次期魔王の教育係に任命された

ミイ

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第1章

24. ネフライト視点

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忘れもしない今から32年前、奥方様がご健在であった頃、彼女は次期魔王様を懐妊し魔界はお祭り騒ぎとなった。安定期に入り、町中をあげてパレードも行われ、このまま順調に次期魔王様を迎えれると誰もが思っていた。

しかし、出産間近となった頃、彼女は高熱に倒れ、国中の医師や魔術師がその治療にあたったが原因不明の病は結局奥方様を還らぬ人にした。

彼女は最期、自分の命か子供の命かを天秤に掛けられ、子供の命を優先し自らその命を懸けて子供を守ったのである。

それから奥方様の身体から生まれた次期魔王様は生まれてくるには不完全な状態だった為、生命の樹木に預けられ、その身体を養生することになった。





それから30年程経ったある日、突然魔王様に空き部屋を来客用に支度する様、言付けられる。なんでも次期魔王様のお世話係が訪れる"かも"しれない、ということらしい。正直、本当に訪れるのか半信半疑だったが、その数年後、私は衝撃的な出逢いをするのだった。



私は空き部屋を清掃、準備をしながら時期に訪れるかもしれないお世話係のことを考える。

どんな人が現れるのだろう…。
次期魔王様に相応しい人物なのだろうか…。
…いや、本当に訪れるか分からない人物を思っても仕方がない…。

そんな想いを巡らせながら私は部屋の準備を続けた。






それから更に数年経ち、魔王様からお世話係が訪れたという知らせを受けた。

その名も"ショウ・サトー様"というらしい。

彼を迎えに魔王様の部屋へ向かっていると、部屋の前でその者らしき人物を見かける。声を掛けようとしたその瞬間、その姿に言葉を忘れ見惚れてしまう。

魔王様と同じ漆黒の髪に黒真珠のような瞳。

その見た目だけで私より…更に魔王様と同等の力を持ち得ているのが窺える。

さすが魔王様が選んだ方である…なるべく冷静に失礼の無いようにご案内しなければ…。

「ここにいたのですね。貴方が次期魔王様の教育係ショウ・サトー様ですか。私はネフライトと言います、今後何かと関わり合うので覚えて下さい。」

なんとか普段通りの声を出すことが出来た。

失礼ではなかっただろうか?

相手を窺うと「はい、初めましてショウ・サトーです。ネフライト様、宜しくお願いします。」と頭を下げられた。

なんてことだ…!
これほどの魔力を持ちながら礼儀正しいとは…。私の周りには自分の魔力の高さに比例して態度もデカイ者が多い。

私は慌てて頭を上げてもらうように頼んだ。

この方なら次期魔王様のお世話、教育をしっかりして頂ける、その時私はそう確信した。





しかし数日後、私は衝撃的な現場に遭遇する。

無事、次期魔王であるモリオン様が誕生しショウ様とも少しずつ会話が出来るようになった頃、ショウ様に相談があると部屋に招き入れられた。突然のことにドギマギしていると彼はいきなり上半身裸になったのである。

白くて美しい肌に乳首が赤くぷっくりと腫れ上がり、その光景が異様で尚且つ艶かしくて思わず凝視してしまう。

一瞬、誘われているのだろうか、と思ったが、その考えは杞憂に終わる。しかし、それからの私は今までの自分では考えられないような行動とセリフを言ってしまうのである。







その後、ショウ様への対応を改め冷静に対応するように心掛けていた私はショウ様がグロッシュラーに攫われたと聞いた瞬間、あんなことをしておいて今更ながら彼への気持ちに気付く。先日のことは彼の魔力にあてられたのだと無理やりこじ付けたが、彼が攫われた知った今、いてもたってもいられないこの気持ちは疑いようがない。

それにうかうかもしていられない。彼はモリオン様が成人したらこの国を去ってしまうおつもりだ。どうにか繋ぎ止めなければ。

しかし、今はそれよりも彼の奪還が優先である。

漸くグロッシュラーと共にいる彼の姿を発見した時は血の気が引いた。衣類をビリビリに引き裂かれ、今にも襲い掛かられそうな、いやもう襲われたのかもしれないと思える程に乱れている。ショウ様は気付いていなかったと思うが、情事後と思わせるような色っぽい表情をしていた。

思わずグロッシュラーに殴りかかりショウ様の止めがなければ、そのまま力任せに殴り続けていただろう。

後はアルマンディンに任せ、彼を抱き上げ魔王城に帰還する。彼は終始、何か言おうとしていたが私が有無を言わせぬ雰囲気にしたことで黙ってされるがままになっていた。

魔王城で出迎えた二人が何も言わなかったのは事前に私の行動には触れるなと言っておいたからだ。むしろ応援さえしてくれる彼らをありがたく思う。

一先ずショウ様を自室に届け、私はこれからグロッシュラーをどうしてやろうかと模索するのであった。

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