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90. 見舞い
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僕は馬車に乗り込むと御者に頼み、ヒロインの屋敷へ向かってもらう。イモーテルは僕の焦り様に驚いたのか空気を読んで口を開かないでいた。
僕はヒロインの屋敷へ向かうまで、この事件が彼女の自作自演だった場合のことを考えていた。魔力という動かぬ証拠がある中で彼女はどうやって言い訳をするのか…。このまま彼女が退学にでもなったら次はルート様を守らなければならない。ある意味、僕の没落ルートは免れるかもしれないが暗殺計画が遂行されてしまってはルート様を亡くしたブルーマリーの今後が心配だ。それに僕はルート様暗殺計画をだいたいこの時期に行われていたというザックリとしたことしか思い出せない。よって、それを防ぐのは不可能に近い。すなわち、このままヒロインを退学に追い込むのを防がなくてはルート様は死んでしまうことになる。正直、ヒロインの人格がどうであれ、そのシーンだけはどうにかしてもらわないと困る。
僕は未だに意識を取り戻していない彼女を想いながら不安を抱えていた。
それから暫くして、ヒロインを養子に迎えたバイオレット男爵家に到着する。
従者によって迎い入れられた僕は平静を装って彼女の部屋へと向かった。従者が扉をノックをすると中から「誰だ。」と男性の声。
「旦那様、お嬢様のご友人であるトルー・バルサム様がいらっしゃっています。学校から預かったお嬢様宛ての品をお持ちだそうです。」
少し返事に間があったが「…わかった、今開ける。」と返ってくる。
扉が開くと60代くらいの壮年期を迎えた男性が顔を出し、その顔には疲れが見えていた。
「初めまして、お嬢様と同じクラスのトルー・バルサムと申します。今日は先生から預かった用紙をお持ちしました。」
僕がそう自己紹介をすると男性は「わざわざありがとうございます。」と中へ入れてくれた。
「どうぞ、お掛けください。」と僕をソファーへ促す。男性の隣には同年齢くらいの女性も立っていた。
「本日は我が娘の為にご足労頂きまして誠にありがとうございます。この様な場所にまで…恥ずかしい限りです。」
「いえ、僕もお嬢様の様子が気になったものですから気にしないで下さい。それより様子はどうですか?」
「昨日、ルート様に診て頂いたと報告を受けたのですが、相変わらず目覚めぬままです…。本日もこの後、ルート様がこちらに来て頂けると聞いております。」
男性も女性も疲弊しているのが見て取れる。
「…そうですか、早く目覚めると良いですね…。」
こんな時、気の利いたことも言いたいのだが今の僕にはこんなことしか言えない。
「ええ、我々にとっては大事な娘です。出来る限りしてあげたい…。」
そう言って男性はヒロインの頭を撫でた。
僕はヒロインの屋敷へ向かうまで、この事件が彼女の自作自演だった場合のことを考えていた。魔力という動かぬ証拠がある中で彼女はどうやって言い訳をするのか…。このまま彼女が退学にでもなったら次はルート様を守らなければならない。ある意味、僕の没落ルートは免れるかもしれないが暗殺計画が遂行されてしまってはルート様を亡くしたブルーマリーの今後が心配だ。それに僕はルート様暗殺計画をだいたいこの時期に行われていたというザックリとしたことしか思い出せない。よって、それを防ぐのは不可能に近い。すなわち、このままヒロインを退学に追い込むのを防がなくてはルート様は死んでしまうことになる。正直、ヒロインの人格がどうであれ、そのシーンだけはどうにかしてもらわないと困る。
僕は未だに意識を取り戻していない彼女を想いながら不安を抱えていた。
それから暫くして、ヒロインを養子に迎えたバイオレット男爵家に到着する。
従者によって迎い入れられた僕は平静を装って彼女の部屋へと向かった。従者が扉をノックをすると中から「誰だ。」と男性の声。
「旦那様、お嬢様のご友人であるトルー・バルサム様がいらっしゃっています。学校から預かったお嬢様宛ての品をお持ちだそうです。」
少し返事に間があったが「…わかった、今開ける。」と返ってくる。
扉が開くと60代くらいの壮年期を迎えた男性が顔を出し、その顔には疲れが見えていた。
「初めまして、お嬢様と同じクラスのトルー・バルサムと申します。今日は先生から預かった用紙をお持ちしました。」
僕がそう自己紹介をすると男性は「わざわざありがとうございます。」と中へ入れてくれた。
「どうぞ、お掛けください。」と僕をソファーへ促す。男性の隣には同年齢くらいの女性も立っていた。
「本日は我が娘の為にご足労頂きまして誠にありがとうございます。この様な場所にまで…恥ずかしい限りです。」
「いえ、僕もお嬢様の様子が気になったものですから気にしないで下さい。それより様子はどうですか?」
「昨日、ルート様に診て頂いたと報告を受けたのですが、相変わらず目覚めぬままです…。本日もこの後、ルート様がこちらに来て頂けると聞いております。」
男性も女性も疲弊しているのが見て取れる。
「…そうですか、早く目覚めると良いですね…。」
こんな時、気の利いたことも言いたいのだが今の僕にはこんなことしか言えない。
「ええ、我々にとっては大事な娘です。出来る限りしてあげたい…。」
そう言って男性はヒロインの頭を撫でた。
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