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第4章
121. 政務
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「えっ…?消えてもらったって…?」
「言葉通りの意味だ。お前の証言とあの魔族との証言を照らし合わせて違いが無いか確かめさせてもらった。その中で彼奴の上司だけは消えても良い存在だと判断出来た為この世から消えてもらった。」
「あっ…。」
やはりあの魔族が言っていた上司は職務怠慢で処罰されてしまったようだ。
でも…
「殺す事はなかったんじゃない…?」
人間の生活に慣れていた自分からすれば何か粗相があれば処罰=殺害に直結しているのにはなかなか慣れない。それも自分が関わったことでその人がそういう扱いを受ければ尚更だ。
そんな想いから出た発言であったが、モリオンからすれば甘い判断だったらしい。
「相変わらずショウは優し過ぎるな。この世は弱肉強食だぞ、強い者が弱い者を制圧して何が悪い。それに今回はショウの存在を無き者として扱い、それを全て部下に任せた其奴の責任だ。」
確かに彼の言うことも分かる。あの魔族の上司は本来、モリオンやネフライトに報告しなければならない事柄を隠蔽し無かったことにした、それを職務怠慢として処罰してもなんら文句は言われまい。
この世界ではそれが普通なのだろう、しかしそれが弱い者を制圧してもいい理由にはならないはずだ。
「モリオン…今回はその人が処罰されても仕方ないとしても僕は強い者ほど弱い者を守って欲しいって思うんだ。僕は君にもそんな風に思って欲しくて育ててきたつもりだったんだけど、君はそう思ってなかったの?」
彼の頰を撫でながら尋ねる。すると眉間に皺を寄せた彼が「俺だって始めはそう思っていた…しかし…。」と零す。
「ショウが居なくなった焦燥感を紛れさすには一心不乱に執務をこなすことでしか俺には出来なかった。仕事をしていく中で他の奴らの汚い部分が見え、綺麗ごとだけでは政務はこなせないと気付いたんだ。時には強制的に…邪魔者を排除しなければならない時もあった、この世界で政務をするにはそういうことも必要だ。ショウには悪いが…お前の育ってきた人間界とは同じ様に政務はこなせない。」
モリオンにハッキリと告げられ、こちらの方がハッとした。モリオンは変わりたくて変わったんじゃない、変わらずを得なかったんだ。
僕は彼の頰を撫でながら「…ゴメン。僕は君の立場を甘く考えていたみたい。魔王とはそういうものなんだね。」と謝る。
「ああ…俺だってこんな風になりたかった訳じゃない。ショウが育ててくれたように素直に真っ直ぐ政務をこなしたかった…。しかし現実的にそれは難しい。」
「うん、そうだね。時には苦しい判断に迫られる時もある…。それを君は今まで耐えてきたんだね、よく頑張ったね、モリオン。」
「ショウ…。」
「これからはそんな君の重荷を僕も一緒に背負うからしんどい時は言うんだよ?」
そう言って僕は彼の背に手を伸ばした。
「言葉通りの意味だ。お前の証言とあの魔族との証言を照らし合わせて違いが無いか確かめさせてもらった。その中で彼奴の上司だけは消えても良い存在だと判断出来た為この世から消えてもらった。」
「あっ…。」
やはりあの魔族が言っていた上司は職務怠慢で処罰されてしまったようだ。
でも…
「殺す事はなかったんじゃない…?」
人間の生活に慣れていた自分からすれば何か粗相があれば処罰=殺害に直結しているのにはなかなか慣れない。それも自分が関わったことでその人がそういう扱いを受ければ尚更だ。
そんな想いから出た発言であったが、モリオンからすれば甘い判断だったらしい。
「相変わらずショウは優し過ぎるな。この世は弱肉強食だぞ、強い者が弱い者を制圧して何が悪い。それに今回はショウの存在を無き者として扱い、それを全て部下に任せた其奴の責任だ。」
確かに彼の言うことも分かる。あの魔族の上司は本来、モリオンやネフライトに報告しなければならない事柄を隠蔽し無かったことにした、それを職務怠慢として処罰してもなんら文句は言われまい。
この世界ではそれが普通なのだろう、しかしそれが弱い者を制圧してもいい理由にはならないはずだ。
「モリオン…今回はその人が処罰されても仕方ないとしても僕は強い者ほど弱い者を守って欲しいって思うんだ。僕は君にもそんな風に思って欲しくて育ててきたつもりだったんだけど、君はそう思ってなかったの?」
彼の頰を撫でながら尋ねる。すると眉間に皺を寄せた彼が「俺だって始めはそう思っていた…しかし…。」と零す。
「ショウが居なくなった焦燥感を紛れさすには一心不乱に執務をこなすことでしか俺には出来なかった。仕事をしていく中で他の奴らの汚い部分が見え、綺麗ごとだけでは政務はこなせないと気付いたんだ。時には強制的に…邪魔者を排除しなければならない時もあった、この世界で政務をするにはそういうことも必要だ。ショウには悪いが…お前の育ってきた人間界とは同じ様に政務はこなせない。」
モリオンにハッキリと告げられ、こちらの方がハッとした。モリオンは変わりたくて変わったんじゃない、変わらずを得なかったんだ。
僕は彼の頰を撫でながら「…ゴメン。僕は君の立場を甘く考えていたみたい。魔王とはそういうものなんだね。」と謝る。
「ああ…俺だってこんな風になりたかった訳じゃない。ショウが育ててくれたように素直に真っ直ぐ政務をこなしたかった…。しかし現実的にそれは難しい。」
「うん、そうだね。時には苦しい判断に迫られる時もある…。それを君は今まで耐えてきたんだね、よく頑張ったね、モリオン。」
「ショウ…。」
「これからはそんな君の重荷を僕も一緒に背負うからしんどい時は言うんだよ?」
そう言って僕は彼の背に手を伸ばした。
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