次期魔王の教育係に任命された

第1章

28. 他人事

「えーっと…。」

考えても仕方ない、ハッキリ伝えなければ解決しないのだ。僕は意を決したように口を開く。

今すぐ眷属にはなれないこと、それ以前に恋人にもなれないこと。今はモリオンの世話を優先したいこと。

全部説明し終わり、なんとか言い切った、と再びグロッシュラーを見つめると残念そうな顔をしつつもその目はキラキラと輝いている。

「恋人とは何でしょうか？それに次期魔王様のお世話が終わったら考えて頂けるのですか？」

「えっ…えぇ…？」

根本的な問題を聞いてくる。僕は何て答えればいいか分からなくなりアルマンディンに視線を向ける。アルマンディンは困ったようにハァーと溜息を吐くと「申し訳ありません。」と答えた。

「兄様、恋人とは恋しく思う人、相思の間柄にある相手方のことをいいます。ショウ様、恋人という存在は我々にとって不必要なモノだったので兄が分からないのも無理はありません。私も知識としてはありますが、恋人というより食糧という概念が強い為、作る必要がなかったのです。さらに兄はそんな存在よりも私に依存しておりましたので余計にピンと来ないのでしょう。」

アルマンディンはそう言うと僕に近付き、耳元で囁く。

「兄自身も何故こんなにもショウ様のことが気になるのか分かっておりません。食糧以上に貴方が側に居てくれることに拘っております。私が思うにそれは恋情と同じものだとは思いますが、兄は貴方を口説く言葉が見つからないのです。」

そんなこと言われても僕にはどうしようもない。

「兄様、ショウ様は兄様とは一緒にいれないと言っています。潔く諦めてください。」

「そっ…そんな！」

「兄様、ショウ様はモリオン様のお世話の為にここに居て下さってるのです。そんな中で兄様と一緒にいれるはずないでしょう。貴方は早く跡継ぎを作って下さい、私の気が休まりません。」

アルマンディンが容赦なくグロッシュラーに告げる。

「跡継ぎ…跡継ぎか…。それなら私はサトー様と作る！それなら文句はないだろう⁉︎」

「えぇ⁉︎」

なんでそうなるの！

「それなら文句はありませんが…。」

いや、アルマンディンまで！

「サトー、大変だな。」

魔王様！他人事だと思って…！

僕の焦りが伝わったのか僕の腕で眠っていたモリオン「うぅ～。」と唸る。

「魔王様…どうしたら…。」

「うむ…そうだな。我としてもサトーがいなくなるのは困る。一先ずはモリオンの成人が済んでから、どうするべきか考えて欲しい。」

「そうですよね…。」

僕は再び結論に困ることになったが、結局、決意は変わらなかった。