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第4章

94. 諦め

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この頃になると僕の生活は雑用の仕事をこなしながら、たまに来る魔王様からの連絡に応対したり、僕を心配して毎日のように会いに来てくれるネフライトとおしゃべりする様になっていた。

魔王様は息子であるモリオンのことも心配しているが僕のことも本当の息子の様に大切に思ってくれている。あの言葉を守り、実行してくれている魔王様にはこれからも一生頭が上がらないだろう。

そして今日も部屋に来ているネフライトとお茶をしながらモリオンのことを話す。

「ネフライト、城の様子はどう?」

「相変わらずですよ、政務は滞りなく。」

「そう…モリオンも…?」

「ええ、モリオン様も前と変わらずです…僭越ながら以前、ショウ様のお名前を口にしたことがございます。しかし、その際はチラッと視線をこちらに向けただけで、すぐに資料に目を落としてしまいました。」

「そっか…。」

モリオンの呆気ない反応に心が沈む。でも、それは自分で招いた結果だ。

「ショウ様…私は何があろうとも貴方の味方ですから。」

そう言って笑みを浮かべる彼に申し訳なく思う。こんなにも自分を想ってくれている相手に僕はまだ受け入れられないでいるのだ。

「ネフライト、ありがとう…。君がいてくれて本当に良かった。」







それからあっという間に4年の月日が経った。

僕が居なくなってからの期間を考えるとモリオンが第三次性徴期を迎えるのももうすぐである。やはり僕は最後の性徴を迎え、成人したモリオンの姿に会えないかもしれない。しかし、後悔してももう遅い。そうなるように選択したのは自分なのだから。もう少ししたら僕は一人、人間界に行き何事もなかったかのように過ごす。

ふと神様との約束を思い出した。

僕が人間界で自由に暮らすには次期魔王を育てて成人させること。始めは次期魔王だと知らされずに了承したため、分かった時にはかなりビックリしたが、この15年モリオンを本当の息子のように想って育ててきた。少なからず親心というものが生まれたのも事実である。

だから…モリオンが成人した日には大人しく魔界から消えよう…。

本音で言うと一目その姿を見て去りたかったが、自分が出て行くことでまたトラブルにはなりたくない。僕は後ろ髪を引かれる想いのまま、そう決めた。





しかし、予想外の出来事が起こったのである。

ある日、僕が部屋で読書をしているとネフライトが取り乱した様子で部屋に入ってきた。

「ショウ様、大変です!魔王様の容態が急変しました!」

魔王様が⁉︎

彼の今までにない様子に驚いたが、つい昨日も魔王様と通信したばかりだったので余計に驚く。

「それで、魔王様は⁉︎」

「医官によって魔力供給を行い、なんとか今は安定しておりますが正直、時間の問題かと思われます…。魔王様もお年を召した方なので、次またいつ急変するかは分かりません。」

そんな…お義父様が亡くなる…?いやだ!そんなこと、絶対にさせない!僕が…僕がどうにかしてみせる!

僕はネフライトの制止を振り切って魔王様の元へと走った。
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