悪役令嬢の弟

ミイ

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120. 急変

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「なんだったんだろう…時計が動いても特に何も変わらないんだけど…。」

「そうですね、なんだったんでしょう…。」

僕達は顔を見合わせ、先程の出来事を思い返していた。時計の針が動いたのは確かだが今のところ何か起こったというわけではない。少し考えたが結局、意味が分からないまま教会を出る事にした。

「…考えても分からないね…それに予想が外れちゃったし…。もう行こうか、ゴメンねイモーテル、回り道させちゃって。」

これから僕達は街まで移動し、そしてこの街を出て行く。

僕は移りゆく景色を眺めながら、これがこの街にいる最後の景色かと複雑な気持ちになりながら見つめていた。

それから暫くボーっと外を眺めているとふと街中で一際騒がしい一角が目に止まった。

「(なんだろ…あれ?)」

野次馬が多くてなかなか見えない。

「イモーテル、あそこ見て。」

僕は彼に頼んで馬車を止めてもらい2人でジッとそれを見つめた。

「あれは…喧嘩ですか?」

「うん…?」

そこには不思議な光景が広がっていた。

ある1人の男性が騎士団の2人組に詰め寄り、何かを叫んでいる、それも泣きながら…。

耳を澄ますとこんな声が聞こえてくる。

「だから!さっきから何度も言ってるじゃないですか!緊急事態なんです!街の門を閉じて下さい!」

「しかしな…緊急と言われてもなんの手続きも踏んでない状態で門を閉じるのは…。」

「すまないが、我々にその権限はないんだ…緊急と言われてもその知らせは受けていない、だから君の要求は飲めない。」

「そんなっ…!そんなこと言っていたらあの人が…!あの人が居なくなってしまう…!」

そう言ってその人は泣き崩れてしまった。

「(あっ…大丈夫かな…あの人…。)」

僕はハラハラとしながらその光景を見つめていると遅れてその人の肩を支える人物が現れる。

「おい…俺の話を聞かずに走って行くんじゃない。」

その声は呆れているような、しかし何処か嬉しそうな声色で、僕はその人に目を向ける。

するとその人物はまさかのサンバックだった。

何故、彼がそこにいるのか…僕は驚きながらもその光景を眺める。

「(なんで兄様がここに…?)」

そしてサンバックはその人を立たせると騎士団2人に向かって告げる。

「今から急いで門を閉じよ、探し人を見つけるぞ。」


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