114 / 154
114. 記憶
しおりを挟む
「どちら様ですか?」
中から声が聞こえる。イモーテルの声だ!
「僕だよ!トルー!トルー・バルサム!イモーテル開けて!」
すると勢いよく扉が開く。
「そんなイタズラはやめ…!」と、大声を出した彼と目が合う。お互い暫く沈黙が続く中、固まっているイモーテルを僕はマジマジと見つめた。記憶の中の彼は黒髪長髪だったはずが、今は肩までの長さに短くなっており前と変わらず燕尾服を着ている。
「イッ…イモーテル…?」
固まっている彼を窺うように声を掛けると彼は「…トルー様…なのですか?」と呟く。なんとか僕のことを分かってくれたようだ。
「うん!うん!僕だよ!」
僕は彼が存在していたこと、自分を覚えてくれたことに安堵し、笑顔を作る。そして今更ながら自分が透の姿ではないことに気付いた。
「(良かった…コッチの世界に来て、ちゃんとトルーの姿に戻ってたんだ。)」
しかし、イモーテルの様子がおかしい。僕のことはトルーだと分かってくれた様だが、疑わしげに僕のことを見ている。
「イモーテル…?僕、何か変かな…?」
僕は鏡を見たわけではないので顔までは分からないが、自分の服装などをチェックする。あの時、ヒロインに魔法をかけられた時と同じ服装だ。
「いっ…いえ…そうではないのですが…トルー様の姿が2年前…行方不明になった時から変わらないのです…。」
「えっ⁉︎そうなの⁉︎鏡!鏡見せて!」
僕は驚きながらもイモーテルに案内され、洗面所に移動する。鏡に映った自分はあの時のまま…彼の話が正しければ僕は成長せずに止まっている状態だ。
「イモーテル…さっきから気になってたんだけど、僕が居なくなってからどれくらいの月日が経っているの…?」
嫌な予感がする…。
「…あれから2年以上は経っています。トルー様が居なくなってから…様々なことが起きました…。トルー様、今から説明致しますのでどうぞ、こちらへ。」
僕はイモーテルと共に自分の部屋へと移動する。中は"2年前"と同じままだ。
「(僕からしたら2~3日しか経ってないんだけど…。)」
ソファーに座り、彼に紅茶を淹れてもらう。
「…こんな悦ばしいことはありません。昔の様にトルー様にご奉仕できるなんて…。懐かしいです。」
彼は僕を見つめたまま目に涙を溜め、そう告げる。
「イモーテル…。」
「もっ…申し訳ありません…泣くなんて従者失格ですね…。トルー様、トルー様の帰還については先程、使いの者を走らせました。きっと直ぐに皆様、駆け付けて下さいます。今暫くお待ち下さい、その間、私がこの2年間のことをご説明します。」
中から声が聞こえる。イモーテルの声だ!
「僕だよ!トルー!トルー・バルサム!イモーテル開けて!」
すると勢いよく扉が開く。
「そんなイタズラはやめ…!」と、大声を出した彼と目が合う。お互い暫く沈黙が続く中、固まっているイモーテルを僕はマジマジと見つめた。記憶の中の彼は黒髪長髪だったはずが、今は肩までの長さに短くなっており前と変わらず燕尾服を着ている。
「イッ…イモーテル…?」
固まっている彼を窺うように声を掛けると彼は「…トルー様…なのですか?」と呟く。なんとか僕のことを分かってくれたようだ。
「うん!うん!僕だよ!」
僕は彼が存在していたこと、自分を覚えてくれたことに安堵し、笑顔を作る。そして今更ながら自分が透の姿ではないことに気付いた。
「(良かった…コッチの世界に来て、ちゃんとトルーの姿に戻ってたんだ。)」
しかし、イモーテルの様子がおかしい。僕のことはトルーだと分かってくれた様だが、疑わしげに僕のことを見ている。
「イモーテル…?僕、何か変かな…?」
僕は鏡を見たわけではないので顔までは分からないが、自分の服装などをチェックする。あの時、ヒロインに魔法をかけられた時と同じ服装だ。
「いっ…いえ…そうではないのですが…トルー様の姿が2年前…行方不明になった時から変わらないのです…。」
「えっ⁉︎そうなの⁉︎鏡!鏡見せて!」
僕は驚きながらもイモーテルに案内され、洗面所に移動する。鏡に映った自分はあの時のまま…彼の話が正しければ僕は成長せずに止まっている状態だ。
「イモーテル…さっきから気になってたんだけど、僕が居なくなってからどれくらいの月日が経っているの…?」
嫌な予感がする…。
「…あれから2年以上は経っています。トルー様が居なくなってから…様々なことが起きました…。トルー様、今から説明致しますのでどうぞ、こちらへ。」
僕はイモーテルと共に自分の部屋へと移動する。中は"2年前"と同じままだ。
「(僕からしたら2~3日しか経ってないんだけど…。)」
ソファーに座り、彼に紅茶を淹れてもらう。
「…こんな悦ばしいことはありません。昔の様にトルー様にご奉仕できるなんて…。懐かしいです。」
彼は僕を見つめたまま目に涙を溜め、そう告げる。
「イモーテル…。」
「もっ…申し訳ありません…泣くなんて従者失格ですね…。トルー様、トルー様の帰還については先程、使いの者を走らせました。きっと直ぐに皆様、駆け付けて下さいます。今暫くお待ち下さい、その間、私がこの2年間のことをご説明します。」
46
お気に入りに追加
3,924
あなたにおすすめの小説
目覚めたそこはBLゲームの中だった。
慎
BL
ーーパッパー!!
