30 / 215
第1章
29. 姉様!
しおりを挟む僕は動揺しながらも、
「そういうことってどういうこと!?ダメダメ!兄弟でそんなことしたら!好きな人とキスはするものだよ!」
も後退りながら言う。
「フェル、逃げないでよー。軽くチュッとするだけだからー。」
とジワジワ追いかけてくる。
「それがダメなのー!ディル兄様も僕じゃなくて好きな人とキスしてよー!
(是非その姿を見せて下さいー!)」
そこまで言ったがディル兄様に捕まった。たかがベッドの上で逃げれる範囲なんて限られている。僕は自然と兄様を見上げた。するとそれまでおどけていた兄様の顔が真剣になった。
僕がドキッとして固まると、
「私が今からキスする人が好きな人だよ。」
と言って顔を近づけてきた。
「(わー!僕のファーストキスー!)」
と思い、ギュッと目を瞑るとバンッ!と部屋のドアが開いた。
「フェルー!セイボリー様が挨拶に来る日が決まったわよー!」
とロザリーナ姉様が豪快に入ってきた。
僕とディル兄様は後10cmくらいでキスしてしまう距離で固まる。
「あら?ディルも来てたの?」
幸い姉様から僕達の位置はディル兄様で僕が隠れている状態だったのでキスされそうになっていたとは気付いていない。
「(助かったー。)」と僕が安心していると「チッ!」と舌打ちをするディル兄様。
不機嫌な顔を隠そうとはせず「何?姉様?」と文句を言う。
「なんでディルが怒ってるのよ。私はフェルに用があるの。フェル、セイボリー様が挨拶に来る日が決まったの。急なんだけど2日後の正午ごろよ。一緒にランチを食べましょう、ってことになったわ。その日は父様、母様、私、フェルで食事をするからね。覚えておいて。」
「うん!姉様ありがとう!」
僕は意図的ではないにしろ、結果的に助けてくれた姉様に満面の笑みでお礼を言った。
「どういたしまして!」と姉様は意気揚々と部屋を出て行く。兄様をチラッと見るとブスッとした顔をして「気が削がれた。」と言い出ていった。
「(うわー!危なかったー!僕のファーストキス奪われるところだった!いや、それほど大切にしてるわけじゃないけど、あんな形で奪われるのは嫌だよ。はぁー…ディル兄様、手が早いんだから…。)」
と僕はグッタリしてそのまま寝入った。
それから2日、何事もなく日々を過ごした。ディル兄様にまた部屋に入ってこられるかとビクビクしたが、それもなくセイボリー公爵様との挨拶の日を迎える。
「フェル、緊張してるの?」とクスクス笑っているロザリーナ姉様。
「大丈夫よ。セイボリー公爵様はとてもお優しくて素敵な方だから。」と母様にも言われた。
僕は緊張をほぐす為、
「ちょっと僕、裏庭に行って休んでくる!ちゃんと約束の時間には戻ってくるから!」
と言い席を立った。
裏庭に来た僕は母様が育てているハーブ園の近くのベンチに座る。
「(はぁ…何で僕こんなに緊張してるんだろ…。姉様の婚約者なのに。なんか嫌な予感がするんだよなぁ…。)」
そう考えていると、後ろから「オイッ!」と声を掛けられた。振り返ると知らない男の子。
「(僕と比べれば年上だろうけど10~12歳くらいかな?誰だろ…?)」
と僕が不思議に思っていると「お前、ここの家のやつか?」と聞かれた。
「そうですけど…。」と答えると「じゃあここにロザリーナ・ローランドっていう女がいるだろ。」と言う。
「(ロザリーナ姉様のこと?)
はい、います。」
「俺、そいつの婚約者の弟でカラマス・セイボリーって言うんだ。なぁ、お前から見てそいつはどんな奴なんだ?俺の大事な兄様に相応しいと思うか?」
と聞かれる。
「(えっ…セイボリー様の弟なんだ…てか今"大事な"って言った!?それは兄弟としてですか!?それとも…!うわーヤキモチですか!?ありがとーございまーす!)
姉様はとても優しくて明るい人ですよ。セイボリー様にお会いしたことはありませんが、きっとお似合いの2人になると思います。」
と僕は自信を持って答えた。
「(だって姉様、いい人だもん!)」
するとカラマス様は「うーん…。」と悩み始める。
「どうかされましたか?」
「…俺と兄様は歳が離れてるんだ。だから兄様は俺に甘い…と思う。俺もそれじゃダメだとわかっているんだが、甘やかされることに慣れてしまって…このまま兄様が婚約して俺が1番じゃなくなるのが正直嫌だ…。なぁ、俺はどうしたらいいと思う…?」
と不安そうに聞かれる。
「(おぉ~!年の差兄弟あるある!お兄ちゃんが取られちゃう!ってやつね!)
そうですね…今まではセイボリー様にとってカラマス様が1番だったと思います。でも、婚約は決定してしまっているのでカラマス様のにとっての1番を別で探されたらどうですか?」
「俺の1番か…例えば、どんなやつがいいんだ?」
「えっ…それはカラマス様が好きになった人では…?」
僕は質問の意味がわからず、そう答えた。
「俺、今まで誰も好きになったことがない…。」とポツリと言う。
「そっ…そうなんですね。では、これから探しても遅くはないですよ、一緒に頑張りましょう!」
「…ありがとう…一緒に、ってお前は好きな人はいないのか?」
「えぇ、探し中です。」と答えておく。
「あの…もうそろそろセイボリー様にご挨拶する時間なんですが、よかったらご一緒に部屋に行きませんか?」
「あっ!そうだった…。挨拶するのが嫌で逃げてきたんだった。あぁ、悪いが一緒に行かせてもらう。」
それから部屋に着くまでの道程でカラマス様に「なぁ、お前なんでそんな男みたいな格好してるんだ?」と言われ固まった。
49
お気に入りに追加
4,593
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
迷子の僕の異世界生活
クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。
通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。
その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。
冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。
神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。
2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる