次期魔王の教育係に任命された

第1章

6. 生命の樹木

部屋に入るとその広さに驚く。30畳は超える広さにキングサイズのベッドとソファー、机、チェスト、そしてかなり大きな本棚。

「広い…。」

「お気に召しましたか？魔王様に指示され、次期魔王様の教育係に相応しい方がいついらっしゃっても良いようにこだわって用意させました。」

「あの…本棚の大きさもこだわってですか？」

「はい、やはり教育者として様々な文学に精通していらっしゃるかと思いましたので出来る限り集めました。それと男性か女性か分からなかったので、どちらでも良いように色合いは落ち着いた雰囲気にしております。また後でお洋服もお持ちしますね。」

「…ありがとうございます。
(うわぁ…凄い勘違いされてる…僕、ただ育児するだけなのに…。)」

「この後はどうされますか？他の者への紹介は明日、改めて行いますが本日はこのままお休み頂いても構いません。良ければ次期魔王様の生命の樹木をご案内致します。」

「あっ、それでお願いします。」

僕は今後の為、次期魔王の姿を確認することにした。ネフライトに連れられ、屋敷の最上階へ移動する。

「ココは魔王様と私しか入ることは出来ません。もし、次期魔王様の教育係が現れなかったら私が次期魔王様を育てる予定でした。しかし、私にはそんな大役を務める自信はありません。なので、ショウ様が来て下さって本当に嬉しいのです。」

ネフライトはそう言うとゆっくり扉を開く。中は芝生が敷き詰められ草花も大量に生えている。そして部屋の中心には大きな大木があり、それが先程言っていた生命の樹木であることは予想できた。

僕は恐る恐る大木に近付き、ソッと触れる。すると中からドクッドクッと心臓が動いているような振動が聞こえた。

「凄い…本当に中にいるんですね。」

「はい、日に日にその心拍音は大きくなっております。生まれるのも時間の問題かと。」

僕は大木を撫でながら「そうですか…もうすぐ僕の出番ですね。」とこぼす。

「大丈夫です。ショウ様のような素晴らしい方に取り上げてもらえるのです、次期魔王様も待ち遠しいでしょう。」

そんなに持ち上げられると反応に困る。

「…そう言って頂けると嬉しいです…では、そろそろ行きましょうか…。」

僕はそう言って部屋を後にする。僕が出て行く瞬間、生命の樹木が一際光ったことに僕は気付かなかった。