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第4章

99. 咄嗟の行動

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魔王様…?

一向に動かない魔王様を不思議に思い見つめ返すと背後から「父様、その手を離して下さい。」と声が響く。

其方をパッと振り向くと久しぶりに見るモリオンの姿があった。

「モリオンッ…!!!」

僕は魔王様から離れモリオンの元に駆け寄り、その姿をマジマジと見つめる。僕には数年前に別れた時とあまり変わらないように見えたが、本当はそうではないのだろう。若干、クマの残る目元と表情の固くなったモリオンは魔王様をジッと見据えたまま僕とは目を合わせてくれない。

やっぱり僕はもうお役御免ってことかな…。

悲観的な感情と共に彼の近くに寄った身体を遠ざけようとした。しかし、モリオンに腰をグッと引き寄せられる。

「モリオン…?」

僕の呟きにさえ彼は動じず暫く沈黙が続いた。すると魔王様がいつもの様に冷静に口を開く。

「モリオン、其方はその様な顔をしていたのだな。何度か触らせてもらったがそれだけでは分かり得ぬこともあった。生きている内に其方の顔を見れて良かった…これでもう思い残すことはない。」

魔王様はそう言ってモリオンに笑顔を向ける。

僕はそれを見ながら「良かった、魔王様…僕もこれで漸く恩返しが出来た…。僕ももう思い残すことは無い…モリオンが成人を迎えたら大人しく人間界に行こう…。」と1人納得していた。

しかし急にモリオンがこちらを見下ろしたかと思うと僕の眼帯越しに無くなった目元をなぞる。そして痛ましげな顔で「ショウ…君はそんなにも父様のことが大事なんだね…。」と告げる。

「えっ…?」

彼の言った意味が一瞬分からなかった。確かに魔王様は大事だ、これまで沢山お世話になってきた。だから彼がこの世界の僕の父親のようだと言えばモリオンの言う大事ということに当て嵌まるだろう。

「うん…。」

「それに父様はショウの真名を知ってるんだってね?」

真名…?初めて魔王様に会った時に自己紹介をしてしまい教えてしまったあのことかな。

「うん。」

するとモリオンがボソッと「父様なんてあの時、死ねば良かったのに。」と告げた。その瞬間、僕は思わず手を振り上げる。



パンッ!!!



モリオンの頰を叩く音が響いた。彼は避けることも出来た僕の行動に黙って叩かれている。

「モリオンっ!!!なんでそんな!酷いことを…!」

僕は溢れる涙を止めようともせず、震える声で叫んだ。
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