悪役令嬢の弟

125. ライバル宣言

それから次々と来訪者が現れる。この時点で既に彼らの記憶は戻っており、僕のことを温かく迎えてくれた。

ブルーマリーと共に訪れたルート様やホッとしたような表情の生徒会長、少し背の高くなったオール様、相変わらずツンデレで照れ隠しをしてるシトロ、昔と変わらず笑顔のセイロン、前より色気の増したランドモス様そして大切な僕の両親。

「トルーくーん！」

始めに勢いよく抱き付いてきたのはオール様だ。しかし、その体格に驚いた。

「オール様⁉︎身長が…！」

確か僕より低かったはずなのにこの2年で見上げる程に高くなっている。

「そうなんだ！この2年で15cmくらい伸びたんだよ！」

「えっ…凄い…。」

「前は僕がトルー君にこうやって抱き締めてもらってたけど今じゃ僕がトルー君のこと、こうやって包み込めるんだよ？」

彼はそう笑うと僕をギュッと抱き締めた。

その瞬間、

「聞き捨てならないな。」
「聞き捨てなりませんね。」

と2人の声が重なる。

「トルー、お前オール様と抱き締め合う仲なのか？」

「トルー様、オール様とお付き合いされていたんですか？」

そう投げ掛けてくるのはサンバックとコールだ。

「えっ…えーっと…。」

僕は2人の視線に困り果て無言になってしまった。

その時、その場の空気を壊したのはやはりオール様だった。

「そうです！僕達はトルー君が魔法学校に入学した時から図書館でひっそりと抱き合う仲でした！」

「(えぇ⁉︎)」

「トルー君は僕が辛いことがあった時、抱き締めて慰めてくれました、それも何度も。」

「(あっ…まぁ回数的には多かったかもしれないけど…それ全部ヒロイン関係なんだけど…。)」

「それに泣く僕の涙を拭ってくれたり顎クイまでしてくれたんです！」

「(あぁ～…したけど…！したけどさ、ここで言ったらマズイよぉ…！)」

焦る僕の横で案の定、サンバックとコールの目つきが悪くなる。

「そんな仲だとは知らなかったな、なぁトルー？」

そうニヤリと笑うサンバックが怖い。

「いや…まぁうん…事実は事実だけど、きちんとお付き合いは断ったよ？」

「ほぉ…。だそうだが？」

そう言ってサンバックはオール様を睨む。

「トルー君にとって、あれがどうでもいい過去でも僕にとってはそんなことないからね！ねぇトルー君、僕と付き合って？もう約束の期限は過ぎたでしょう？」

オール様はそのまま甘えるように僕の頰に自分の頰をスリスリと擦り付けてくる。

僕はビクッとなりながらも冷静に考えた。

いや、少なくともあの出来事はどうでもいい過去なわけではない。それにオール様が言っている期限というのもブルーマリーの断罪イベントに合わせて僕が設けた期限だ。だからその心配をしなくて良くなった今、僕はタイミングさえ合えば誰とでも付き合えるということになる。

「あっ…そうですね、期限はもうなくなったのでお付き合い自体は出来るのですが、まだ僕、混乱してて…。」

「あっそうだよね、ゴメンねトルー君。これからゆっくりお互いのこと、知っていこうね？」

オール様はそう言うと僕の手を握りウキウキとした笑みで告げた。