悪役令嬢の弟

ミイ

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140. 気持ち

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行きの馬車でサンバックにこんなことを聞かれる。

「なぁ、なんで俺を選んだか聞いてもいいか?」

僕はドキドキしながらこれまでのことを正直に告げた。

セイロンに恋愛感情がわからなくて相談していたこと、比較するのが良いと言われ他に何人か紹介してもらったこと。

僕が他の人達にも会っていたと言うと彼は目を見張って動揺していたが、僕が慌てて「それで自分の気持ちに気付いたんだ!」と言うと浮いた腰を落ち着かせた。

「その中で友達になった人がいるんだけど、その人、実は兄様に憧れていて僕が弟だと分かると兄様を紹介してくれ、って言ってきたんだ。それで僕、兄様を誰にも盗られたくないって気付いて…。」

「そっ…そうか…。でもその人は俺を紹介して欲しいからトルーと友達になったんじゃないのか?」

彼の目は彼女を疑わしげに見ている。

「いや!ペリドット様はそんな人じゃないよ!それに僕が彼女に友達になって欲しいって言ったんだ。だから誤解しないでね⁉︎僕は彼女と良い友人になりたいんだ。」

僕の必死な様子に彼は自身を落ち着かせる様に「フーッ。」と溜息を吐くと「…ペリドット…聞いたことがある名だな。騎士団か?」と聞いてきた。

流石サンバックだ、騎士団のメンバーの名前を把握しているらしい。

「うん、女性だけのグループにいるって。」

「…まぁ騎士団に所属してるくらいだ、彼女を信じるしかないな。」

なんとか納得してくれたようだ。

「それで僕は兄様を彼女に盗られたくないなって思ったんだけど、これがイモーテルやオール様やコールだったらどうかな、って思ったんだ。始めは兄様はイモーテルと同じくらい身近にいた存在だし、兄弟を他の人に盗られたくないだけかもって思ったけど、僕はそれ以上に兄様を支えたいなって思ったんだ。」

「支えたい?」

「うん、兄様は家の跡を継ぐのは僕だって言ったでしょう?でも僕は兄様が本当は継ぎたいのに遠慮しているように思えた。ねぇ兄様、本当にそう思ってるの?」

「…。」

サンバックは押し黙る。しかし「俺はお前のことを思ってだな…。」と呟いた。

「俺は…正式な跡継ぎじゃない。そんな奴が当主になるよりトルーに継がせた方が世間体もいい。」

「本当にそれだけ?」

「…大事なお前の立場を取り上げたくなかった…。」

「兄様…。」

やっと彼の本音が聞けたような気がした。やはり何処か僕に遠慮していたようだ。
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