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第2章

30. 5年後

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5年後ー。








「ショウ様、そろそろモリオン様の第一次性徴が起きる時期ですね。」

「そうですね、もうそんな時期か~。」

あれから5年程の月日が経ち、魔王城は相変わらず平穏な日々だった。グロッシュラーの襲撃はあの1回以降起こることはなく、その代わり定期的にグロッシュラーが僕のところに現れるようになった。

アルマンディン曰く"兄に恋心というものが分かるまで付き合ってあげて下さい"とのことだ。

グロッシュラーは僕のところに訪れる度に手土産に花束をくれたり愛の言葉?を囁いたりする。それもすべてアルマンディンからアドバイスされるそうで、内容まで僕に報告してくる。

「貴方の側にいるにはこういうことをしなければならないのですか?」と未だによく分かっていない様子を見せる時もあるが、そんなところも最近は可愛く思えてきた。

そして今日もグロッシュラーが現れる。

「ショウ様、愛しています。」

「あぁ、はい。ありがとうございます。」

お決まりの台詞と花束、片膝ポーズが板に付いてきた。

「グロッシュラーも手馴れてきましたね。」

「はい、この5年間やり続けましたから。」

そうなのだ、グロッシュラーは定期的に現れるとこの健気な行為を続けている。その姿に何度か絆されそうになったのは事実だが、モリオンのことを考えるとそういうことはしてはいけないとセーブしてしまう。

「今日もありがとうございます。また部屋に飾りますね。」

「いえ、当然のことをしたまでです。」

そんなやり取りをした後、それを側から見ていたネフライトが苛立たしげに「ショウ様、そろそろこちらへ。」とドアの外へと促す。

僕はグロッシュラーにちょっとゴメンね、と言い残すと生命の樹木へ向かった。今からモリオンを第一次性徴の為に生命の樹木に預けなければならない。

神様が残した説明書のお陰で第一次性徴については知ることが出来たが、正直なところ詳しくは分からない。人間とその成長具合が違うというのは書かれていたが、この第一次性徴でモリオンが何処まで成長するのかは書かれていなかった。あと、驚いたことにモリオンは5年という月日が経っても生まれたままの赤ちゃんの姿から成長しなかったのだ。なので、歩いたりも出来ないし、言葉も発せない。なんとなくこちらが言ったことを理解しているような節はあったが、相変わらず乳児のままの姿であった。

「(これが人間と魔族の違いなのかなぁ…?)」

僕はモリオンが成長しないことに不安を感じ、始めはネフライトに相談した。すると彼も戸惑っていた。彼の種族は年相応に育ち、ある一定の時期を迎えると成長が止まり、更に歳を重ねると一気に老け込む種族だという。

その点でモリオンとは違う。

次に魔王様に相談するとそれはすぐに解決した。彼の種族はこんなもの、らしい。普通は母親の魔力を貰い第一次~第三次性徴をするそうだが、モリオンの場合は母親役は僕で母親以上の役割ができない場合は生命の樹木に預けるしかないのだという。

魔王様からの説明を聞き、そうなんだと納得するしかなかった。なんせ僕はその辺りは何も知らないど素人で、そう言われれば、そう納得せざるを得ないからだ。
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