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第4章
98. 光
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次に僕が目を覚ますと自身の左目が真っ暗でガーゼのようなものが貼られていた。
「んっ…。」
「ショウ様⁉︎目が覚めましたか⁉︎」
いち早く気付いたネフライトが声を掛けてくる。その顔には不安と安堵が浮かんでいた。
「…うまくいった…?」
僕はそれだけが気掛かりだった。日本だったら比較的失敗も少ないかとは思っていたが、あまり医療が発達していないこの世界では手術自体の成功率と合併症が懸念される。
「手術は上手くいきました。あとは経過次第です。」
オパールさんが和やかに告げる。
「そう…良かった…。」
ホッと安心し隣を見ると魔王様はまだ眠っているようだ。穏やかなその寝顔に笑みが溢れる。
これで僕にも恩返しができた…。
この時の僕はその想いしか抱かなかった。
それから数日、僕はリハビリがてら別棟とオパールさんの建物を行き来し、その経過を彼に看てもらっていた。
「サトー様…これでガーゼはもう外していただけます。しかし、急に明るいところに出られますと目には良くありませんので外出の際は必ずコレを着用して下さい。」
そう言って黒い眼帯を渡される。それを受け取ると経過が良好で嬉しい半分、これから説教を受けに行かなければならないことに気分が下がった。
「はぁ…。」
「これから魔王様に会いに行かれるのですか?」
僕が出て行ってから暫くすると魔王様が目を覚まし暗闇だった世界に光が射すことに驚いたという。そして僕の計画を悟った魔王様は激怒し、僕を呼び付けた。しかし、それを僕はなんだかんだ理由をつけ断り続けていたのだ。
だって怒られるのは分かってるから…。
だがガーゼが取れた今日、流石に行かなければならない。「はぁ…。」と再び溜息を吐いた僕はオパールさんに別れを告げ、魔王様の部屋へと向かった。
僕が室内に入ると上体を起こしていた魔王様が「サトー…なんてことをしてくれたんだ。」とぼやく。
「すみません…勝手なことをしました。」
「本当にな、こんなこと望んでいないとあれ程言ったはずだ。」
「…。」
怒っている魔王様にこれ以上、何も言い訳も出来ず黙り込んでいると魔王様が僕に手招きをした。
「いや…もう止めよう、サトーには感謝している。この先短い我の目が再び見えるようになり、モリオンの姿も初めて見ることが出来る。それにサトー…其方の姿もな。」
そう微笑む魔王様に嬉しくなって思わず抱き着いた。
「魔王様!僕も嬉しいです。これでモリオンの成長した姿が見れますね!」
「ああ…しかし、其方をこの様な姿にして申し訳なく思う…。」
魔王様がそっと僕の頰を撫でると痛ましげな表情を浮かべる。
「いいんです、僕はこうなれて嬉しいんですから!」
「そうか…なら、もうこの話には触れないでおこう。サトー、其方はその様な容姿をしていたのだな、歳も随分と若い…。」
魔王様は変わらず僕の頰を感慨深そうに撫でるとジッと見つめてきた。
「んっ…。」
「ショウ様⁉︎目が覚めましたか⁉︎」
いち早く気付いたネフライトが声を掛けてくる。その顔には不安と安堵が浮かんでいた。
「…うまくいった…?」
僕はそれだけが気掛かりだった。日本だったら比較的失敗も少ないかとは思っていたが、あまり医療が発達していないこの世界では手術自体の成功率と合併症が懸念される。
「手術は上手くいきました。あとは経過次第です。」
オパールさんが和やかに告げる。
「そう…良かった…。」
ホッと安心し隣を見ると魔王様はまだ眠っているようだ。穏やかなその寝顔に笑みが溢れる。
これで僕にも恩返しができた…。
この時の僕はその想いしか抱かなかった。
それから数日、僕はリハビリがてら別棟とオパールさんの建物を行き来し、その経過を彼に看てもらっていた。
「サトー様…これでガーゼはもう外していただけます。しかし、急に明るいところに出られますと目には良くありませんので外出の際は必ずコレを着用して下さい。」
そう言って黒い眼帯を渡される。それを受け取ると経過が良好で嬉しい半分、これから説教を受けに行かなければならないことに気分が下がった。
「はぁ…。」
「これから魔王様に会いに行かれるのですか?」
僕が出て行ってから暫くすると魔王様が目を覚まし暗闇だった世界に光が射すことに驚いたという。そして僕の計画を悟った魔王様は激怒し、僕を呼び付けた。しかし、それを僕はなんだかんだ理由をつけ断り続けていたのだ。
だって怒られるのは分かってるから…。
だがガーゼが取れた今日、流石に行かなければならない。「はぁ…。」と再び溜息を吐いた僕はオパールさんに別れを告げ、魔王様の部屋へと向かった。
僕が室内に入ると上体を起こしていた魔王様が「サトー…なんてことをしてくれたんだ。」とぼやく。
「すみません…勝手なことをしました。」
「本当にな、こんなこと望んでいないとあれ程言ったはずだ。」
「…。」
怒っている魔王様にこれ以上、何も言い訳も出来ず黙り込んでいると魔王様が僕に手招きをした。
「いや…もう止めよう、サトーには感謝している。この先短い我の目が再び見えるようになり、モリオンの姿も初めて見ることが出来る。それにサトー…其方の姿もな。」
そう微笑む魔王様に嬉しくなって思わず抱き着いた。
「魔王様!僕も嬉しいです。これでモリオンの成長した姿が見れますね!」
「ああ…しかし、其方をこの様な姿にして申し訳なく思う…。」
魔王様がそっと僕の頰を撫でると痛ましげな表情を浮かべる。
「いいんです、僕はこうなれて嬉しいんですから!」
「そうか…なら、もうこの話には触れないでおこう。サトー、其方はその様な容姿をしていたのだな、歳も随分と若い…。」
魔王様は変わらず僕の頰を感慨深そうに撫でるとジッと見つめてきた。
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