悪役令嬢の弟

132. スペック

そしてこの半月の間にコールとオール様がそれぞれ数回ずつ訪ねて来た。

彼等の言い分によるとサンバックとイモーテルは毎日のように僕に会えるのに彼等はたまにしか会えない、それによって2人だけの好感度が上がるのは不公平だ、というものだ。確かにそれは言える。よって、2人と僕は時々デートという名の買い物に行くようになった。

まずオール様とはこの2年間のことを話し、現在の仕事についても話をした。オール様は公爵家なので卒業後、家を継ぐ為に今は見習いとして手伝いをしているらしい。「まだ仕事の全てを出来るわけじゃないけどトルー君のことは十分養えるから早く嫁ぎに来てね。」と言われてしまった。

コールの方は侯爵家なので僕より位は低いがそれよりも仕事の規模が違う。教育面で仕事をしているオール様とは違い、コールの家は他国との貿易を中心に行っている。なので、彼は5か国語が喋れるというとても有能な人物であった。「トルー様と肩を並べても恥ずかしくないように頑張りました！」と胸を張っていた。



そしてもう一つ、僕には気がかりな事があった。

イモーテルが今後、僕と対等に話せるかということだ。将来のことを考えると僕は夫婦になったら対等でありたいと思っている。なので勿論、イモーテルともそうなりたいのだ。しかし彼とは軽く10年以上も従者としての関係がある。よって夫婦になっても主従関係が邪魔をしてなかなか夫婦という形が取りづらいのではないかと思ったのだ。

僕はそのことで1人モヤモヤと悩んだのだが結局、本人に聞くしかないと思い、彼にその心配事をぶつけてみた。すると彼は僕の予想を裏切り「口調はすぐに変えることは難しいですが、それ以外はすぐに変えれます。むしろもっとトルー様に触れたいです。」と言われてしまった。僕はその答えに「そっ…そう。」としか答えれずその後は変な空気を味わうことになった。そして僕は逃げるように部屋を飛び出し、サンバックの元に走った。

今日は彼が休みの日だったので部屋にいるはずだ。

早速、彼の部屋に入ると読書をしていたらしく、読みかけの本をそのままにこちらを向く。

「トルー、どうした？」

相変わらず安定の美形具合である。イモーテル、コールは綺麗系、オール様は可愛い系に分類されるがサンバックだけは男らしくカッコいいのだ。僕は一度目を逸らすと何事も無かったかのように笑顔を向けた。