次期魔王の教育係に任命された

第2章

51. 対面

中に入るとすぐに居住スペースがあり、奥にキッチンらしき場所がある。だいたい15畳くらいの広さだ。

「村長、インカだ。客人を迎え入れたので挨拶をしたい。」

インカさんがそう声を掛けると椅子に腰掛けるライオンの獣人がゆっくりとこちらを向いた。

「おぉ、インカか。客人とは珍しい…。それも獣人ではないと。」

ライオンの獣人にマジマジと見つめられ緊張してしまう。いくらお爺ちゃんといってもそこは百獣の王らしく鋭い目つきである。

「あっあの…初めまして、ショウ・サトーと申します。」

「…そう硬くならんでも良い、取って食ったりせん。それにインカが連れてくるぐらいだ、信用しておるよ。ワシはロードという。客人よ、歓迎するぞ。」

そう声を掛けてもらい一先ずホッとする。

「それよりショウとやら、そなたはワシが今まで見た魔人とは少し違うようだな？何か特殊な種族なのか？」

きっとロードさんにとっては好奇心から聞いてきたのだろうが、僕は返答に困る。何故なら、この姿は仮のもので限りなく人間に近い見た目なのだ。だから何の種族かと聞かれると何にも当て嵌まらない。

「あっ…えーと…。」

僕が言い淀んでいるとロードさんは空気を読んでか「まぁ良い。言いにくいならこれ以上聞きはしない。しかし、もしそなたがこちらに危害を加えるようなことがあれば容赦はせん、それだけは肝に命じてくれ。」と告げる。

「はっはい！それは勿論です。少し滞在した後、すぐに立ち去りますので…！」

本当は森を探索したらすぐに帰るつもりだった。想定外にここまで来ることになってしまったがインカさんの家に招かれたら頃合いをみてお暇しよう。

「ショウ…すまない、私が無理に連れてきてしまったばかりに…。」と申し訳なさそうに謝ってくるインカさんに「いえ！僕も森を抜けれて助かったので…！」と慌てて否定する。感謝こそすれ、迷惑だなんて思ってもない。

「村長、ショウはこの先の森で迷子になって怪我をした息子を助けてくれた恩人だ、決して怪しい人物ではないことを私が保障する。」

インカさんはそう力強く進言してくれた。するとロードさんはフッと笑った後「了解した。」と告げ、なんとか僕はこの村に滞在できることになった。






それからロードさんの家を後にし、インカさんとアクアの家に到着した。アクアは到着するなりご飯のお皿を咥えインカさんに催促をする。

「ハハッ！アクア、そんなにお腹が空いてたんだね。」

僕はその光景に耐え切れず吹き出していると「アクア、はしたないぞ。キチンと座りなさい。」とインカさんは溜息を吐いた後、アクアのお皿にご飯を入れてあげていた。