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第1章
21. 溺愛
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僕は彼の出て行った扉を見つめながら「はぁ~…。」と溜息を吐く。そしてベタつく身体をどうしたら良いか途方に暮れた。
次の日、僕の目覚めは最悪だった。結局、あの後ベタつく身体を不快に思いながら就寝することになったからだ。
「(うぅ~…シーツで拭ったけど、なんか嫌だぁ…。)」
シャワーでも浴びたいと思いつつ、これからどうするべきか思案する。
1番に思ったのはモリオンのことだ。僕がいないことで食事はどうしてるのか、オムツ替えや添い寝はどうしてるのかと思う。
しかし…それ以上にここから逃げ出すことに恐怖を感じてしまっている。意気地無し、と思われるかもしれないが、今まで暴力などに無縁で、ついこの間までただの人間だった僕がいくら創造主にチート能力をもらったとしてもそれを使いこなせるとは思えない。だから、できることなら大人しくこの屋敷で拘束され、ネフライト達が助けてくれるのを待っていたいというのが僕の本音だ。
それから僕はボーっと時計を眺めながらグロッシュラーが来るのを待ち続けた。
夕方…といってもこの部屋には窓がないので壁掛け時計で時間を確認をしただけなのだが、グロッシュラーが現れた。
「ご機嫌よう、サトー様。」
「…はい。」
僕の様子に「暗闇はお嫌いですか?」と聞いてくる。
「しかし、私達は吸血鬼なので夜行性なのです。なので本来、窓も必要ないのですが…。」と周りを見渡す。
「いえ、そういう訳ではないのですが…自分がこれからどうなってしまうのだろうと考えていただけです。」
すると彼は少し考えた後、口を開いた。
「…そうですね、昨日も言いましたが、こう見えて私は無駄な争いは嫌いな太刀なんですよ。弟が私の元に戻ってきてくれるなら貴方に危害を加えるつもりはありません。しかし…あれだけ反対した私を振り切って弟は魔王様の元へ行ってしまった。私は毎日哀しみに暮れています…大切に大切に育ててきた弟なのに…。」
そう言って哀しそうな顔をする。
僕はその表情を見ながら安易にもこの人のことを少し勘違いしていたのかなと思う。始めは魔王様を攻撃した憎っくき敵という認識であったが、彼にとっては弟を取り戻す為の1つの手段であった、ということだ。
「あの…貴方の弟はアルマンディンですか?」
そう聞くと彼は分かりやすく表情を変えた。
「ええ、サトー様もお会いしましたか?可愛かったでしょう?私にとったらもう可愛くて可愛くて!早くこの腕で抱き締めてあげたいのですが、もう何百年も触れていないのです。」
彼の嬉しそうな顔を見ると本当にアルマンディンのことが好きなんだとわかる。
次の日、僕の目覚めは最悪だった。結局、あの後ベタつく身体を不快に思いながら就寝することになったからだ。
「(うぅ~…シーツで拭ったけど、なんか嫌だぁ…。)」
シャワーでも浴びたいと思いつつ、これからどうするべきか思案する。
1番に思ったのはモリオンのことだ。僕がいないことで食事はどうしてるのか、オムツ替えや添い寝はどうしてるのかと思う。
しかし…それ以上にここから逃げ出すことに恐怖を感じてしまっている。意気地無し、と思われるかもしれないが、今まで暴力などに無縁で、ついこの間までただの人間だった僕がいくら創造主にチート能力をもらったとしてもそれを使いこなせるとは思えない。だから、できることなら大人しくこの屋敷で拘束され、ネフライト達が助けてくれるのを待っていたいというのが僕の本音だ。
それから僕はボーっと時計を眺めながらグロッシュラーが来るのを待ち続けた。
夕方…といってもこの部屋には窓がないので壁掛け時計で時間を確認をしただけなのだが、グロッシュラーが現れた。
「ご機嫌よう、サトー様。」
「…はい。」
僕の様子に「暗闇はお嫌いですか?」と聞いてくる。
「しかし、私達は吸血鬼なので夜行性なのです。なので本来、窓も必要ないのですが…。」と周りを見渡す。
「いえ、そういう訳ではないのですが…自分がこれからどうなってしまうのだろうと考えていただけです。」
すると彼は少し考えた後、口を開いた。
「…そうですね、昨日も言いましたが、こう見えて私は無駄な争いは嫌いな太刀なんですよ。弟が私の元に戻ってきてくれるなら貴方に危害を加えるつもりはありません。しかし…あれだけ反対した私を振り切って弟は魔王様の元へ行ってしまった。私は毎日哀しみに暮れています…大切に大切に育ててきた弟なのに…。」
そう言って哀しそうな顔をする。
僕はその表情を見ながら安易にもこの人のことを少し勘違いしていたのかなと思う。始めは魔王様を攻撃した憎っくき敵という認識であったが、彼にとっては弟を取り戻す為の1つの手段であった、ということだ。
「あの…貴方の弟はアルマンディンですか?」
そう聞くと彼は分かりやすく表情を変えた。
「ええ、サトー様もお会いしましたか?可愛かったでしょう?私にとったらもう可愛くて可愛くて!早くこの腕で抱き締めてあげたいのですが、もう何百年も触れていないのです。」
彼の嬉しそうな顔を見ると本当にアルマンディンのことが好きなんだとわかる。
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