悪役令嬢の弟

ミイ

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121. 再起

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実はサンバックではないもう1人の男性が叫んでいた内容は聞こえたが、サンバックや騎士団の声までは聞こえていなかった。なので、サンバックが親しげにもう1人の男性を抱えている姿は正直、見たくなかった。その光景はやはり自分を置いてこの世界ではかなりの時が過ぎ去ってしまったのを実感するからだ。

僕はその光景を見てはいけないような気がして、そっと目線を逸らした。

「…イモーテル、そろそろ行こうか。」

馬車を暫く進ませると街の出口である門構えが見えてきた。外部から入るならまだしも普通なら門を出るのに特別な手続きがいるわけではない。しかし何故か僕達の馬車は出口のところで止められてしまった。

「馬車内に居るものは扉を開け、姿を見せよ。行方不明者を探している、ご協力を。」

その声掛けに僕達は窓から顔を出す。

「(行方不明者…?どういうことだろう…?)」

僕が不思議に思いながら警備兵に顔を見せる。するとその瞬間「トルー!」と大声で叫ばれた。

「(えっ何⁉︎誰⁉︎)」

僕が周りを見渡すとそこには先程見たサンバックが立っている。その隣には肩を支えられていたあの男性が。

あれは…まさか…!

「ドル~ざまぁ~!」

号泣していたのは昔より少し大人っぽくなったコールだった。彼は僕の姿を見つけるやいなや馬車に向かって走ってくる。僕も慌てて外に出るとコールを抱き留めた。

「コール⁉︎どうして⁉︎」

すると遅れてサンバックが安心したように「良かった、間に合って…。」と告げる。

「兄様も…どうして…?」

僕は2人に名前を呼んでもらえたことは嬉しかったが、戸惑いを隠せない。

「思い出したんだ…これまでのこと全て。トルーがいなくなってお前を必死に探していたのに忘れていたこともずっとお前に付いていたイモーテルのことも。そしてその一番の要因がバイオレットだったことも。すまない…さっきはお前に酷い態度を取ってしまって…。」

そう言ってサンバックは頭を下げる。

「えっ…いや…いいんだ。でもなんで記憶が…?」

その時、サンバックが"あるもの"を見せてくる。

「これ…懐中時計…?」

僕が持っているものと同じ物だ。なんでサンバックが…?

「俺にも分からない。さっきトルーと別れたあと、胸のポケットに入っていた。不思議に思い、それを眺めていたら急に動き出して…。」

「もしかして…反時計回りに…?」

「…ッ!ああ!その瞬間、これまでのことが脳内に蘇ってきた。」

「私もです!トルー様、私もコレが…!」

そう言ってコールも見せてくる。

「(じゃあやっぱり僕があの教会に行ったのには意味があったんだ…!でもそれと時計が動いたのはどんな関係が…?いや、今はそんなことよりサンバックとコールの記憶が戻ったことが嬉しい!)」

「兄様、コール!良かった!僕、この街を離れなくていいんだね!」

僕は嬉しくなって抱き着いてきたコールを抱き締め返す。その瞬間、コールはサンバックにバリッと引き剥がされるとイモーテルに放られる。

僕はサンバックにギュッと抱き締められると「ああ、これからはずっと一緒だからな。」と囁かれた。
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