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番外編【ディル編】
12. 王妃生活9
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「あれ…?お父様、お母様。どうしてここに?」
彼は私達を見つめながら未だに状況が分からないらしい。それはそうだ、彼はまだ齢5歳になったばかり…大人でもいきなり違う場所に現れたら驚いて身を固めるだろう。
「マスト、安心して。私が頼んで魔術師様にマストを呼んでもらったんだ。今から私の母国ローゼバーグへ行くよ。」
彼を抱きしめながら告げると彼は驚きながらも「今から…⁉︎凄い!初めての家族旅行だね!」と声を上げた。
しかし…
「でも…ッ!」と急に彼の表情が曇る。
「どうしたんだ?旅行に行くのは嫌?」
さっきまでの嬉しそうな顔は何処へ。
「ううん、旅行に行くのは嬉しい!けど、お母様のお腹には赤ちゃんがいるでしょう?…お母様、大丈夫?」
私を労ってくれるその言葉に先程までの自分の行動が恨めしい。
私はなんてことを…。あの軽率な行動でもしかしたらこの子を失っていたかもしれないのに…!
私はギュッと息子を抱き締めると「大丈夫、心配してくれてありがとう。」とお礼を告げた。
「さぁ、そろそろ向かいましょうか?」
魔術師の彼女の言葉にハッとすると彼女に近づく。
「今から魔法陣を描くから、そこに入って。帰りはその魔法陣の上に3人が乗った時点で発動するようにしておくから。準備はいい?」
「「ありがとう、アークレット様」」
彼女は無言で頷くと杖を一振りした。
眩しい光に包まれ私達が目を開けると聞こえてきたのは赤ん坊の泣き声だった。おや?と思い目を凝らすと目の前には懐かしい顔ぶれが驚いた表情でこちらを見つめていた。
「ディル兄様!!!」
ああ…愛しいフェルの声だ。
声の方を向くと私の記憶に残る弟よりだいぶ大きくなった彼に抱き締められていた。
「ディル兄様!会いたかった!僕です、フェルです!」
彼は必死に弟だとアピールしてくるが、そんなこと言われなくても分かっている。
私は彼をギュッと抱き締め返すと「ただいまフェル、大きくなったね。」と額にキスを贈った。ヘヘッと照れ臭そうに笑うフェルを見ながら周りを見渡す。
「ディル様、お久しぶりでございます。」
相変わらずの行動の速さでいち早く彼女が挨拶に来た。
「エリー、久しぶりだね。長い間、フェルのお世話ありがとう。」
「いいえ、私はこの身が保つ限りこれからもフェンネル様を支えていくつもりです。」
そう力強く告げる彼女の心構えはあれから変わってないらしい。
「これからもフェルのこと宜しくね。」
にこやかに彼女と挨拶を終えると2人の赤ん坊を両腕に抱くサックルが近づいて来た。
「お久しぶりです、ディル王妃。」
相変わらず彼は獣人なだけあって大きい。私は見上げながら目線の先にある彼の優しい瞳と腕に抱かれる赤ん坊に目を落とした。
「この子達は君とフェルの子供かい?」
「はい、長女のベルと長男のネオンです。ベルは人型、ネオンは獣型です。フェル曰くネオンは光魔法が使えるかもしれないと…。」
さすがフェルの子供達だ…高い魔力を持って生まれたんだね。
「そっか…貴重な存在だね。これからも大事に育ててあげて。」
さらっと2人の頭を撫でてやり、加護を受けれるように祈る。
