90 / 122
第4章
90. 対峙
しおりを挟む
ネフライトに案内された場所は城内ではあるが、本館ではなく別館にある部屋で僕が今まで訪れたことのない場所だった。
「ここは…?」
「こちらは別棟の一室になります。本館に入られますとモリオン様に気付かれてしまいますので…。」
ああ、そうか…モリオンに気付かれた元も子もないもんね。
「どうぞ、お掛けください。」
そう言われ僕はソファーに腰掛けるとネフライトと対峙する。こうやって彼を見るのも久しぶりだ。彼も同じ様に思ったのか僕の存在を懐かしむように微笑む。
「…この1ヶ月ほど、どう過ごされていたのですか?」
彼は前より幾分か落ち着いた様子で告げる。その言葉にインカさんとアクアの姿が浮かんだ僕はフッと笑うと「とても楽しかったよ。」と答えた。
「そうですか…不自由はございませんでしたか?」
「うん…前にもお世話になったインカさんの所にいたから気持ち的には楽だったかも…。モリオンのことはずっと気掛かりだったけどね、モリオンの様子はどう?」
僕が一番気になっていたところだ。モリオンは次期魔王らしく成長しているだろうか。
僕の言葉にネフライトは困ったように笑うと「ええ…ひと月前に比べたら多少は落ち着きました。しかし…。」と言い淀む。
「しかし…?」
やはり何かあったのだろうか…モリオンの名前が出てきてからネフライトの様子が若干おかしくなったのは気付いたが何があったかまでは分からない。
「モリオン様はショウ様が居なくなってから暫くは部屋に閉じこもり、こちらの問いにも全く応えては下さいませんでした。しかし数日経った頃、人が変わった様に自ら政務を執り仕切る様になったのです。始めはその変化に我々も驚きはしましたが以前とは比べ物にならない程しっかりと役割をこなされ、その姿は次期魔王様に相応しいと思うほどでした。」
ネフライトの言葉に僕の選択は正しかったのだとホッと吐息を吐く。
「そっか…。モリオン、立派に政務を仕切ってるんだね。」
「はい、政務は立派にこなされていますが…それだけなのです。」
「えっ…?」
「モリオン様は以前の様に感情を露わにすることもなく、ただ政務と日々を過ごしているだけなのです。」
「どっどういうこと⁉︎」
次期魔王としての自覚を持ったんじゃ…⁉︎
「今も必要最低限の食事と睡眠しか取らず、黙々と仕事をなさっています。ショウ様…私、個人的なことを言えば敵に塩を送りたくはありません。しかし今のモリオン様を放っておけば取り返しのつかないことになりそうで心配にもなります。一度、モリオン様の今後のことについて魔王様と話し合ってみてはいかがですか…?」
「ここは…?」
「こちらは別棟の一室になります。本館に入られますとモリオン様に気付かれてしまいますので…。」
ああ、そうか…モリオンに気付かれた元も子もないもんね。
「どうぞ、お掛けください。」
そう言われ僕はソファーに腰掛けるとネフライトと対峙する。こうやって彼を見るのも久しぶりだ。彼も同じ様に思ったのか僕の存在を懐かしむように微笑む。
「…この1ヶ月ほど、どう過ごされていたのですか?」
彼は前より幾分か落ち着いた様子で告げる。その言葉にインカさんとアクアの姿が浮かんだ僕はフッと笑うと「とても楽しかったよ。」と答えた。
「そうですか…不自由はございませんでしたか?」
「うん…前にもお世話になったインカさんの所にいたから気持ち的には楽だったかも…。モリオンのことはずっと気掛かりだったけどね、モリオンの様子はどう?」
僕が一番気になっていたところだ。モリオンは次期魔王らしく成長しているだろうか。
僕の言葉にネフライトは困ったように笑うと「ええ…ひと月前に比べたら多少は落ち着きました。しかし…。」と言い淀む。
「しかし…?」
やはり何かあったのだろうか…モリオンの名前が出てきてからネフライトの様子が若干おかしくなったのは気付いたが何があったかまでは分からない。
「モリオン様はショウ様が居なくなってから暫くは部屋に閉じこもり、こちらの問いにも全く応えては下さいませんでした。しかし数日経った頃、人が変わった様に自ら政務を執り仕切る様になったのです。始めはその変化に我々も驚きはしましたが以前とは比べ物にならない程しっかりと役割をこなされ、その姿は次期魔王様に相応しいと思うほどでした。」
ネフライトの言葉に僕の選択は正しかったのだとホッと吐息を吐く。
「そっか…。モリオン、立派に政務を仕切ってるんだね。」
「はい、政務は立派にこなされていますが…それだけなのです。」
「えっ…?」
「モリオン様は以前の様に感情を露わにすることもなく、ただ政務と日々を過ごしているだけなのです。」
「どっどういうこと⁉︎」
次期魔王としての自覚を持ったんじゃ…⁉︎
「今も必要最低限の食事と睡眠しか取らず、黙々と仕事をなさっています。ショウ様…私、個人的なことを言えば敵に塩を送りたくはありません。しかし今のモリオン様を放っておけば取り返しのつかないことになりそうで心配にもなります。一度、モリオン様の今後のことについて魔王様と話し合ってみてはいかがですか…?」
12
お気に入りに追加
1,522
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
幼馴染の勇者が一般人の僕をパーティーに入れようとするんですが
空色蜻蛉
ファンタジー
羊飼いの少年リヒトは、ある事件で勇者になってしまった幼馴染みに巻き込まれ、世界を救う旅へ……ではなく世界一周観光旅行に出発する。
「君達、僕は一般人だって何度言ったら分かるんだ?!
人間外の戦闘に巻き込まないでくれ。
魔王討伐の旅じゃなくて観光旅行なら別に良いけど……え? じゃあ観光旅行で良いって本気?」
どこまでもリヒト優先の幼馴染みと共に、人助けそっちのけで愉快な珍道中が始まる。一行のマスコット家畜メリーさんは巨大化するし、リヒト自身も秘密を抱えているがそれはそれとして。
人生は楽しまないと勿体ない!!
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

俺は勇者のお友だち
むぎごはん
BL
俺は王都の隅にある宿屋でバイトをして暮らしている。たまに訪ねてきてくれる騎士のイゼルさんに会えることが、唯一の心の支えとなっている。
2年前、突然この世界に転移してきてしまった主人公が、頑張って生きていくお話。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!


禁断の祈祷室
土岐ゆうば(金湯叶)
BL
リュアオス神を祀る神殿の神官長であるアメデアには専用の祈祷室があった。
アメデア以外は誰も入ることが許されない部屋には、神の像と燭台そして聖典があるだけ。窓もなにもなく、出入口は木の扉一つ。扉の前には護衛が待機しており、アメデア以外は誰もいない。
それなのに祈祷が終わると、アメデアの体には情交の痕がある。アメデアの聖痕は濃く輝き、その強力な神聖力によって人々を助ける。
救済のために神は神官を抱くのか。
それとも愛したがゆえに彼を抱くのか。
神×神官の許された神秘的な夜の話。
※小説家になろう(ムーンライトノベルズ)でも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる