次期魔王の教育係に任命された

第2章

37. 気遣い

ノックをすると中からすぐに返事があった。

「サトーです。モリオンがインペリアルさんに会いたいと言っているんですが今、大丈夫ですか？」

そう扉の外から声を掛けるとバタバタと音がしインペリアルさんが慌てて出てくる。

「モリオン様が俺に⁉︎」

その顔は嬉しそうな、それでいて照れているような表情をしている。そしてモリオンの姿を見つけると片膝をついて頭を下げた。

「モリオン様、お会いできて光栄です。我が名はインペリアル。以後お見知り置きください。」

「うん、こちらこそ。」

笑顔でやり取りしている2人を見て僕の時とは大違いだと思いながらその光景を眺める。

「インペリアル、僕に剣術を教えてくれない？剣士ってカッコいいよね。」

そう言うモリオンにインペリアルは感動したようにテンションを上げる。

「勿論でございます！ネフライト様をはじめ他4人でモリオン様の勉学や体術などを指導させて頂きます。」

「そうなんだ！なら、安心だね。後でネフライトにも言っとくよ。」

「はい、きっとネフライト様が上手く時間を分けて下さると思います。」

「良かった…。あっ急に来てゴメンね、さぁショウ戻りましょう。」

そう言って僕の手を掴むとモリオンは再び走り出す。

「あっ、えっ？」

何故か再びモリオンに引かれるように走り去ることになった。






そしてモリオンは自室に着くとフゥ～と言いながら僕の手を離す。僕の「…あんなに急がなくたっていいんじゃないの？」という言葉にモリオンはニコッと笑うと「だってショウはインペリアルと仲悪いんでしょ？」と言う。

なんで知ってるんだ…。

「いや、それは違うよ。仲は悪くないから。」

今後のインペリアルさんの印象を悪くしない為に嘘をつかなければ。

「えっ、そうなの？ネフライトが言ってたよ。」

えぇ⁉︎ネフライトが⁉︎どっどうしよう…本当のこと言うべき…？

「えっ…そうなの…いや、うん…悪くはないとは思うんだけど…。」

「ふーん…まぁ良いけど。でも、もしインペリアルに苛められたら僕に言ってね！どうにかするから！」

そう笑顔で告げられ苦笑いになる。親切心なのは分かっているが、幼いとはいえインペリアルにとってモリオンは格上の相手。そのモリオンに命令されれば彼ならどんなことだって受け入れるだろう。

「うん…ありがとう。」