「はい、ありがとうございます。どうぞ、こちらにお掛け下さい。」
そう言われ3人でソファーに腰掛ける。お互いに自己紹介を改めてし、近況を報告し合った。
「それにしてもディル兄様がいきなり現れてビックリしたよ、でもどうやって…?」
「ああ、それは…。」
実は2人目を妊娠し長期移動が出来ない為、魔術師に転移を頼んでこちらまで来たことを告げる。するとフェルは自分の事のように手を叩いて喜んだ。
「わぁ!それはおめでたいね!でも、そんな中わざわざ来てくれてありがとう。僕も4人も産んだから出産の大変さは知ってるよ、兄様身体を大切にね?」
「ああ、ありがとう。フェルも4人も子育て大変じゃない?」
「うん、まぁでもエリーにも手伝ってもらってるし、旦那様が多いからそれにも助かってる。」
フェルは照れ臭そうにはにかむとサックルの方をチラッと見た。
「タジェット兄様の息子のタンジェリンは次男のホップの面倒をよくみてくれるし、サックルさんはこうやって双子のお世話をしてくれる。
…実は僕、双子を産んでから少し調子が悪かったんだ。だからサックルさんも過保護になっちゃって…。」
「…ッ!今は?」
「今はすっかり良くなったよ、元々産後の肥立ちが悪かったのも子供達に魔力を取られ過ぎちゃっただけだし。」
フェルは何事も無かったかのように告げるが、そんなこと滅多にない。
魔力が高過ぎるフェルでさえ、そんなことになったのならこの子供達の魔力は一体どれくらいなんだろう…。
将来が良い意味で怖く感じた。
その後、タンジェリンやホップ、タジェット兄様、カラマスも登場し久しぶりの再会を果たした。
魔法陣に乗り、3人で帰宅した私達は久しぶりの休息に安堵する。
「…楽しかったな、ディル、マスト。」
「うん、久しぶりに皆に会えて嬉しかった…。」
「皆さんに会うの初めてだったので緊張しました。あの人達が僕の従兄弟になるのですね、獣人も初めて見ました!」
マストは初めて見る獣人に興奮気味だ。私はそれを微笑ましく見ながらファーに凭れる。
「…ありがとう、私のワガママを聞いてくれて。」
「いいや、私にとってもいい機会だった。君の希望を聞くだけで叶えてあげられなかったから魔術師様にも感謝している。」
フッと困ったように笑う彼の言葉を聞いた時、途端にお腹に痛みが走った。
「いっ…痛たた…。」
「ディル⁉︎」
「お母様⁉︎」
思わずお腹を押さえて膝をつく。
「うぅ…陣痛かも…。」
「「えぇっ⁉︎」」
慌てふためく彼らを見ながら私の小さな笑いが溢れた。
彼は私達を見つめながら未だに状況が分からないらしい。それはそうだ、彼はまだ齢5歳になったばかり…大人でもいきなり違う場所に現れたら驚いて身を固めるだろう。
「マスト、安心して。私が頼んで魔術師様にマストを呼んでもらったんだ。今から私の母国ローゼバーグへ行くよ。」
彼を抱きしめながら告げると彼は驚きながらも「今から…⁉︎凄い!初めての家族旅行だね!」と声を上げた。
しかし…
「でも…ッ!」と急に彼の表情が曇る。
「どうしたんだ?旅行に行くのは嫌?」
さっきまでの嬉しそうな顔は何処へ。
「ううん、旅行に行くのは嬉しい!けど、お母様のお腹には赤ちゃんがいるでしょう?…お母様、大丈夫?」
私を労ってくれるその言葉に先程までの自分の行動が恨めしい。
私はなんてことを…。あの軽率な行動でもしかしたらこの子を失っていたかもしれないのに…!
