次期魔王の教育係に任命された

ミイ

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第2章

40. 笑顔

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それからグロッシュラーのことをアルマンディンに任せ、僕は自室に戻ってきた。

「(モリオンが戻ってくるまでまだ時間がある…。)」

こんな時、モリオンがいたらグロッシュラーのことを忘れておけるのに…。

僕はベッドに突っ伏すと、やり切れない気持ちを抱えたまま目を閉じた。






「…ョウ、ショウ!」

「んん…。」

どうやら眠ってしまっていたらしい。目をこすりながら戻って来たモリオンに「おかえり。」と声を掛ける。

「ただいま!ゆっくりできたみたいで安心しました!」

僕が眠っていた姿を見てモリオンは安心したように微笑む。いつもより彼の笑顔が眩しく感じる。やはり先程の出来事で僕の心は弱っていたらしい…。僕はムクッと身体を起こすとモリオンにギュッと抱き着いた。

「…!どうしたんですか?」

モリオンはビックリしながらも僕を抱き締め返してくれる。モリオンから抱き締められるのはしょっちゅうだが、僕からは滅多に抱き着いたりはしない。

「ううん、久しぶりにモリオンと離れて寂しかったのかも。」

「フフッ、ショウがそんなに寂しがりだったなんて知らなかったなぁ。これからは出来る限り一緒にいるからね?でも実践練習だけは我慢してね。」

その言葉に頷きながらどっちが年上なのかと心の中で笑う。

「明日は外に出る予定もないからずっと一緒にいれるね。」

モリオンは嬉しそうに再び僕を強く抱き締めると額に口付けた。

「…モリオン、ありがとう。」

彼の気遣いが嬉しい。

フッと微笑み返すと背中に回っていた彼の手が前へと移動する。

「…?モリオン?」

「ショウ、お腹空きました。」

「えっ…えっ?今?」

突然の展開に驚く。

そりゃ…食事はしないとダメだけど…!

「討伐を頑張ったら、お腹ペコペコになっちゃって…少しだけいいでしょ?」

「えっ…あっでも、まだ夕方…。」

断ると彼は頰を膨らまし「夜じゃないとダメなの?」と不服そうだ。

「だって…僕その後、使い物にならなくなるし…。」

「…。」

するとモリオンも納得したのかシュンとしながら僕から手を離す。

「仕方ないなぁ…食事のあとショウは動けなくなるし…あんなショウを他の人になんか見せれないよ。」

「うぅ…ゴメンね。」

「…いいよ、じゃあ夕食に行こ!食べ終わったら僕にミルクちょうだいね。」

モリオンは僕を立ち上がらせると待ち切れないとばかりに手を引いた。
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