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第1章

8. タジェット視点

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私の名前はタジェット・ローランド。
ローランド侯爵家の長男として生まれ、今年14歳を迎えた。今は10歳の頃から入隊した騎士団の寮で両親や兄弟達と離れて暮らしている。

私には尊敬する両親と1歳年下の妹ロザリーナ、2歳年下の弟ディル、8歳年下の弟フェンネルがいる。

勿論、妹と弟は皆可愛いと思うが、その中でも下の弟フェルが可愛くて仕方がない。
母親譲りの銀髪に碧目。
性格はおっとりとしているが芯は強い。
可愛さだけでなく、精神的な強さと身体的な強さを兼ね備えている。正直、フェルが2つの能力持ちであることを知った時は驚いたが、それもフェルの魅力なんだと私は思った。
幼いながらに他人を気遣う気持ちをもっていることにも驚いたが、惹かれる要因の一つであったと今なら思える。

フェルが生まれた時は歳が離れていることもあって余計に可愛く見えていたが、日に日に可愛さが増し、それが年齢だけのものではないと気がつき始めた。


その気持ちを確信したのは私が10歳の誕生日を迎えた時である。

フェルの一生懸命お祝いの言葉を言おうとする姿に、単純に嬉しい気持ちとそれだけではない感情が芽生えたのだ。

「これからは一生私の側で守ってあげたい。」

切実にそう思った。

しかし、私の年齢的にも今すぐ、というのは難しく、フェルもまだ幼いので現実的ではないことはわかっている。

しかし、私はこれから15歳を迎え成人となる。そうなると、侯爵家に生まれた私には婚約者候補が次々と現れ、後々フェルの前で婚姻をあげなければいけなくなるかもしれない。そうなっては私の初恋は実ることなく終わってしまうだろう。

それに私は侯爵家の長男としての責任である後継ぎを設けなければならない。
この世の中の男女比率は8:2ということもあって同性婚も有り、となっている。それに同性同士でも子が設けられるように女性の子宮の代わりとなる核を女性側の役割をする男性に馴染ませることによって子が出来る。
そういう面ではフェルとの子を設けることも出来る。しかし、兄弟ということが結婚の一つの大きな問題となってしまうだろう。幾ら、今後私達が兄弟という垣根を超えて愛し合うことが出来ても兄弟という現実からは逃れることはできない。それは近親者だからこそ血が濃くなり、子が出来にくいことが理由だ。なので、後継ぎを作るという目的が果たせるかわからない。
しかし、それでも私はフェルと一緒にいたいと思っている。いくら子が将来出来ず、侯爵家の血筋が絶えるかもしれないということがあってもそれに屈しないくらい私はフェルを愛している。
だから、私は成人を迎えるまでに父様に宣言するつもりだ。

"婚約者は要らない、私はフェルを愛している"と。

きっと、父様はフェルが成人するまでは待ってくれると思う。しかし、それまでにフェルの気持ちが私に向かなかったら私は大人しく婚約者候補と一緒になろうと思っている。それまでのタイムリミットはあと10年。フェルが成人を迎えるまでは少しずつでも愛情表現をするつもりだ。


もう一つ問題は、フェルは私のことを兄だとしか思っていないということだ。だから、その認識を変える為にはフェルに嫌われることなく、私がフェルを愛している人だとわかってもらわなければならない。先の長いことではあるが、それは兄弟という関係を生かしてフェルが今後、色んなことで悩んだ時に一番に親身になって助けてあげたい。

そんなことを計画しつつ、私は今日もフェルのことを考えながら眠りにつく。

私は誰がフェルの近くに居ようと誰にも負けないと気を引き締めた。

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