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第1章

14. 信頼できる人

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クエラ先生に連れられ、色々と考えている内に教室の前に辿り着いた。

「ではフェンネル君、私はここまでです。学院生活一緒に楽しみましょうね。」

そうクエラ先生は笑顔で去って行った。

僕はガラリと扉を開け、教室に入る。

「遅くなりました。」

すると先程までガヤガヤとしていた教室がシーンとなる。

「(えっ…?何?…やっぱり兄様の登場が不味かった!?僕、そこまで兄様の影響力考えてなかったから、どうにかしないとクラスで浮いちゃうよー…。)」

僕がグルグルと考えを巡らせていると「大丈夫ですよ、フェル君。お帰りなさい。さぁ席に座って。」
とマートル先生が促してくれた。

「ではフェル君も帰ってきたことですし、今から自己紹介を始めましょうか。皆さん、名前と魔法の属性を教えて下さい。その他、趣味や特技、好きなことがあれば教えて下さい。では、アニス君から。」

自己紹介は名前順だった。

「アニス・グロブルスだ。俺は見た目通り熊の獣人だ。属性は風。まだ獣人に対する偏見があるのはわかっているから、仲良くしたくなければしなくていい。俺もそんな奴とは仲良くする気はない。以上。」

アニスはそう言うと少し荒々しく座る。その様子に先生も少し言いたげだったが次の生徒を促していく。

それからしばらくすると僕の番がきた。

「フェンネル・ローランドです。属性は水です。好きなことは本を読むことと人間観察です!宜しくお願いします!あっ…あと…先程の人は兄です。」と僕は完結に自己紹介をすると席に座る。

本当は人間観察のことを言うべきか迷ったが、言ってしまえばジーッと見つめていても観察中かな?と納得してもらえるかもしれない。

そして僕の後の数名で自己紹介が終わる。

僕は殆どクラスメイトの自己紹介は聞かず、その生徒が将来、攻めか受けか、しか見ていなかった。

そして次は校内案内。皆1列に並びマートル先生について行く。各学年はそれぞれ3クラス20人弱程の少人数制である。ちなみに僕のクラスは17人だった。

その他、各クラス以外に魔法の練習をする為の部屋が多数あり、どこもパーティーが出来るんじゃないかと思う程の広さがある。それから図書室や武道場に差し掛かるとちょうど上級生が実践しているところも見れた。

ある程度見学したところで教室に戻ってくる。

本日はこれで終わりな様でマートル先生から明日の連絡を聞き、解散となった。

僕は兄様が迎えに来ると言っていたので席に座って待ち、周りの皆が次々と教室を出て行く姿をホクホクとした顔で眺めていた。

「(あの子は絶対、受けだな~。今でさえ凄く幼い顔してるし。それに武道場にいた先輩も将来いい攻めになると思うんだよな~。ガチムチとショタ、いいな~!不器用攻めとか最高~!)」

と僕がそんなことを妄想していると

「フェンネル・ローランド様。」

と話し掛けられる。

赤髪の腰までのウェーブに茶色の目の少女だった。

少し眼つきが鋭いので「(うわ~!僕の苦手なタイプ…。よく悪役令嬢とかに居そう…。何言われるんだろ…兄様のことかな…?間を取り持て、とか。うーん…もしそんなこと言われたら一応兄様に聞いてみるけど、僕の身が一番危険だ…。兄様、怒ったら何しでかすか分からないし…それこそ僕の貞操の危機だよ…。)
はい、なんでしょうか?」

僕の警戒している様子が伝わったのか少女はクスリと笑い「初めまして、私はランタナと申します。いつも母がお世話になっております。」とお辞儀をしながら言った。

「えっ?母?誰ですか?」

僕は殆ど身内以外、知り合いが居ないので誰か見当もつかなかった。

「母の名前はエリーです。フェンネル様の身の回りのお世話をさせて頂いております。」

「エッ…エリー!?エリーがお母様なの!?あんまり…似てないね…?」

エリーは茶髪に茶色の目だ。

「はい、私はどちらかというとお父様似です。唯一、茶色の目は受け継いでますが。」

彼女は特に気にした風もなく言った。

「そうなんだ。でもエリーから一言も子供がいるなんて聞いたことなかったよ。言ってくれればもっとお休みあげたのに…。」

僕は家族同然に暮らしてきたエリーに隠し事をされてたと思い、少し寂しかった。

「母がいつも言っていました。フェンネル様はとてもお優しい方だから私のことを言うと自分のことよりも私を優先するように言うだろうから、言わない方がいいのです、と。私もそう思います。私は祖母と一緒に暮らしていたので寂しくはありませんでした。なので、気を遣って頂かなくても大丈夫です。ありがとうございます。」

「ううん!でも、どんな形であれ君の大事なお母様を取ってしまってゴメンね。」

「いいえ、そう言って頂けただけで十分です。…それでお母様にフェンネル様の能力についてお話を伺いました。もし何かあればフェンネル様をお助けしろ、と。私はそんなに魔力が高いわけではないのですが、フェンネル様の能力のことを知っている人物が1人でもクラスにいるだけで少しはお助けできるのではないかと思い、こうやって声を掛けさせて頂きました。」

「そっか…もし何かあったときは話を合わせてもらえるとありがたいかな…。」

たしかにその申し出はとてもありがたかった。まだクラスに信頼できる友達どころかアニスと少し喋ったくらいだ。

「じゃあお手数をおかけしますが宜しくお願いします。」

僕はペコリとお辞儀をした。

「こちらこそ宜しくお願い致します。」

ランタナも笑顔で返事をしてくれた。

「では、私はこれで。また明日宜しくお願い致します。」

そう言ってランタナは去っていった。

僕は「(見た目で判断しちゃダメだな…。)」と考えを改めた。



しばらく待っていると扉がガラッと開き、入れ違いに兄様が入ってきた。
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