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第3章
81. 説教
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「ショウ…説明してもらおうか。」
アクアを寝かし付けた後、僕はそっと部屋から出て急ぎ足でインカさんの元へと向かう。仁王立ちのインカさんに見下ろされながら僕は身を小さくしながら恐る恐る口を開いた。
「あっあの…約束を破って街を出てしまい申し訳ありませんでした…もうしません。」
恐怖のあまり自分のズボンをギュッと握りしめながら謝罪するとハァ~と溜息を吐かれた。
「…ショウ、謝罪は後だ。理由を言ってくれ。」
呆れたような声色にビクッとする。
「アクアを街に誘ったのは僕です…。アクアは人型になってからまだ街に行ったことがなかったので、その姿で街に行かせてあげたかったんです。」
実際はそれだけではなかったが、アクアを連れて行きたいという想いは本当なのでそれを伝える。
「しかし、街に行くなら俺がいる時に、と言っていただろう?」
「はい…でも何度か街に出掛けて、これなら僕でもアクアを守ってやれると思ったんです。」
「だが…もしものことを考えなかったのか?」
「全く考えなかったわけではありません…でも、その時は僕が身を呈して守るつもりだったんです。しかし安易な考えだったと今は反省しています…今回は何もなく済みましたが、何かあってからでは遅いですから…。息子さんを危険な場所に連れて行って申し訳ありませんでした…。」
ただ僕は色んな経験をアクアにして欲しい、という想いだけだった。しかし、インカさんにとっては言い訳にしか聞こえないだろう。今回はたまたま何もなく済んだが、彼との約束を破ってまでアクアを危険な場所に連れて行ったことには変わりない。
一見、安全そうな街中でも沢山の危険が潜んでいる。予想外に馬車が突っ込んできたり、たまたま食べた物で食中毒を起こしたり…。安全だと思い込んでいるもの程、危ないのだ。
「ショウは俺がアクアを街に連れて行ったことだけで怒っていると思っているのか?」
えっ…?
「…はい。」
彼は真っ直ぐ僕を見据えると「それは違う。」と口にした。
「俺は…ショウ自身が自分のことをどうでもいいと思っていることが許せないんだ。さっきも自分でアクアに何かあれば自分が、と言っていたが俺は2人共が大切なんだ、だから自分はともかく他の人を、という考えを出来るだけ持たないで欲しい。それがショウの良いところなのは十分分かっているが俺はそんな君がいつか自分の命を他の人の為に差す出すんじゃないかと心配なんだ。今の君は何かに逃げる様にココに来た、だから精神的に追い詰められる何かがあったんだと俺は推測している。そんな君がアクアと共に危険な目に遭えば、自分を差し置いてアクアを助けようとするだろう。それで君が命を失えば残された者はどう思う?前向きに考えてくれればいいが、そうじゃないかもしれない。今のアクアならきっと自分のせいで…と思うだろう。俺だってそうだ、なんでそこに俺が居なかったんだろうと後悔すると思う。だから、そんなことが起こり得ることは極力無くしたい。ショウ…俺の言いたいことは分かるか?」
アクアを寝かし付けた後、僕はそっと部屋から出て急ぎ足でインカさんの元へと向かう。仁王立ちのインカさんに見下ろされながら僕は身を小さくしながら恐る恐る口を開いた。
「あっあの…約束を破って街を出てしまい申し訳ありませんでした…もうしません。」
恐怖のあまり自分のズボンをギュッと握りしめながら謝罪するとハァ~と溜息を吐かれた。
「…ショウ、謝罪は後だ。理由を言ってくれ。」
呆れたような声色にビクッとする。
「アクアを街に誘ったのは僕です…。アクアは人型になってからまだ街に行ったことがなかったので、その姿で街に行かせてあげたかったんです。」
実際はそれだけではなかったが、アクアを連れて行きたいという想いは本当なのでそれを伝える。
「しかし、街に行くなら俺がいる時に、と言っていただろう?」
「はい…でも何度か街に出掛けて、これなら僕でもアクアを守ってやれると思ったんです。」
「だが…もしものことを考えなかったのか?」
「全く考えなかったわけではありません…でも、その時は僕が身を呈して守るつもりだったんです。しかし安易な考えだったと今は反省しています…今回は何もなく済みましたが、何かあってからでは遅いですから…。息子さんを危険な場所に連れて行って申し訳ありませんでした…。」
ただ僕は色んな経験をアクアにして欲しい、という想いだけだった。しかし、インカさんにとっては言い訳にしか聞こえないだろう。今回はたまたま何もなく済んだが、彼との約束を破ってまでアクアを危険な場所に連れて行ったことには変わりない。
一見、安全そうな街中でも沢山の危険が潜んでいる。予想外に馬車が突っ込んできたり、たまたま食べた物で食中毒を起こしたり…。安全だと思い込んでいるもの程、危ないのだ。
「ショウは俺がアクアを街に連れて行ったことだけで怒っていると思っているのか?」
えっ…?
「…はい。」
彼は真っ直ぐ僕を見据えると「それは違う。」と口にした。
「俺は…ショウ自身が自分のことをどうでもいいと思っていることが許せないんだ。さっきも自分でアクアに何かあれば自分が、と言っていたが俺は2人共が大切なんだ、だから自分はともかく他の人を、という考えを出来るだけ持たないで欲しい。それがショウの良いところなのは十分分かっているが俺はそんな君がいつか自分の命を他の人の為に差す出すんじゃないかと心配なんだ。今の君は何かに逃げる様にココに来た、だから精神的に追い詰められる何かがあったんだと俺は推測している。そんな君がアクアと共に危険な目に遭えば、自分を差し置いてアクアを助けようとするだろう。それで君が命を失えば残された者はどう思う?前向きに考えてくれればいいが、そうじゃないかもしれない。今のアクアならきっと自分のせいで…と思うだろう。俺だってそうだ、なんでそこに俺が居なかったんだろうと後悔すると思う。だから、そんなことが起こり得ることは極力無くしたい。ショウ…俺の言いたいことは分かるか?」
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