次期魔王の教育係に任命された

第1章

25. 再会

着替えが済み、廊下へ出るとネフライトが待っていた。

「では、参りましょう。」

そう言って彼は当たり前のように僕の腰を抱き、魔王様の部屋へ向かおうとする。

「(えっ…えっ⁉︎なんで僕、ネフライトに腰抱かれてるの⁉︎)」

訳が分からず、ソワソワしながら歩く。歩きながら彼の方をチラッと見たが、彼は真っ直ぐ前を向いていて一度も目が合うことはない。

魔王様の部屋に着き、中に入らせてもらうと凄い勢いでモリオンが抱き着いてきた。泣いてはいないものの僕の服を握り締め、離すまいとしている。

「ゴメンね、モリオン。寂しい思いをさせて…。」

僕はモリオンを抱え直すとギュッと抱き締め返し、額にそっと口付けた。

「サトー、無事か？」

僕とモリオンが落ち着いたのを見計らって魔王様に声をかけられる。心配からそう声を掛けてくれているのはわかっているが、グロッシュラーにアレコレされた僕としてはドキリとしてしまう。

「(アレを何かされたと言っていいのかな…？ただ吸血されたことは事実だし、それだけは伝えといたほうが…。)」

そう結論付けた僕は吸血の事実だけを伝える。すると「それ以外に何かされなかったか？例えば変なものを飲まされたとか。」と聞かれたので否定しておく。

「吸血されただけなら、大丈夫だろう。サトーは見た目から分かる通り魔力が高い。それならグロッシュラーも血が飲みたいと言うのは予想できる。やっかいなのはグロッシュラーの血を体内に入れられたら、だ。」

何度か吸血されたが、特に異常は見当たらない。

「…どうなるんですか？」

まさか僕まで吸血鬼になるとか…？

「奴の眷属になる。眷属になれば主人のモノと判断され、食糧になったり侍従としてこき使われたりする。主人の指示なしでは自由に何処へも動けない。」

えっ…じゃあグロッシュラーはあれだけ僕を自分のモノにするって言ってたのにそれをしなかったってこと…？なんで…いくらでもチャンスはあったのに…。
いや、でも僕には関係ないか…きっと僕の気持ちが分からないグロッシュラーには一生分かってもらえない。

「…それは大変ですね。でも僕は大丈夫です、こうやってモリオンの元に戻れましたし。」

「…そうだな、グロッシュラーはアルマンディンをはじめ、昔から執着心や独占欲が激しい奴だった。これでサトーが奴に気に入られでもしたら色々と大変だっただろう。」

いや、もう手遅れかも…そんなことを思いながら魔王様の言葉に耳を傾けた。