私はギュッと息子を抱き締めると「大丈夫、心配してくれてありがとう。」とお礼を告げた。
「さぁ、そろそろ向かいましょうか?」
魔術師の彼女の言葉にハッとすると彼女に近づく。
「今から魔法陣を描くから、そこに入って。帰りはその魔法陣の上に3人が乗った時点で発動するようにしておくから。準備はいい?」
「「ありがとう、アークレット様」」
彼女は無言で頷くと杖を一振りした。
眩しい光に包まれ私達が目を開けると聞こえてきたのは赤ん坊の泣き声だった。おや?と思い目を凝らすと目の前には懐かしい顔ぶれが驚いた表情でこちらを見つめていた。
「ディル兄様!!!」
ああ…愛しいフェルの声だ。
声の方を向くと私の記憶に残る弟よりだいぶ大きくなった彼に抱き締められていた。
「ディル兄様!会いたかった!僕です、フェルです!」
彼は必死に弟だとアピールしてくるが、そんなこと言われなくても分かっている。
私は彼をギュッと抱き締め返すと「ただいまフェル、大きくなったね。」と額にキスを贈った。ヘヘッと照れ臭そうに笑うフェルを見ながら周りを見渡す。
「ディル様、お久しぶりでございます。」
相変わらずの行動の速さでいち早く彼女が挨拶に来た。
「エリー、久しぶりだね。長い間、フェルのお世話ありがとう。」
「いいえ、私はこの身が保つ限りこれからもフェンネル様を支えていくつもりです。」
そう力強く告げる彼女の心構えはあれから変わってないらしい。
「これからもフェルのこと宜しくね。」
にこやかに彼女と挨拶を終えると2人の赤ん坊を両腕に抱くサックルが近づいて来た。
「お久しぶりです、ディル王妃。」
相変わらず彼は獣人なだけあって大きい。私は見上げながら目線の先にある彼の優しい瞳と腕に抱かれる赤ん坊に目を落とした。
「この子達は君とフェルの子供かい?」
「はい、長女のベルと長男のネオンです。ベルは人型、ネオンは獣型です。フェル曰くネオンは光魔法が使えるかもしれないと…。」
さすがフェルの子供達だ…高い魔力を持って生まれたんだね。
「そっか…貴重な存在だね。これからも大事に育ててあげて。」
さらっと2人の頭を撫でてやり、加護を受けれるように祈る。
「はい、ありがとうございます。どうぞ、こちらにお掛け下さい。」
そう言われ3人でソファーに腰掛ける。お互いに自己紹介を改めてし、近況を報告し合った。
「それにしてもディル兄様がいきなり現れてビックリしたよ、でもどうやって…?」
「ああ、それは…。」
実は2人目を妊娠し長期移動が出来ない為、魔術師に転移を頼んでこちらまで来たことを告げる。するとフェルは自分の事のように手を叩いて喜んだ。
「わぁ!それはおめでたいね!でも、そんな中わざわざ来てくれてありがとう。僕も4人も産んだから出産の大変さは知ってるよ、兄様身体を大切にね?」
「ああ、ありがとう。フェルも4人も子育て大変じゃない?」
「うん、まぁでもエリーにも手伝ってもらってるし、旦那様が多いからそれにも助かってる。」
フェルは照れ臭そうにはにかむとサックルの方をチラッと見た。
「タジェット兄様の息子のタンジェリンは次男のホップの面倒をよくみてくれるし、サックルさんはこうやって双子のお世話をしてくれる。
…実は僕、双子を産んでから少し調子が悪かったんだ。だからサックルさんも過保護になっちゃって…。」
「…ッ!今は?」
「今はすっかり良くなったよ、元々産後の肥立ちが悪かったのも子供達に魔力を取られ過ぎちゃっただけだし。」
フェルは何事も無かったかのように告げるが、そんなこと滅多にない。
魔力が高過ぎるフェルでさえ、そんなことになったのならこの子供達の魔力は一体どれくらいなんだろう…。
将来が良い意味で怖く感じた。
その後、タンジェリンやホップ、タジェット兄様、カラマスも登場し久しぶりの再会を果たした。
魔法陣に乗り、3人で帰宅した私達は久しぶりの休息に安堵する。
「…楽しかったな、ディル、マスト。」
「うん、久しぶりに皆に会えて嬉しかった…。」
「皆さんに会うの初めてだったので緊張しました。あの人達が僕の従兄弟になるのですね、獣人も初めて見ました!」
マストは初めて見る獣人に興奮気味だ。私はそれを微笑ましく見ながらファーに凭れる。
「…ありがとう、私のワガママを聞いてくれて。」
「いいや、私にとってもいい機会だった。君の希望を聞くだけで叶えてあげられなかったから魔術師様にも感謝している。」
フッと困ったように笑う彼の言葉を聞いた時、途端にお腹に痛みが走った。
「いっ…痛たた…。」
「ディル⁉︎」
「お母様⁉︎」
思わずお腹を押さえて膝をつく。
「うぅ…陣痛かも…。」
「「えぇっ⁉︎」」
慌てふためく彼らを見ながら私の小さな笑いが溢れた。
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