キキーッ! …ドンッ!!
鳴り響くトラックのクラクションと闇夜を一点だけ照らすヘッドライト‥
身体が曲線を描いて宙に浮く…
全ての景色がスローモーションで… 全身を襲う痛みと共に訪れた闇は変に心地よくて、目を開けたらそこは――‥
『ぇ゙ッ・・・ ここ、どこ!?』
異世界だった。
否、
腐女子だった姉ちゃんが愛用していた『ファンタジア王国と精霊の愛し子』とかいう… なんとも最悪なことに乙女ゲームは乙女ゲームでも… BLゲームの世界だった。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
攻略対象者やメインキャラクター達がモブの僕に構うせいでゲーム主人公(ユーザー)達から目の敵にされています。
慎
BL
───…ログインしました。
無機質な音声と共に目を開けると、未知なる世界… 否、何度も見たことがある乙女ゲームの世界にいた。
そもそも何故こうなったのか…。経緯は人工頭脳とそのテクノロジー技術を使った仮想現実アトラクション体感型MMORPGのV Rゲームを開発し、ユーザーに提供していたのだけど、ある日バグが起きる───。それも、ウィルスに侵されバグが起きた人工頭脳により、ゲームのユーザーが現実世界に戻れなくなった。否、人質となってしまい、会社の命運と彼らの解放を掛けてゲームを作りストーリーと設定、筋書きを熟知している僕が中からバグを見つけ対応することになったけど…
ゲームさながら主人公を楽しんでもらってるユーザーたちに変に見つかって騒がれるのも面倒だからと、ゲーム案内人を使って、モブの配役に着いたはずが・・・
『これはなかなか… 面白い方ですね。正直、悪魔が勇者とか神子とか聖女とかを狙うだなんてベタすぎてつまらないと思っていましたが、案外、貴方のほうが楽しめそうですね』
「は…!?いや、待って待って!!僕、モブだからッッそれ、主人公とかヒロインの役目!!」
本来、主人公や聖女、ヒロインを襲撃するはずの上級悪魔が… なぜに、モブの僕に構う!?そこは絡まないでくださいっっ!!
『……また、お一人なんですか?』
なぜ、人間族を毛嫌いしているエルフ族の先代魔王様と会うんですかね…!?
『ハァ、子供が… 無茶をしないでください』
なぜ、隠しキャラのあなたが目の前にいるんですか!!!っていうか、こう見えて既に成人してるんですがッ!
「…ちょっと待って!!なんか、おかしい!主人公たちはあっっち!!!僕、モブなんで…!!」
ただでさえ、コミュ症で人と関わりたくないのに、バグを見つけてサクッと直す否、倒したら終わりだと思ってたのに… 自分でも気づかないうちにメインキャラクターたちに囲われ、ユーザー否、主人公たちからは睨まれ…
「僕、モブなんだけど」
ん゙ん゙ッ!?……あれ?もしかして、バレてる!?待って待って!!!ちょっ、と…待ってッ!?僕、モブ!!主人公あっち!!!
───だけど、これはまだ… ほんの序の口に過ぎなかった。
普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。
かーにゅ
BL
「君は死にました」
「…はい?」
「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」
「…てんぷれ」
「てことで転生させます」
「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」
BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
悪役令息に転生したけど…俺…嫌われすぎ?
「ARIA」
BL
階段から落ちた衝撃であっけなく死んでしまった主人公はとある乙女ゲームの悪役令息に転生したが...主人公は乙女ゲームの家族から甘やかされて育ったというのを無視して存在を抹消されていた。
王道じゃないですけど王道です(何言ってんだ?)どちらかと言うとファンタジー寄り
更新頻度=適当
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる