所にいると気持ちが穏やかになって嫌なこともそうじゃなくなる。自分でも不思議だな、って思うんだけど、この宿舎内で唯一キレイなところだからかもしれないね。男ばかりだから…こういうキレイなところに来たいのかも…
あのね、唐突だけど、もし良かったら君の悩んでいたことを聞かせてくれないかな?なんで?って思うだろうけど、せっかくここで会えたのも縁だと思うし。…大丈夫、私は他の誰にも言わないし、私の中で留めておくよ。それに君の名前も聞かないし、私も名乗らない。これから一生、君に会わないかもしれない偶然会った私に話してみない?」
彼はそう言った。
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