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第3章
80. 沈黙
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そして食事も終盤に差し掛かる頃、インカさんが「ショウ…いつまでもここに居てくれていいんだぞ?」と突然、口にする。窺うように見つめてくるその目には切願、期待、愛欲などが混じっている様に見える。
僕は少し考えた後「…インカさん、ありがとうございます。また気持ちが決まったらお伝えしますね。」と微笑み、敢えてインカさんの誘いに曖昧な返事をした。
本来はここで出て行くべきなんだろう。
だが彼がここまで言ってくれる手前、それでも出て行きます、など僕の口からは到底言えなかった。自分でもこんな優柔不断な態度を取ること自体がそもそも迷惑だと分かっているのに、もう少し城に戻るまでの心構えが欲しいと何処か言い訳をする自分がいた。
夕食も終わり、食後の紅茶をインカさんに出しているとアクアが目を擦りながら起きてきた。
「ママ~!お腹空いたぁ…あっ!パパおかえりなさい!」
アクアはインカさんに気付くとギュッと抱き着く。
「ああ、ただいま。ゆっくり眠れたか?今日ははしゃぎ過ぎたみたいだな?」
「うん、街にお買い物に行ってサファお兄ちゃんにも会ったんだよ!」
「…街に出たのか…?」
インカさんは驚いたようにアクアを見つめる。
「うん!パパにお土産もあるんだよ、部屋にあるから取ってくるね!」
そう言ってアクアが席を外した瞬間、インカさんに何故連れて行ったんだ、と無言で見つめられる。僕は彼から目を逸らし、テーブルを見つめた。
「ショウ、後で話がある。」
感情のない声で言われ、ビクッと肩が揺れた。
インカさんは奥さんが亡くなったことで唯一の肉親であるアクアのことをとても大切にしている。親として当たり前のことかもしれないが、自分がいない所で危険な目に遭わないようにと、街に行くのも自分がいる時にだけ行ってくれ、と言われていたのである。それを今回、破ってまで街に出たことに怒っているのだろう、僕は自業自得かと無言で頷いた。
「パパ、見て!」
アクアが買ってきた洋服を拡げる。あのライオンの絵柄が描かれたパジャマだ。
「これね、パパとママと僕とお揃いなの!これでまた一緒に寝よ?」
アクアが洋服を自分の胸に充てながらお願いしてくる姿にインカさんは嬉しそうに笑うと「ああ、そうだな。」と応え、2人でお風呂に向かって行く。
僕は「いってらっしゃい。」と2人を見送りながら、先程のインカさんの様子を思い出していた。
どうしよう…あれはかなり怒ってた…よね。
今更済んだことを後悔しても遅いが、この後訪れる時間に僕の心は激しく動揺していた。
僕は少し考えた後「…インカさん、ありがとうございます。また気持ちが決まったらお伝えしますね。」と微笑み、敢えてインカさんの誘いに曖昧な返事をした。
本来はここで出て行くべきなんだろう。
だが彼がここまで言ってくれる手前、それでも出て行きます、など僕の口からは到底言えなかった。自分でもこんな優柔不断な態度を取ること自体がそもそも迷惑だと分かっているのに、もう少し城に戻るまでの心構えが欲しいと何処か言い訳をする自分がいた。
夕食も終わり、食後の紅茶をインカさんに出しているとアクアが目を擦りながら起きてきた。
「ママ~!お腹空いたぁ…あっ!パパおかえりなさい!」
アクアはインカさんに気付くとギュッと抱き着く。
「ああ、ただいま。ゆっくり眠れたか?今日ははしゃぎ過ぎたみたいだな?」
「うん、街にお買い物に行ってサファお兄ちゃんにも会ったんだよ!」
「…街に出たのか…?」
インカさんは驚いたようにアクアを見つめる。
「うん!パパにお土産もあるんだよ、部屋にあるから取ってくるね!」
そう言ってアクアが席を外した瞬間、インカさんに何故連れて行ったんだ、と無言で見つめられる。僕は彼から目を逸らし、テーブルを見つめた。
「ショウ、後で話がある。」
感情のない声で言われ、ビクッと肩が揺れた。
インカさんは奥さんが亡くなったことで唯一の肉親であるアクアのことをとても大切にしている。親として当たり前のことかもしれないが、自分がいない所で危険な目に遭わないようにと、街に行くのも自分がいる時にだけ行ってくれ、と言われていたのである。それを今回、破ってまで街に出たことに怒っているのだろう、僕は自業自得かと無言で頷いた。
「パパ、見て!」
アクアが買ってきた洋服を拡げる。あのライオンの絵柄が描かれたパジャマだ。
「これね、パパとママと僕とお揃いなの!これでまた一緒に寝よ?」
アクアが洋服を自分の胸に充てながらお願いしてくる姿にインカさんは嬉しそうに笑うと「ああ、そうだな。」と応え、2人でお風呂に向かって行く。
僕は「いってらっしゃい。」と2人を見送りながら、先程のインカさんの様子を思い出していた。
どうしよう…あれはかなり怒ってた…よね。
今更済んだことを後悔しても遅いが、この後訪れる時間に僕の心は激しく動揺していた。
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