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番外編【ディル編】
9. 王妃生活6
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先程、食べ物を与えた者から有力な目撃情報を得ていた私はスラムの奥へと足を伸ばしていた。
人の気配がない…誤情報か?
諦めて引き返そうとしたその時「ねぇ。」と話しかけられる。慌てて振り返るとそこには黒い外装を羽織り表情もわからないほど目深にフードを被った小柄な少女?が立っていた。外装によって男女も分からなかったが声色で女性だと判断できる。
「ねぇ、貴方スラムの人じゃないわよね?」
彼女の声色は私を疑っているようだった。
「ああ、私はこの辺りで魔術師を見たという情報を得てここまで来たのだ。」
「へぇ…魔術師ね。そんな者、ここには居ないわよ。」
「…っ!何故そう言い切れる?」
彼女の言葉はやけに説得力があるように感じた。
「だってその魔術師とさっきまで一緒にいたんだもの。」
「なんだって⁉︎では、その魔術師はどこに⁉︎」
私は咄嗟に彼女に近づいた。
「2時間ほど前に別れたからもう隣町かそれ以上…他国にまで足を運んでるかもしれないわ。貴方だってあの噂を知っているでしょう?瞬間移動が出来るとかっていう…。」
ああ…そんな…!ここまで来たのに無駄足だったというのか…。
本来なら彼女の言うことを全て鵜呑みには出来ないが、これ以上護衛も付けずに捜索を続けるのは私には不可能だ。
「…ああ、知っている。その瞬間移動というのをやってほしくてここまで来たんだ。しかし…魔術師がもういないなら諦めるしか…忠告、感謝する。」
そう言って彼女に背を向けた途端、お腹に痛みが走り思わず膝をついてしまう。
「ヴッ…!」
「大丈夫?お腹が痛むの?」
彼女は私に走り寄ってくると肩を支えてくれ、近くの椅子に座らせてくれた。
「すまない…実は妊娠してるんだ。」
「えっ、そうなの?じゃあなんでこんなところに…?」
彼女の言葉にこれまでの経緯を掻い摘んで説明する。
「そう…貴方の旦那さんって嫉妬深いのね…。じゃあ貴方は大切な弟さんに会いたい一心でこんな危険な場所に来たっていうの?それも妊娠してる身体で?」
「…ああ、無茶なことをしているとはわかっているがどうしても会いたかった…。会えない距離にいるわけではないのにそれが出来ない歯痒さ…。向こうが私のことを心配して言ってくれているのはわかっているが、それでも私は弟に会いたいのだ。会って元気な姿を見たいし、弟の子供にも会いたい。10年以上我慢しているがそれも限界だ…。」
最近はファーのことよりもフェルのことばかり考えている…このままでは私の精神が保たない…。
私の言葉を静かに聴いていた彼女は突如、膝をパンッと叩くと立ち上がった。
「貴方の話はよく分かったわ。弟さんは何処に住んでいるの?」
「…?ローゼバーグだ。」
「お名前は?」
「フェンネル・ローランド。」
なんだ?なんでそんなことを聞いてくる。
「ふ~ん、ちょっと待ってね。」
そう言って彼女は集中するように真っ直ぐ前を見据える。もしかしたら目を閉じているのかもしれないが、フードを目深に被った状態では私には分からない。私は急に立ち上がった彼女が何を始めるのかよく分からないままその光景を眺めていた。するとものの10秒程で彼女が「見つけた。」と呟いた。
「貴方の弟さんって銀髪で緑目の子?」
「…ッ!ああ、そうだ。」
「子供が3…いや4人かな?生まれてる、近くにいるのは旦那さん…?獣人がいる。」
サックルか…!でもどうして彼女に分かるんだ…?
彼女はパッとこちらを向くとフードを外しながらこちらを見つめ「貴方の話を聞いて手助けすることに決めたわ。」と告げる。
「はじめまして、私は魔術師アークレット。貴方の探している瞬間移動の出来る魔術師よ。」
人の気配がない…誤情報か?
諦めて引き返そうとしたその時「ねぇ。」と話しかけられる。慌てて振り返るとそこには黒い外装を羽織り表情もわからないほど目深にフードを被った小柄な少女?が立っていた。外装によって男女も分からなかったが声色で女性だと判断できる。
「ねぇ、貴方スラムの人じゃないわよね?」
彼女の声色は私を疑っているようだった。
「ああ、私はこの辺りで魔術師を見たという情報を得てここまで来たのだ。」
「へぇ…魔術師ね。そんな者、ここには居ないわよ。」
「…っ!何故そう言い切れる?」
彼女の言葉はやけに説得力があるように感じた。
「だってその魔術師とさっきまで一緒にいたんだもの。」
「なんだって⁉︎では、その魔術師はどこに⁉︎」
私は咄嗟に彼女に近づいた。
「2時間ほど前に別れたからもう隣町かそれ以上…他国にまで足を運んでるかもしれないわ。貴方だってあの噂を知っているでしょう?瞬間移動が出来るとかっていう…。」
ああ…そんな…!ここまで来たのに無駄足だったというのか…。
本来なら彼女の言うことを全て鵜呑みには出来ないが、これ以上護衛も付けずに捜索を続けるのは私には不可能だ。
「…ああ、知っている。その瞬間移動というのをやってほしくてここまで来たんだ。しかし…魔術師がもういないなら諦めるしか…忠告、感謝する。」
そう言って彼女に背を向けた途端、お腹に痛みが走り思わず膝をついてしまう。
「ヴッ…!」
「大丈夫?お腹が痛むの?」
彼女は私に走り寄ってくると肩を支えてくれ、近くの椅子に座らせてくれた。
「すまない…実は妊娠してるんだ。」
「えっ、そうなの?じゃあなんでこんなところに…?」
彼女の言葉にこれまでの経緯を掻い摘んで説明する。
「そう…貴方の旦那さんって嫉妬深いのね…。じゃあ貴方は大切な弟さんに会いたい一心でこんな危険な場所に来たっていうの?それも妊娠してる身体で?」
「…ああ、無茶なことをしているとはわかっているがどうしても会いたかった…。会えない距離にいるわけではないのにそれが出来ない歯痒さ…。向こうが私のことを心配して言ってくれているのはわかっているが、それでも私は弟に会いたいのだ。会って元気な姿を見たいし、弟の子供にも会いたい。10年以上我慢しているがそれも限界だ…。」
最近はファーのことよりもフェルのことばかり考えている…このままでは私の精神が保たない…。
私の言葉を静かに聴いていた彼女は突如、膝をパンッと叩くと立ち上がった。
「貴方の話はよく分かったわ。弟さんは何処に住んでいるの?」
「…?ローゼバーグだ。」
「お名前は?」
「フェンネル・ローランド。」
なんだ?なんでそんなことを聞いてくる。
「ふ~ん、ちょっと待ってね。」
そう言って彼女は集中するように真っ直ぐ前を見据える。もしかしたら目を閉じているのかもしれないが、フードを目深に被った状態では私には分からない。私は急に立ち上がった彼女が何を始めるのかよく分からないままその光景を眺めていた。するとものの10秒程で彼女が「見つけた。」と呟いた。
「貴方の弟さんって銀髪で緑目の子?」
「…ッ!ああ、そうだ。」
「子供が3…いや4人かな?生まれてる、近くにいるのは旦那さん…?獣人がいる。」
サックルか…!でもどうして彼女に分かるんだ…?
彼女はパッとこちらを向くとフードを外しながらこちらを見つめ「貴方の話を聞いて手助けすることに決めたわ。」と告げる。
「はじめまして、私は魔術師アークレット。貴方の探している瞬間移動の出来る魔術師よ。」
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