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第1章

2. 誕生パーティー

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それから暫く4人で遊んでいると、侍女が誕生日パーティーの準備が整ったと呼びに来た。

両親は侍女が呼びに来る前にお客様を出迎えるというので僕も一緒に部屋を出る予定だったが、兄姉達から離してもらえず、後々合流ということとなった。

タジェットは「僕は正装に着替えてくるから3人は先に行っててね。ロザリーナ、ディル、くれぐれもフェルを宜しくね。」と2人に念押ししている。

「はーい!お兄様、大丈夫ですわ。」
「(コクリ)」
「(そこまでしなくても…。)」





両親が部屋から出て行き、3人の会話からわかったことがある。タジェットは今日で10歳…そしてロザリーナは8歳、ディルは7歳である。

ロザリーナは自分が僕と誕生日が同じということを2人に自慢していたので、その時に自分の年齢を言っていた。ディルは僕と誕生日が1ヶ月違いの7歳と言っていたので兄姉達の年齢を知ることができた。

「(少し歳が離れてるから僕は可愛がられてるのか。)」

と裕太は思っていたが、実際はそれだけではない。
母親の特徴をそのまま受け継いだフェンネルは男の子でありながら、女の子のような顔立ちで誰もが"可愛い"と評する容姿をしていた。

自分自身で容姿端麗になることを神様にお願いした裕太だったが未だに自分の顔が分からない為、歳が離れているということだけで可愛がられていると勘違いしていた。





裕太はロザリーナに抱っこされ、ディルと共にパーティー会場へと足を踏み入れた。

「(うわぁ!すごぉい!キラキラだぁ!)」

裕太は思わず口を開けたまま、天井を眺め部屋全体を見回す。

「(ゲームとかの画面で見たやつ!)」とテンションが上がっていると後ろに控えていた侍女から驚きの言葉が発せられた。

「ロザリーナ様、ディル様、フェンネル様。本日はタジェット様のお誕生パーティーの後、フェンネル様のお披露目の儀があります。」

「あぁ、そうだったわね。そしたら父様、母様の挨拶回りが終わったぐらいには行かないと。」

ロザリーナはさも当たり前のように発言をした。

「(えぇー…聞いてないー!僕どうしたらいいの…?側に居ればいいの!?)」

若干不安になる裕太であった。





会場内は正装に身を包んだ紳士淑女の人々がワイン片手に交流したり、音楽に合わせてダンスをする人達もいた。皆、思い思いに時間を過ごしていると一際目立つ音楽が鳴り始める。

ファンファーレの音が聞こえたかと思うと会場の奥、1番大きな扉が開かれた。開かれた扉の中央には父親であるアトラス、母親のイリス、長兄のタジェットが並んで立っており、来賓からの大きな拍手に包まれる。

「本日はお忙しい中、我が息子タジェットの誕生パーティーにお越し下さいまして誠にありがとうございます。本日が皆様にとって良い一日となります様、ささやかでございますが、おもてなしをさせていただきます。また、誕生パーティーの後、末の息子フェンネルを皆様にご紹介致します。どうぞ最後までごゆっくりお楽しみ下さい。」

「本日は私、タジェット・ローランドのために皆様の貴重な時間を頂戴でき誠にありがたく存じます。今日で私は10歳の誕生日を迎え、近々騎士団に入隊する予定です。入隊以降は立派な騎士になる為、そしてこのローランド家に恥じぬ様、精一杯努めて参ります。本日は短い時間ではありますが、皆様どうぞお楽しみ下さい。」

父親の挨拶の後、タジェットも胸に手を当てお辞儀をした。

またもや来賓からの大きな拍手に包まれ、挨拶が終了する。

周りを見渡すと会場の多くから
「さすが、ローランド侯爵家の息子さんだ。」
「立派なご挨拶だわ。」
「将来が楽しみだ。」
という声が聞こえる。

「(兄様すごいなぁ…10歳の発言じゃないし…てか、ウチって侯爵家だったんだ。)」






それから両親とタジェットはお客様への挨拶回りに行き、僕達はその間食事を楽しんだ。

そして僕達の前にタジェットが現れたのは約1時間程経った頃。

「フェル~!僕の挨拶見てくれた!?頑張ってたでしょ!?ご褒美に抱き締めさせて~!」

僕はまたしても目一杯抱き締められると思い、身体を強張らせたが先程のこともあり、力加減は考えられていた。

「(兄様、頑張ってたし大人しくしていよう。)」

ついでに兄の頭をなでなでしておく。

しかし、その行動に感動したタジェットは力加減を忘れた抱擁を再びしてしまい、僕は身体を潰される思いを繰り返すのだった。
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